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男性の妊活に“タイムリミット”はある? 不妊原因は男性にも、当事者意識を持とう

不妊の原因、半数は男性にも

Q.男性側に不妊の原因がある場合、どのような治療を行うのでしょうか。

内田さん「男性が不妊の原因となるのは『(1)精子が作られる』『(2)射精する』のいずれかに障害を来した場合です。(1)の場合、精子の数が少ない『乏精子症』、異常精子の率が高い『奇形精子症』、精子が作られない『無精子症』があります。(2)の場合、低血圧が原因のこともある『勃起障害』、抗うつ剤の副作用でも発生する『射精障害』、糖尿病などによる神経障害で膀胱(ぼうこう)に射精してしまう『逆行性射精』、精子の通る管が詰まり、射精しても精子が精液に含まれない『精管閉塞』が挙げられます。

勃起障害や射精障害は、薬物によるコントロール(ED治療薬、血圧のコントロールなど)により対応できることが多いです。逆行性射精や精管閉塞は『顕微授精』で治療します。乏精子症や奇形精子症は、正常精子の数が一定数あれば人工授精、数が少なければ顕微授精による治療を行います。無精子症の場合、手術で精子または精子のもとになる細胞を取り出し、顕微授精を行いますが、精子が全く採取できないような場合は治療自体が不可能となります」

Q.「男性=妊活のリミットはない」のイメージも影響し、不妊治療や妊活については「主に女性が取り組むもの」という印象があります。

内田さん「女性の加齢に伴う不妊は、男性は治療そのものに協力しようがないことも確かです。『男性も女性並みに当事者意識を持って治療に協力すべき』という意見もありますが、同等の意識を持つことは難しいでしょう。

しかし、必要な検査などには積極的に応じるべきですし、家事や送迎などを共に行う必要もあると思います。WHOによる調査では、不妊原因は『女性由来』が41%、『男性由来』が24%、『男女ともに原因あり』が24%、『原因不明』が11%といわれています。つまり、不妊に悩むカップルでは、約半数のケースで男性に何らかの原因があることになります。

若いうちに子どもに恵まれなくても『まだまだ大丈夫』とたかをくくっているような夫婦の場合、『男性側に問題がある場合がかなり多い』という認識をきちんと持っていただかなければなりません。男性は、自分ができる妊活に取り組みながら、女性の妊活もきちんと助けることが必要だと思います」

(オトナンサー編集部)

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内田玄祥(うちだ・げんしょう)

医療法人幸のめばえ、静岡レディースクリニック、三島レディースクリニック理事長

国立病院東京災害医療センター・国立病院東京医療センターにて産婦人科等に勤務の後、旧厚生省入省。医政局、健康局、社会・援護局等で病院経営管理、救急医療政策、障害保健福祉、医療安全等の政策立案を担当した後、山梨県健康増進課長として地域の感染症対策、がん・生活習慣病対策や母子保健政策・不妊症対策の充実にも従事する。夫婦で不妊症治療を経験したことから、官僚としてではなく医師として現場で不妊医療に寄与していくことが重要と考え、厚生労働省近畿厚生局医事課長の後、国立循環器病センター等を経て現職。

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