キャッシュレス化が進んでいるのに…現金感覚で利用できる「デビットカード」、なぜ普及しない?
デビットカードは、あまり普及が進んでいない印象を受けますが、なぜでしょうか。金融機関での勤務経験もある税理士に聞きました。

クレジットカードや電子マネーなど、現金以外の方法で決済を済ませる人が増えています。ただ、支払いと同時に口座から金額が引き落とされる「デビットカード」については、「対応していない店舗や通販サイトが多い」という印象を受けます。なぜデビットカードは、クレジットカードのように普及が進まないのでしょうか。税理士法人Bridge(東京都港区)代表で、金融機関での勤務経験もある黒田悠介さんに聞きました。
「J-Debit」は利用店舗が限定
Q.そもそも、クレジットカードとデビットカードは何が違うのでしょうか。
黒田さん「利用金額の引き落とし日と利用可能限度額に大きな違いがあります。
【(1)利用金額の引き落とし日】
クレジットカードを利用し代金を支払った場合、その代金は利用した日の翌月以降に銀行口座から引き落とされるのが一般的です。一方、デビットカードは、カードの利用時に登録している銀行口座から、使った金額がその場で引き落とされます。
【(2)利用可能限度額】
クレジットカードの場合、商品・サービスを購入した時点で引き落とし口座にお金が残っていなくても、支払日までに用意すれば問題ありません。あらかじめ決められている利用可能限度額までは、その時点で銀行口座にお金がなくても利用できます。
しかし、デビットカードは、引き落とし口座の残高を超えて買い物をすることはできません。銀行口座の残高以上に利用できない点が、クレジットカードと異なります」
Q.クレジットカードや電子マネー、スマホのバーコード決済に比べると、デビットカードの普及があまり進んでいない印象を受けます。なぜでしょうか。
黒田さん「近年、キャッシュレス化が進む中、クレジットカードなど、現金以外の方法で決済される割合が毎年伸びています。しかし、クレジットカードや電子マネー、スマホのバーコード決済に比べると、デビットカードによる決済金額は、あまり伸びてはいません。その理由として、クレジットカードの普及があると考えられます。
日本は、海外ほどクレジットカード審査が厳しくないので、クレジットカードが広く普及しており、デビットカードの需要がそれほど高くないのが現状です。またクレジットカードが作れない18歳未満の若年層においても『Suica(スイカ)』などの交通系ICカードや、『PayPay(ペイペイ)』といったスマホによるバーコード決済が浸透していることなども考えられます。
デビットカードには、『J-Debit(ジェイデビット)』(銀行などの金融機関で発行されたキャッシュカードをそのままデビットカードとして利用できるサービス)と『ブランドデビット』(VisaやJCBといったクレジットカードの国際ブランドが付いたデビットカード)の2種類があります。
そのうち、J-Debitに関しては利用できない店舗も多いため、『デビットカード=使い勝手が悪い!』というイメージが広がってしまったことも、デビットカードの普及が進まない一つの要因と思われます」
Q.J-Debitが使えない店舗が多いのはなぜでしょうか。対応端末が少ないのでしょうか。
黒田さん「J-Debitとブランドデビットとでは、利用時に店舗から金融機関に送信されるデータの形式が違うため、対応端末も異なります。J-Debitを利用できる端末機は、JCBの『JET-S』シリーズなどに限られています」
Q.店舗や通販サイトでデビットカードに対応しているかどうかを見分ける方法について、教えてください。
黒田さん「デビットカードのうち、J-Debitは、『J-Debitマーク』が貼られている加盟店で利用できます。原則的に通販サイトで利用することはできないので、注意が必要です。J-Debit加盟店は、日本電子決済推進機構のホームページで確認できます。
ブランドデビットはVISAやJCB、Mastercardといった各国際ブランド加盟店で使えます。J-Debitとは違い、通販サイトでも基本的に利用が可能です。サイトで利用できるかどうかは、支払い方法に記載された利用可能な国際ブランドのロゴで確認をしてください」
Q.デビットカードを使う際の注意点について、教えてください。クレジットカードにあって、デビットカードにはない機能もあるのでしょうか。
黒田さん「デビットカードは『1回払い』のみに対応しています。そのため、クレジットカードのように分割払いやリボ払い、キャッシングなどのサービスは利用できません。また、デビットカードは即時で決済を行う仕組みのため、原則としてETCカードの発行やガソリンスタンドの支払いなどに対応していないので注意が必要です」
(オトナンサー編集部)
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