いたずらした男児にビンタ…逮捕の男性に共感の声、しつけと暴行の違いは? 弁護士に聞く
三重県内で、43歳の男が8歳男児を平手打ちし、暴行容疑で逮捕される事件が発生。男児のいたずらがきっかけのようですが、しつけと暴行に違いはあるのでしょうか。

三重県鈴鹿市のショッピングセンターで3月19日、43歳の男が8歳男児を平手打ちし、暴行容疑で逮捕される事件が発生しました。三重県警によると、男は殴った理由について「トイレの個室にいた際、別の個室から濡れたトイレットペーパーを投げ込まれたことに憤慨したため」などと話しており、ネット上では、男に同情する意見もあります。
かつては、たとえ他人の子どもであっても、悪いことをすれば、たたいたり殴ったりして“しつけ”をすることも珍しくありませんでした。しつけと暴行の違いについて、芝綜合法律事務所の牧野和夫弁護士に聞きました。
2月には暴行容疑で母親を逮捕
Q.大人がしつけと称して、悪いことをした子どもをたたいたり殴ったりすることは、法律上問題があるのでしょうか。
牧野さん「最近は、児童虐待によって子どもが死亡した事例が問題となっており、このようなケースが犯罪として大きく報道されるのでしょう。たとえ、しつけだったとしても、原則として、犯罪に該当する体罰は許されないと考えるべきでしょう。
つまり、しつけとしてたたいたり殴ったりした結果、けがをさせた場合は傷害罪(刑法204条、15年以下の懲役または50万円以下の罰金)に該当する可能性があります。死なせてしまった場合はもちろん、殺人罪(刑法第199条、死刑または無期もしくは5年以上の懲役)や傷害致死罪(刑法第205条、3年以上の懲役)が成立しえます。
そもそも、人に暴行を加えた時点で暴行罪(2年以下の懲役もしくは30万円以下の罰金または拘留もしくは科料)にあたる可能性があります。たとえ、相手がけがをしなかったとしてもです」
Q.自分の子どもであっても、しつけと称してたたいたり殴ったりすることは犯罪に当たるのでしょうか。
牧野さん「犯罪に当たるケースもあります。今年2月、兵庫県警は『学校に行かせたかった』という理由で、自宅で9歳の娘の顔を平手でたたいたとして、けがはありませんでしたが母親を暴行容疑で逮捕しています。
ただ、親子間のケースでは、行き過ぎたしつけにより『暴行罪』に該当する場合でも『正当行為』(刑法35条)として違法性を阻却され、罪に問われないこともあります。民法で、子の利益のために必要な範囲で、親の子どもへの懲戒権を認めているためです。
・民法822条
親権を行う者は、第820条の規定による監護及び教育に必要な範囲内でその子を懲戒することができる。
・民法820条
親権を行う者は、子の利益のために子の監護及び教育をする権利を有し、義務を負う。
個々の具体的な事例で判断されるべきですが、一般的に、過度なしつけが犯罪に該当する場合は違法性を阻却されず、犯罪に問われる可能性があるでしょう」
Q.今回の事件では、男児から悪質ないたずらをされたとみられるトラック運転手が逮捕されました。子どもからいたずらや暴行を受けた大人が、子どもをたたいて逮捕されるケースは珍しいのでしょうか。
牧野さん「いたずらを受けた親が子に対し、暴行したりけがをさせたりして逮捕されるケースがほとんどで、他人が逮捕されるケースは珍しいです」
Q.今回の事件のように、もし未成年に危害を加えられた場合、どのように対処すればよいのでしょうか。
牧野さん「黙ってその場を立ち去るか、子どもが判別の付く年齢だった場合は口頭で注意すべきでしょう。決して手を出してはいけません。
なお、欧米では、子どもの安全を守るために、子どもへの虐待に対する規制が厳しく、子どもだけで通学させたり、留守番させたりすることも虐待とみなされています。また、ニュージーランドでは、14歳未満の子どもの留守番は違法です。親子(特に父娘)で入浴しただけでも虐待とされる場合があります」
(オトナンサー編集部)
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