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ローンを残して逃げた妻に子を奪われた44歳男性、「面会」実現までの苦悶(下)

妻と別居後、子どもとの面会がかなわず、子どもの顔を一度も見たことのない父親たち。妻を説得し、再び「父親」になることはできるのでしょうか。44歳・会社員男性の実例を元に考えます。

カードを取り上げられ、逃げた妻

別居後、子どもと面会できない父親が多い
別居後、子どもと面会できない父親が多い

 すでに、別居から10カ月が経過しており、妻のところで生活の基盤(住居、学校、地域など)を築いているのに、親の都合で振り回すようなマネをするのは、子どもたちのためにならないでしょう。もちろん、卓也さんは今でも、子どもに対する愛情を持っており、妻子が出ていく前までは、人並み以上に子育てを手伝ってきたという自負はあります。

 しかし、育児に協力するのと育児をすべて担うのは全く別の次元です。卓也さんは平日、朝から晩まで働いているので、子どもたちの面倒を見るのは時間的に不可能ですし、年収700万円では家政婦を雇うことも金銭的に厳しいのですが、それなのに…。

「どうせ引き取れっこないのだから、ガタガタ言わず、言われた通りに金を出せばいいのよ!」

 妻のそんな魂胆が見え見えでしたが、さらに、卓也さんの目には妻が自分の足元を見ているように思えたので、完全に頭に血が上ってしまったそうです。

 ところで、愛想を尽かして出ていった妻子と取り残された夫という卓也さん夫婦の現状を見れば、妻が被害者、夫が加害者だと決め付けがちですが、実際のところはどうなのでしょうか。

「最初の10年間、妻は専業主婦でしたが、平日には友達と遊ぶことも多かったんです。とにかく見栄っ張りなので、友達に合わせるために家からお金を持ち出すのですが、遊びに行く回数はどんどん増えていき…。日々の生活もあるので、僕の給料ではギリギリで全く余裕はなかったんです」

 そのように妻の散在ぶりを明かしてくれましたが、とはいえ、常識的に考えれば、妻が使うことができるのは卓也さんの手取り額が上限です。ない袖は振れないはずですが妻は一体、何をしでかしたのでしょうか。

「妻はお金が足りなくなると、僕に内緒で借金をしていたようなのです」

 卓也さんは、当時の記憶を辿ってくれましたが、妻は家族カード(家族なら誰でも利用できるカード)を使い、カードローンを利用していたようで、卓也さんが気付いた時にはローン残高は150万円に達していたのです。卓也さんが妻から家族カードを取り上げると、妻は「もう用なし」とばかりに子ども2人を連れて実家へ逃げ帰ってしまったのです。

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露木幸彦(つゆき・ゆきひこ)

行政書士(露木行政書士事務所代表)

1980年12月24日生まれ。いわゆる松坂世代。国学院大学法学部卒。行政書士・ファイナンシャルプランナー(FP)。金融機関の融資担当時代は住宅ローンのトップセールス。男の離婚に特化し行政書士事務所を開業。開業から6年間で有料相談件数7000件、公式サイト「離婚サポートnet」の会員数は6300人を突破し、業界最大規模に成長させる。他で断られた「相談難民」を積極的に引き受けている。自己破産した相手から慰謝料を回収する、行方不明になった相手に手切れ金を支払わせるなど、数々の難題に取り組み、「不可能を可能」にしてきた。朝日新聞、日本経済新聞、ダイヤモンドオンライン、プレジデントオンラインで連載を担当。星海社の新人賞(特別賞)を受賞するなど執筆力も高く評価されている。また「情報格差の解消」に熱心で、積極的にメディアに登場。心理学、交渉術、法律に関する著書を数多く出版し「男のための最強離婚術」(7刷)「男の離婚」(4刷、いずれもメタモル出版)「婚活貧乏」(中央公論新社、1万2000部)「みんなの不倫」(宝島社、1万部)など根強い人気がある。仕事では全国を飛び回るなど多忙を極めるが、私生活では30年以上にわたり「田舎暮らし」(神奈川県大磯町)を自ら実践し「ロハス」「地産地消」「食育」の普及に努めている。公式ブログ(https://ameblo.jp/yukihiko55/)。

注)離婚手続きに関して、個別事情を踏まえた離婚手続きや離婚条件に関する法的観点からの助言が必要な場合は弁護士に依頼してください。

各都道府県の弁護士会
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