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ドイツに行った日本人「毎日イモでつらい」、日本在住ドイツ人「毎日違う料理で疲れる」 日独の食文化は真逆?

ドイツに行った日本人が「毎日ジャガイモとソーセージでつらい」と話す一方、日本在住ドイツ人は「毎日違うもの食べて疲れる」と嘆いている、とのツイートが話題に。日独の食文化はこれほどまでに真逆なのでしょうか。

ドイツ料理といえば「ソーセージ」

 ドイツに行った友人が「毎日ジャガイモとソーセージとザワークラウトとビールしかなくつらかった」と話していたとの投稿がSNS上になされました。しかし、このユーザーが、毎日鮭弁当を食べている日本在住のドイツ人にその理由を聞いたところ「日本人は毎日違うもの食べてて疲れる」との回答が。「毎日同じもので育つと違うものにストレスを感じるんだなーって新しい気付きでした!ほんまに裏表!」とツイートすると「これが文化の違いというやつか」「多様な食文化にどっぷりと浸り過ぎなのかもしれません」などと共感する声が上がりました。

 日独の食文化は実際にこれほど異なるのでしょうか。オトナンサー編集部では、科学する料理研究家のさわけんさんに聞きました。

変化を好まない保守的なドイツ人

Q.ドイツの食文化の特徴を教えてください。

さわけんさん「ドイツは欧州でも比較的低温で、イタリアやフランスに比べると野菜やフルーツが育ちやすい環境ではありません。ドイツ人が食べる野菜はキャベツとジャガイモがメインで、キャベツはシュークルート、100種類弱あるジャガイモは、ゆでたり潰したりソテーしたりとさまざまな方法で調理されます。肉は豚肉が多く、ローストやグリル、煮込みからハム、ソーセージに至るまで、あらゆる部位をさまざまな調理法で食べます。パンの種類も豊富でおいしく、北の地域はタラやニシン、南の地域は川魚、という具合に魚も食べます。そして、各地にはそれぞれの郷土料理があります」

Q.投稿にあるようにドイツ(人)の食文化はワンパターンなのでしょうか。

さわけんさん「ワンパターンだと思われているのは『保守的』で『味つけが単純』だからではないでしょうか。ドイツ人は食に関して保守的な傾向があります。あまり変化を好まず、年配の人は外国の料理を食べたことがない人もいます。ピザやパスタが全域、全年代に浸透している日本では考えられませんが、隣国のイタリア料理を食べたことがないドイツ人はたくさんいます。そんなお国柄なので、同じものを食べ続けることが苦ではなく、むしろ合っているのかもしれません。手に入りやすいものを毎日食べるのは日本と同じなので、ジャガイモとキャベツと豚肉に偏るのは必然なのでしょう。さらに、ドイツ人は基本的に薄味を好み、刺激のあるものを避ける傾向にあります。それに応じて、お店も塩コショウのみの薄味で低刺激のものを売ります。世界の料理があふれ、まずい物にはめったに当たらない環境で育った日本人がドイツに行くと、最初は塩コショウ味だけでもおいしく食べられますが、だんだんジャガイモばかり目につくようになり、ワンパターンな味付けに飽きてくるのかもしれません」

Q.日本人はドイツの食文化を楽しめませんか。

さわけんさん「日本人が、ドイツでおいしい料理を食べられるかどうかは予算や滞在期間にも影響されます。低予算だと当然、おいしい料理にありつける確率は下がります。スケジュールが詰まった仕事旅の場合、現地で案内してくれる人がいるかいないか、いる場合はその人のセンスに左右されます。いずれにせよ、短期間の旅で各地のおいしい料理を食べ歩くことは困難です。また、現地に住んだ場合も、行動範囲に自分好みのおいしいお店を発見できなければ、期間が長いだけにドイツのイメージが悪化します。その結果、旅行ガイドやネットなどに『ドイツ=イモと豚肉ばかりでおいしくない、ワンパターンだ』という評価が増えるのでしょう。ただ、お金と移動時間を惜しまなければ、バラエティーに富んだ美食の旅もできますよ。ドイツにもミシュラン星付きレストランがあり、おいしい郷土料理のお店もあります。また、パンやハム、ソーセージがおいしいのでホテルの朝食はオススメです」

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さわけん

キッチンまわり評論家

1968年兵庫県生まれ。本名は澤田健児。辻調理師専門学校フランス校を卒業し辻調グループで11年間、西洋料理を教える。フランスの二つ星(当時)「ムーランドムージャン」などに勤務経験のある本格派。その後、イタリアンカフェのシェフを経て料理研究家に転身し世界の料理を研究。料理を科学的・理論的に分析し、難しいコツや切り方を簡単な方法に置き換え、なおかつ本物に迫る味になるレシピ「沢田けんじのリプレシピ」を展開中。2010年から「キッチンまわり評論家」として毎月30~50品の食品や調味料を実食検証し、キッチングッズなども頻繁に検証する。コストコ、カルディ、無印良品、成城石井などのPBに精通。関西弁でのぶっちゃけトークが各地の講習会で人気だ。http://www.sawakens.com/

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