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モラハラ夫に耐え続けた56歳女性、金の切れ目で決断した「コロナ離婚」の始終【#コロナとどう暮らす】

緊急事態宣言解除後も、日常生活にさまざまな影響を及ぼし続ける新型コロナウイルス。それは、夫婦のあり方についても例外ではありません。3つのケースをご紹介します。

コロナをきっかけに、離婚に踏み切る夫婦も…
コロナをきっかけに、離婚に踏み切る夫婦も…

 緊急事態宣言が全国に拡大したのは4月16日。「人と人との接触、8割減」という不自由すぎる自粛生活を1カ月半もの間、強いられたのですが、新型コロナウイルスは私たちの価値観を変えたと言っても過言ではありません。

 コロナショックで変貌した私たちの「新」生活様式は、夫婦間の意識の差を浮き彫りにしました。なぜなら、他人との接触は減ったのに、その分だけ、配偶者との接触は増えたのだから。夫婦で過ごす「おうち時間」が増えるのは一見、望ましいように思えますが、実際はどうなのでしょうか。

 筆者は夫婦の悩み相談を専門に行っていますが、コロナ前の男女比は「6:4」。しかし、コロナ後は「1:9」です。夫への不満や愚痴、悪口を言いにくる妻がいかに多いことか。相談者の年代も緊急事態宣言によって一変しました。宣言前の2月、3月の相談者は主に現役世代。具体的には、夫が単身赴任先から戻るのを妻が拒絶したり、体力的、精神的に限界の看護師妻に夫が家事を丸投げしたり。

 一方、宣言後の4月、5月の相談者は老後世代が中心です。例えば、感染の予防、自粛の協力、物資の入手など、目まぐるしい変化によって夫婦間に溝ができたという内容です。平時は見過ごしていた、夫の欠点や短所、至らない点が有事に明らかになるというパターンが多い印象ですがなぜ、取り返しのつかない状況に陥ったのでしょうか。

 真壁節子さん(56歳、専業主婦)の例をもとにひもときましょう(登場人物は仮名)。

ステイホームで顔を合わせる機会が増え…

「いつも、主人はそうなんです。よかれと思ってやるんですが、私に何も聞かないで…これ以上、振り回されるのはごめんなんです!」

 節子さんは真っ赤な顔で言いますが、夫(宏さん、62歳)が地元企業の社長に上り詰めたのは10年前。8年間、汗を流したのですが、現在は社長を退き、相談役として週2、3回出社する程度。同居していた宏さんの両親を5年前にみとり、自宅の住宅ローンは退職金で完済し、息子(26歳)夫婦の間に生まれた孫(2歳)をかわいがる…そんな悠々自適な老後生活を送っていたところ、襲ってきたのがコロナ禍でした。

 宏さんの会社は3月初旬から在宅勤務へ移行したのですが、相談役のポストは年金支給までの時間稼ぎなので、いてもいなくても大差ないのでしょう。宏さんが会社へ顔を出すのは週1回程度。ステイホームに徹していたのですが、暇を持て余して何を仕出かしたのでしょうか。

 節子さんいわく、宏さんは少々偏った正義感の持ち主で「家族のため」という大義名分があれば、他人の迷惑を顧みずに突き進むタイプです。例えば、日持ちする食料品を買い占めたり、見よう見まねで次亜塩素酸を作ろうとしたり、コロナの予防だと言い、うがい薬を飲んでみたり…宏さんが勝手なことを始めたのは4月上旬でした。

 節子さんがどうしても許せなかったのは「外出禁止の例外を認めないこと」。宏さんは「外出するときは声をかけろ」と言うのです。節子さんがコロナに感染し、自分にうつされると困るという理由で。

 節子さんはもともと、ボランティアに熱心なタイプ。募金運動に参加したり、被災地の野菜を購入したり、きれいな衣服を寄付したり…今回のコロナでも、困っている人の役に立ちたいという一心でマスクを作ろうと考えていました。運よく、近所に手芸教室があり、マスクの作り方を教えてくれるということでしたが、宏さんが猛反対。「3密はダメだって言っているだろ? 感染者が混じっていたらどうするんだ!」と。

