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地方の特産品が2000円で手に入る? 今さら聞けない…“ふるさと納税”、何がおトク? どうやって手続き? メリット&注意点を税理士に聞く

ふるさと納税に取り組むと、どのようなメリットがあるのでしょうか。税理士に聞きました。

ふるさと納税を行うメリットは?
ふるさと納税を行うメリットは?

 地方自治体に寄付を行う「ふるさと納税」という制度があります。寄付に対する返礼品として、自治体が地元の特産品を提供する制度ですが、いまいち仕組みがよく分からないと感じることがあります。

 ふるさと納税をすると、どのようなメリットがあるのでしょうか。仕組みは、どのように設計されているのでしょうか。税理士法人Bridge(東京都港区)の代表・黒田悠介さんに聞きました。

年間2000円で複数の自治体の特産品が手に入る

ふるさと納税の寄付額と実質負担額
ふるさと納税の寄付額と実質負担額

Q.ふるさと納税を行うメリットについて、教えてください。

黒田さん「ふるさと納税の一番のメリットは、年間2000円の負担で自分が寄付をした自治体から、特産品などの返礼品をもらえる点です。年収やその他の控除により、年間の寄付額に上限はありますが、上限額を超えなければ、複数の自治体に寄付をすることが可能です。2000円の負担金を除いた寄付金を『寄付金控除』として税額の控除が受けられます。

そのほか、民間企業が運営するふるさと納税のポータルサイトではクレジットカードを利用した寄付に対応しているため、寄付額に応じてクレジットカードのポイントを獲得できるというメリットもあります」

Q.ふるさと納税の手続き方法や寄付の限度額について、教えてください。国税庁の2021年の調査によると、民間企業に勤める人の年間の平均給与は443万円ですが、年収400万円の人がふるさと納税をする場合、限度額はどの程度になるのでしょうか。

黒田さん「年収400万円(社会保険料62万円)で試算した場合の結果は、写真の表の通りです。住宅ローン控除や医療費控除、扶養控除などは加味していません。

例えば寄付が0円の場合、所得税と住民税の合計は25万9400円です。自治体に1万円を寄付すると、所得税・住民税は25万1300円に下がりますが、寄付を1万円しているため、『25万9400円―(25万1300円+1万円)』と計算すると、1900円の負担が増えていることが分かります。

1万円寄付してもらえる物品の返礼率を3割とすると、3000円の商品がもらえます。つまり、3000円の商品を1900円の負担でもらえるため、その結果、1100円がお得になるというのがふるさと納税の計算の仕組みです。

これは、『返礼率が何割の商品なのか』『収入以外の扶養や各控除の状況』によって、細かく変わります。目安として、年収400万円の人が実質2000円の負担で寄付をできるのは、年間4万円です」

Q.ふるさと納税をする際の注意点について、教えてください。納税時期に注意した方がよいのでしょうか。

黒田さん「ふるさと納税は、1月1日から12月31日までの年間を通じた金額で計算されます。寄付金の控除対象となるふるさと納税は、受領証明書に記載されている受領日(入金日)がその年の12月31日までのものです。

そのため、年内に申し込みをしても、入金手続きが翌年となってしまった場合、その年の寄付金として処理できなくなります。その場合、税の控除を受けられるのは翌年分になるため、注意が必要です。受領日の扱いは、支払い方法によって以下のように異なります」

・クレジットカード:決済が完了した日
・銀行振り込み:指定口座に支払いをした日
・払込取扱票:指定口座に支払いをした日
・現金書留:自治体側で受領した日

自治体によっては、手続き遅延によるトラブル防止のため、12月上旬に締め切りを設定している場合があるため、注意をしてください。

確定申告なしでふるさと納税の寄付金控除を受けられる「ワンストップ特例制度」を使用する場合も注意が必要です。

ワンストップ特例の申請は、寄付翌年の1月10日必着で寄付先の自治体へ『寄付金税額控除に係る申告特例申請書』を提出する必要があります。年末ぎりぎりに手続きを行った場合、郵便状況やトラブルなどで、申請期日に間に合わなくなる可能性があるため、ご注意ください。ワンストップ特例の申請が間に合わなかった場合は、「確定申告」での手続きが必要になります。

Q.ふるさと納税でよくあるトラブルについて、教えてください。

黒田さん「ふるさと納税は、寄付をした段階で、寄付金控除が受けられるものではありません。自身で『ワンストップ特例の申請』または『確定申告』をしなければ、寄付金の控除が受けられないため、注意が必要です。

また、ワンストップ特例の申請は、年間のふるさと納税の申込先が5自治体以下であることが要件となっています。ふるさと納税を申し込む自治体が6カ所以上になるとワンストップ特例は活用できず、確定申告の手続きを行うことになります。もし6カ所以上の自治体にワンストップ特例の申請をした場合、すべての手続きが無効となりますので、ご注意ください。

また 確定申告をする人は、ワンストップ特例の申請で手続きができない点も注意が必要です。ワンストップ特例の申請で寄付金控除の手続きを行った後、確定申告が必要となった場合には、その確定申告に再度ふるさと納税の情報を全部記入する必要があります。

他には、寄付の限度額ギリギリまで寄付をしてしまった場合、ボーナスが思ったより支給されず、収入が下がった時に、住宅ローン控除や医療費控除などで寄付控除額の上限を超えてしまい、損をするケースがあります。上限額は把握しつつも、それを目安に少し低い金額にとどめておくのがお勧めです」

(オトナンサー編集部)

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黒田悠介(くろだ・ゆうすけ)

税理士法人Bridge代表、税理士、政治資金監査人

大手税理士法人で相続対策・事業承継業務に従事。その後、金融機関、IPO企業、富裕層コンサルティング会社を経て、税理士法人Bridge(東京・静岡事務所)を創設。「幸せの架け橋を」というビジョンを掲げ、IPOコンサル・相続・事業承継対策など多角的な税務サービスを行っている。税理士法人Bridge(https://bridge-tokyo.co/)、Instaglam (https://instagram.com/yusuke.tax.bridge?igshid=YmMyMTA2M2Y=)。

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