ふるさと納税過熱化めぐり12自治体公表 国と“名指し”された自治体、それぞれの思いは?
総務省が公表した「ふるさと納税」に関する資料が話題となっています。
総務省は7月6日、ふるさと納税をめぐる自治体間競争の過熱について、これまでに発表した返礼品に関する基準を守っていないとして、12の自治体名を公表しました。オトナンサー編集部では、総務省や「名指し」された自治体の担当者に聞くとともに、過熱化のあおりを受けている東京23区の事情を取材しました。
泉佐野市「見直すが、時間が欲しい」
7月6日公表の「ふるさと納税に関する現況調査結果」によると、2017年度のふるさと納税の受け入れ額は2016年度比でおよそ1.28倍の約3653億円、件数はおよそ1.36倍の約1730万件と、いずれも大幅に増加しています。
ふるさと納税をめぐる自治体間競争の過熱化を受け、総務省はこれまでに2回、都道府県に通知を出しています。2017年4月に、返礼品の寄付額に対する割合を3割以下にすること、2018年4月には「返礼品は地場産品にするのが適切」と通知しました。
「現況調査結果」の最終ページには「返礼割合3割超の返礼品及び地場産品以外の返礼品をいずれも送付している市区町村」で「平成30(2018)年8月までに見直す意向がなく、平成29(2017)年度受入額が10億円以上の市区町村」として、12の自治体名を公表しています。
自治体名を公表した理由について、総務省自治税務局市町村税課の担当者は「ほとんどの自治体が通知を守っていますが、一部の自治体が守らないことが、ふるさと納税への批判につながりかねません。返礼品の見直しを促す目的で、該当する自治体の名前を公表しました」と話しています。
2017年度、全国で最も受け入れ額が多かったのは大阪府泉佐野市で、約135億3000万円でした。泉佐野市の特設サイトには、黒毛和牛のセットや、イクラ、格安航空会社(LCC)のポイントギフトなど豪華な返礼品が並んでいます。
泉佐野市政策推進課成長戦略室の担当者に話を聞きました。
Q.なぜ、ふるさと納税に力を入れているのですか。
担当者「財政難を踏まえた税外収入の確保が目的です。他の自治体よりも、かなり以前から積極的に取り組んできました。昨年度(2017年度)の実績は、長年の取り組みの結果と考えています。基本的には今までと変わらない努力を続けていきたいと考えています。
一方、ふるさと納税をめぐる論議が起きていることも承知しています。創設わずか10年の制度であることもあり、現状の形が必ずしもベストかどうか分かりません。今後しっかりと検証し、必要な議論を通じてあらゆる自治体が納得、共感できるような有効性の高いものに磨き上げていくことが重要だと考えています」
Q.どのような意見が寄せられていますか。
担当者「泉佐野市を応援していただく意見がほとんどです。応援してくださる寄付者の皆さんには心から感謝しています。当市は特産品が少ないので、さまざまなアイデアで返礼品を開拓してきました。例えば、LCCの航空券が購入できるポイントであったり、市内の老舗の焼き肉店が目利きした肉などです。
地元の肉やカニ、米などで寄付を集められる自治体との格差を埋める取り組みとして評価いただいています。特にLCCのポイントについて、就航間もない航空会社を応援することで、地域の長年の課題であった関西空港の浮揚にもつながった取り組みとして注目いただきました」
Q.返礼額の割合が3割を超えているのは事実ですか。
担当者「事実です。これは当市が7年前に作成した規定に従い実施しています。地場産品については返礼品が1000種類以上あり、なおかつ市内、市外の産品の基準にはさまざまな解釈があると思いますので、詳細な数値は出せません。ただ、半分以上は市内の産品だと思われます」
Q.総務省の公表資料にリストアップされましたが、返礼品は見直しますか。
担当者「今回のリストアップを受けて見直すということではなく、それ以前から、見直しの調整はしていました。過去に総務省から指摘のあった、宝石や自転車といった高額返礼品については、2018年3月末で掲載をやめています。
今年4月に通知のあった地場産品の件については、突然の通知に困惑しているというのが正直なところですが、昨年4月の通知と合わせてしっかりと受け止め、順次対応していきたいと考えています。
なお、地場産品関連の見直しの意向は、7月6日以前に総務省の担当者に伝えていました。見直し時期については、ふるさと納税を支えていただいている多くの関係者に、しっかりとご理解いただくことも重要であると考えていますので、ある程度の時間を頂戴したいと申し上げていました。
今回、資料で公表された団体はあくまでも『8月までに見直す意向がない自治体』となっています。泉佐野市としては『見直さない』と伝えているのではなく『見直すが、一定の時間が欲しい』と伝えていましたので、非常に残念です」
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