 節子さんは教室に欠席の連絡をせざるを得なかったのですが、恥ずかしい気持ちでいっぱいだったそう。花柄のハンカチや迷彩の手ぬぐい、Tシャツの端切れ、色付きのゴム…友人がおしゃれなマスクをつけ、自粛生活を楽しんでいる姿を見るたびにうらやましがると同時に、宏さんへの恨みの感情が湧き上がってきたそうです。

 節子さんは宏さんが見張っているような気がして、食料品の買い出しなど必要最小限の用事以外は外出するのを控え、自宅に閉じこもるしかありませんでした。

夫への期待値を上げるのは危険

 筆者が「残念ながら、旦那さんはそういう人間なのでしょう。旦那さんの性格がいまさら変わるとは思えないので」と苦言を呈すると、節子さんは「うちはもともとうまくいっていなかったのに、今回のコロナで余計にその思いが強くなりました」と答えました。

 今まで、宏さんに散々、悩まされ、苦しめられ、困らされてきた節子さん。その代償に、宏さんが得た老後資金で支えてもらうのだから、さすがに離婚は考えていないそうです。しかし、今後も、我慢に我慢を重ねないと結婚生活が成り立たないのかと思うと、息子さんに愚痴をこぼす機会がますます増えそうだと言います。

 先述の通り、コロナをめぐる夫婦げんかのカウンセリングに来るのは、夫より妻の方が多いのですが、共通するのは夫に対する期待値が高いことです。例えば、夫のことを、自分第一で動くのが当たり前だと思っている節があるので、夫が少しでも感染予防を怠るとヒステリーを起こします。

 そして、感染対策を人一倍頑張っている自負がある妻は危険です。「夫も同じくらい頑張ってくれるはず」と決め付ける傾向があります。そのため、夫の頑張りが足りないと、「歩調を合わせるつもりがない」と感じるのですが、思い出してください。今まで、夫と話し合い、意見を言い合い、結論を出してきたのなら、夫は期待に応えてくれるでしょう。しかし、これまで、夫とまともに話さず、勝手に決め、事後報告してきたのに今回だけ特別というのは無理があります。

 コロナ離婚を防ぐには、自分は自分の、夫は夫のペースがあることを理解し、夫を尊重し、そして、期待しすぎないことが大事です。

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露木幸彦(つゆき・ゆきひこ)

露木行政書士事務所代表

1980年12月24日生まれ。いわゆる松坂世代。国学院大学法学部卒。行政書士・ファイナンシャルプランナー(FP)。金融機関の融資担当時代は住宅ローンのトップセールス。男の離婚に特化し行政書士事務所を開業。開業から6年間で有料相談件数7000件、公式サイト「離婚サポートnet」の会員数は6300人を突破し、業界最大規模に成長させる。他で断られた「相談難民」を積極的に引き受けている。自己破産した相手から慰謝料を回収する、行方不明になった相手に手切れ金を支払わせるなど、数々の難題に取り組み、「不可能を可能」にしてきた。朝日新聞、日本経済新聞、ダイヤモンドオンライン、プレジデントオンラインで連載を担当。星海社の新人賞(特別賞)を受賞するなど執筆力も高く評価されている。また「情報格差の解消」に熱心で、積極的にメディアに登場。心理学、交渉術、法律に関する著書を数多く出版し「男のための最強離婚術」(7刷)「男の離婚」(4刷、いずれもメタモル出版)「婚活貧乏」(中央公論新社、1万2000部)「みんなの不倫」(宝島社、1万部)など根強い人気がある。仕事では全国を飛び回るなど多忙を極めるが、私生活では30年以上にわたり「田舎暮らし」(神奈川県大磯町)を自ら実践し「ロハス」「地産地消」「食育」の普及に努めている。公式ブログ(https://ameblo.jp/yukihiko55/)。

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