出産、がん、不慮の死…「住宅ローン」は“5つの不測”に備えた選択を!
毎月12万円のローンを組んだものの…
3つ目は、子どもの誕生です。共働きの夫婦が住宅ローンを組む場合、金融機関は、夫と妻の年収を合わせて返済できるかどうか審査します。具体的には、年間の返済額が年収の20~30%に収まるよう調整しますが、これは、夫婦の年収がずっと同じという前提です。
もちろん、途中で年収が増えればよいのですが、逆に減る場合もあります。例えば、妻が子どもを授かり、出産に備えたり、育児を担ったりするために出産休暇や育児休暇を取得する場合です。職場に復帰するまでの間、育児休業給付金が支給されますが、休暇前の年収の50~70%にとどまります。
大森隆利さん(33)はマイホームを新築し、毎月12万円を返済する住宅ローンを組みました。隆利さんの手取り額は毎月20万円、妻は毎月15万円だったので、特に苦労せず返済してきました。しかし昨年、妻との間に第1子が生まれ、妻は育児休暇中。育児給付金は9万円なので世帯の手取り額は6万円も減り、急に生活が厳しくなったのですが、このような事態は想定外だったそうです。
これまでの商品は、出産や育児というライフイベントがあろうと、決められたローンを返済しなければなりませんでした。しかし、出産や育児の休暇中に限り、元金返済措置が適用される商品もあります。これは、金利分だけ返済すれば元本分は返済しなくてもよいというものです。
もちろん、元金返済措置が適用されている期間、元本は減りませんが返済額は大幅に減るので、妻は安心して分娩(ぶんべん)に臨み、産後は落ち着いて子育てに専念できるでしょう。
4つ目は、がんの闘病です。2人に1人は、がんにかかる時代です。親戚や友人、上司など周りの誰かががん患者でもおかしくありませんが、あなたも例外ではありません。住宅ローンの返済期間中、ずっと病院知らずで過ごすことができればよいですが、思わぬ形でがんを告知され、入院や治療、闘病を余儀された場合、どうすればよいのでしょうか。
特に、ローンの債務者である一家の大黒柱が罹患(りかん)した場合は一大事です。外科手術や抗がん剤の投与、そして、再発などで収入が減ったり、途切れたり、最悪の場合、仕事を失う可能性もあります。
下地慎太郎さん(59)は26年前に分譲マンションを購入し、これまで、住宅ローンを返済してきました。2年前、人間ドックで肺がんと診断され、手術を受けたのですが、術後の経過は思わしくなく、昨年、肺がんを再発してしまったそう。2年間休職していたので、これ以上会社に籍を残すことは難しく、退職せざるを得ませんでした。
慎太郎さんはがん保険に加入していたので、入院や外来、手術費用は補償され、さらに、最初の1年間は闘病前の収入と休職手当の差額まで補償されたので、金銭的に困ることはありませんでした。しかし、闘病2年目は就業補償が終わってしまい、会社の休職手当も打ち切られたのですが、専業主婦の妻(56)が今からまとまった収入を得るのは無理があります。
慎太郎さんは、貯金や退職金から住宅ローンを返済せざるを得なくなったのですが、これらの財産が底をついたらマンションを手放さざるをえないので、安心して闘病に専念できない日々を送っています。
住宅ローンを組む場合、団信(団体信用生命保険)の加入が義務付けられていますが、これまでの団信は死亡の場合だけが対象で、がんを患った場合は対象外でした。しかし、最近では、債務者ががんを告知された場合も適用される商品が出てきました。これなら、万が一の場合、ローンは免責されるので、経済的な不安はだいぶ軽減され、治療に専念することができます。
年齢を重ねるごとにがんのリスクは高まるので、補償が充実している商品を選ぶことが肝要です。
5つ目は不慮の逝去ですが、これは夫婦が連帯債務という形で住宅ローンを選んだ場合です。例えば、夫2000万円、妻1000万円と、夫婦がそれぞれローンを組み、互いが互いのローンに責任を持つのが連帯債務です。
最初から最後まで夫婦が健在ならよいのですが、不慮の事故や病気で命を落とす可能性はゼロではありません。住宅ローンを組む場合、団信の加入が義務付けられていますが、連帯債務の場合、これまでの商品は夫が亡くなった場合は夫の、妻が亡くなった場合は妻のローンは免責されるものの、前者は妻の、後者は夫のローンがそのまま残るものが主流でした。
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