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出産、がん、不慮の死…「住宅ローン」は“5つの不測”に備えた選択を!

「住宅ローン」見直しが必要になる、主な5つのパターンについて、筆者が解説します。商品の品定めこそが肝要なようです。

「住宅ローン」は予想外のことで見直しが必要に
「住宅ローン」は予想外のことで見直しが必要に

 これまで大家名義の住宅に借り主として暮らし、家賃を払ってきた人にとって、マイホームの購入は夢です。銀行の住宅ローンの審査が何とか通り、不動産屋の担当から自分名義の権利証を受け取り、家族と一緒に玄関から一歩を踏み出す瞬間は幸せにあふれており、前向きなことばかりです。

 しかし、住宅ローンを組んだら、土地や建物の名義が変わったら、マイホームに足を踏み入れたらそれで終わり、というわけではありません。住宅ローンの返済は長期にわたり、個人差はありますが、20~30年にわたって返済していかなければなりません。

 もちろん、何事もなく毎月同額の収入を得て住宅ローンを返済し、家族が生活していくことができれば問題ありませんが、残念ながら、返済の途中で後ろ向きな出来事が起こり、予定通り返済することが難しくなる場合もあります。

 つまり、人生の節目で、住宅ローンを見直さなければならないケースも一定数存在するのですが、不測の事態に対処できるかどうかは、最初にどのような商品を選んだかに左右されます。今回は「金利の見直し」「繰り上げ返済」「子どもの誕生」「がんの闘病」「不慮の逝去」という5つのパターンを掘り下げていきましょう。

金利変更のためにかかる時間と労力

 1つ目は、金利の変更です。住宅ローンを組むとき、固定金利と変動金利のどちらかを選ばなければなりませんが、途中で変更することも可能です。例えば、金利の底だと思い固定金利を選んだものの、定期的に金利が変動した方が得だと思い直したので変動金利に変更する。もしくは、金利の動向を気にするのが面倒で変動金利を選んだものの、低金利をずっと適用してほしいので固定金利に変更する。

 そんなふうに、家族の意見や金利の動向、そして、考え方の変化によって金利の選択を変更したい場合、最初にどのような金融機関、商品を選ぶのかに左右されます。例えば、転勤や転居、赴任などの理由で夫は持ち家に住んでおらず、妻子だけが暮らしている場合。もし、金利の変更をネット上で行うことができず、債務者である夫が金融機関の支店で、担当者の門前で手続きをしなければならないのなら大変です。

 茂木太郎さん(39)は当初、埼玉県内でマイホームを購入したのですが、単身赴任で沖縄に暮らしています。一方、妻は、父親が倒れたため北海道の実家に戻り、父親の世話をしている状況です。変動金利から固定金利に変更したいのですが、金利の選択によって多少のメリットがあっても、支店に行く時間や労力、交通費を考えると、メリットが減少・消失する可能性があるのでちゅうちょしています。

 このような事態を避けるには、全国に支店がある金融機関を選ぶか、全国展開していなくてもネット上で手続きを受け付けている金融機関を選ぶことが大切です。

 2つ目は、繰り上げ返済です。20年なら20年、30年なら30年。住宅ローンは契約時に定めた年数をかけて、毎月返済するのが基本です。

 しかし、人生の途中に思わぬ形でまとまったお金を手にすることがあります。例えば、給与や賞与をこつこつ貯金して一定額に達したり、新しい会社へ転職するため、古い会社を退職するときに退職金を受給したり、母親から生前贈与としてまとまった金額を譲り受けたり、父親が思ったより多くの資産を持っていて、相続でもらい受けたりする場合です。

 このような余剰資金を住宅ローンの繰り上げ返済に回し、金利を軽減するという方法があります。基本的に、返済期間が長ければ長いほど、元本が多ければ多いほど、全期間で支払う金利は膨らみますが、途中でまとまった額を繰り上げ返済することで、返済期間を短縮したり、元本を減少させたりすることにより金利の負担は軽くなります。

 もちろん、余剰資金を運用し、ローンの金利を上回るほどの実績を上げることができればよいのですが、例えば、金融機関の定期預金の場合、預金の利息はローンの金利を下回るので繰り上げ返済に回した方が得です。しかし、金融機関によっては、繰り上げ返済をする場合、手数料が発生することがあります。ローンの金利に手数料を上乗せした結果、預金の利息を下回るようでは繰り上げ返済をする意味がありません。

 堂上浩一郎さん(55)がマイホームを購入したのは25年前。当面の間、入り用ではない銀行預金が200万円あり、これを住宅ローンの繰り上げ返済に充てたいと考えていました。当時の商品は、繰り上げ返済の手数料として5万円が設定されていましたが、繰り上げ返済によって軽減される金利は15万円です。5万円の手数料を支払うと10万円のメリットしかないので、本当に繰り上げ返済をすべきか迷っているそうです。

 これなら最初から、手数料が発生しない金融機関や住宅ローンの商品を選んでおけば、このような事態は起こりません。現時点で、まとまった資金が入り、繰り上げ返済をする予定がなくても、手数料の有無を確認することが大事です。

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露木幸彦(つゆき・ゆきひこ)

行政書士(露木行政書士事務所代表)

1980年12月24日生まれ。いわゆる松坂世代。国学院大学法学部卒。行政書士・ファイナンシャルプランナー(FP)。金融機関の融資担当時代は住宅ローンのトップセールス。男の離婚に特化し行政書士事務所を開業。開業から6年間で有料相談件数7000件、公式サイト「離婚サポートnet」の会員数は6300人を突破し、業界最大規模に成長させる。他で断られた「相談難民」を積極的に引き受けている。自己破産した相手から慰謝料を回収する、行方不明になった相手に手切れ金を支払わせるなど、数々の難題に取り組み、「不可能を可能」にしてきた。朝日新聞、日本経済新聞、ダイヤモンドオンライン、プレジデントオンラインで連載を担当。星海社の新人賞(特別賞)を受賞するなど執筆力も高く評価されている。また「情報格差の解消」に熱心で、積極的にメディアに登場。心理学、交渉術、法律に関する著書を数多く出版し「男のための最強離婚術」(7刷)「男の離婚」(4刷、いずれもメタモル出版)「婚活貧乏」(中央公論新社、1万2000部)「みんなの不倫」(宝島社、1万部)など根強い人気がある。仕事では全国を飛び回るなど多忙を極めるが、私生活では30年以上にわたり「田舎暮らし」(神奈川県大磯町)を自ら実践し「ロハス」「地産地消」「食育」の普及に努めている。公式ブログ(https://ameblo.jp/yukihiko55/)。

注)離婚手続きに関して、個別事情を踏まえた離婚手続きや離婚条件に関する法的観点からの助言が必要な場合は弁護士に依頼してください。

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