配偶者控除“改正”に込めた国のホンネは「女性の活躍」ではない
2018年に「配偶者控除」の制度が改正され、その適用範囲が大きく広がります。表向きのテーマは「女性の活躍」とされていますが、根本には「扶養」の問題があると筆者は考えます。
「女性の活躍」は表のテーマにすぎない
2018年から改正される「配偶者控除」「配偶者特別控除」。以下の通り、その適用範囲が大幅に広がります。
【満額の38万円を控除】
配偶者の年収:従来は105万円まで→改正後は150万円まで
【段階的に3万〜36万円を控除】
配偶者の年収:従来は105万〜141万円→改正後は141万〜201万円
また、同時に年収1220万円以上の配偶者控除と配偶者特別控除が廃止されます。「範囲拡大」に伴う税収減を、高所得者への増税によりその一部を補うことで決着した形です。全体としては税収減と予想されていますが、それを覚悟の上で改正に踏み切るのは「家庭の女性に社会で活躍してもらう」というお題目があるから。しかし、こちらが表のテーマだとすると、裏には「扶養問題」というテーマがあります。
一般的に、厚生年金の加入者である会社員は2号被保険者に該当しますが、その妻は3号被保険者で、健康保険と国民年金の保険料を免除されています。そうでありながら、将来の国民年金を満額受け取れるため「主婦特権」などと揶揄(やゆ)されるのです。3号被保険者は平成27年時点で915万人。専業主婦世帯は687万世帯、共働き世帯は1114万世帯で、現役で働いている世帯が合計1801万世帯だとすると、その約半数は「妻が扶養」ということになります。
高度成長期ならいざ知らず、昨今の低成長、しかも社会保険制度がひっ迫している状況において、「払わずにもらえる」3号被保険者の制度は誰の目から見ても継続不可能で、早急な対策が求められます。3号被保険者でも「扶養から外れないように」と就労時間を調整しているケースは多く、こうした方々に「社会保険に加入してもらいたい」というのが国の本音で、今回の配偶者控除改正にもそうした意図が含まれているのです。
なお、このような話になると「専業主婦はずるい」といった感情論に陥りがちですが、それも稚拙な議論です。制度がある以上、家族単位で利益を最大化するのは当然の話で、責められるべきは抜本的な改革をしてこなかった国です。しかし「痛み」を伴う強硬手段に出れば、915万人の「奥さま」を敵に回すことになるため、今回の改正で国は社会保険加入という「甘い誘惑」をしていますが、果たしてうまくいくでしょうか。
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