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「世界観」なき若者へ 書を捨てよ、旅へ出よう【前編】

いざ、自己決定・自己責任のフィールドへ

 若者には、「世界観」なんて抽象的な概念を押しつけるのではなく、「日本社会自体がどう変わろうとも、つぶしがきく」といった、具体的なメリットを提示するほうがベターです。海外旅行とは、言葉も違う、文化も違う社会に数日でもよいから身を投じてみる、いわば一種の「他流試合」。サッカーに例えるなら、サポーターが自分の身内ばかりで、ミスしても、ある程度は「優しい」ホーム試合ではなくアウェー試合なのです。

 アウェー試合のサポーターの中には、「フーリガン」が混じっているかもしれません。そんな「優しくない」空間で、どう試合を有利に展開するかが問われます。特に日本人は、あうんの呼吸で「何となく相手もわかってくれる感」のある生活習慣にどっぷり浸かっているためなおさら大変です。

 海外旅行は、自由時間がほとんどない「ベルトコンベアー」のようなツアーでもない限り、いつものような「プチ引きこもり」ではいられません。腹が減ったらメニューを選ぶ、便意を催したらトイレに行くことでも、自分の意思を伝達する必要に迫られます。

 日本のコンビニで「あれ、あれあれ」と言っていたら、ちゃんと店員が欲しい物を「察してくれる」ようなイリュージョンは存在しません。モタモタしていれば、「出てけ、ボケ!」と背面を蹴飛ばされても文句が言えないのです。否応なしに「自己決定・自己責任」のフィールドに放り込まれるのですから、当然でしょう。

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サイゴー・ヴァン・ウィンクル

辛口社会エッセイスト

1960年代生まれで学生時代は「新人類」と呼ばれた。バブルを満喫した一方で、暗黒の不況時代の辛苦も味わった「酸いも甘いも知り尽くした」悲しいジェネレーション。シニカルにして小心者。得意とするのは、池上彰が教えてくれない社会時評。ナポリタンと椎名林檎をこよなく愛する。

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