ローン未返済の「マイホーム」、賃貸に出すのはダメ? 理由を専門家に聞いてみた
ローンの返済が完了していない持ち家を賃貸に出してはいけない理由について、専門家に聞きました。

住宅を購入後、転勤が決まり、引っ越しをしなければならなくなった経験がある人は多いのではないでしょうか。もし家族で赴任先に引っ越した場合、その間はマイホームが空き家状態となりますが、中には「転勤の期間が長い」などを理由に、マイホームを賃貸に出す人もいるようです。
ただ、ネット上では「ローンの返済中、賃貸に出すのは契約違反」といった声もあります。ローンの返済が完了していない場合、持ち家を賃貸に出してはいけないのでしょうか。金融機関での勤務経験もある、税理士法人Bridge(東京都港区)代表の黒田悠介さんに聞きました。
ローンの一括返済を求められるリスク
Q.そもそも、ローンの返済が済んでいない持ち家を賃貸に出してはいけないのでしょうか。理由も含めて、教えてください。
黒田さん「原則として、住宅ローンの返済が済んでない持ち家を賃貸に出してはいけません。通常、自身の居住用の住宅を買う場合、金融機関からの借り入れは『住宅ローン』という制度を利用する場合がほとんどです。
住宅ローンで借り入れるお金は、『本人が住むため』や『本人が所有し、家族が住むこと』といった形で使い道、すなわち資金使途が決められています。そのため、住宅ローンが返済されていない状態の場合、『本人が住む・家族が住む』といった状態が維持されていなければならず、第三者に貸してしまうと資金使途違反となってしまいます」
Q.では、ローンの返済が済んでいない持ち家を賃貸に出した場合、どのようなリスクがあるのでしょうか。
黒田さん「資金使途違反に該当してしまうため、金融機関から住宅ローンの残債の一括返済を求められるリスクがあります。住宅ローンを利用している住宅には抵当権が設定されているので、一括返済できない場合は住宅が差し押さえられ、競売となる可能性もあります。
ローンの一括返済を求められなかったとしても、基本的に金融機関からアパートローン(金融機関によって名称が異なる)への切り替えを求められることになります。一般的にアパートローンは、住宅ローンに比べて『金利が高い』『返済期間が短い』など融資条件が悪いので、予定していた収支と合わなくなるリスクがあります。
このほか、住宅ローンの所得税控除は、持ち家を賃貸に出すと受けられなくなるので、その点も注意が必要です」
Q.やむを得ない事情で、ローンの返済が済んでいない持ち家をどうしても賃貸に出したい場合、どうすればよいのでしょうか。
黒田さん「先述のように、住宅ローンの返済が済んでいない住宅を第三者に貸し出すことは原則として資金使途違反となります。まずは賃貸に出そうと思ったタイミングで融資元の金融機関へ相談してください。単身赴任や転勤、親の介護のためなど、やむを得ない事情の場合は『例外』として、住宅ローンの返済が済んでいない持ち家を賃貸に出すのを認められるケースもあります。
ただしこの対応は、ローンを借りている人の事情や金融機関によって判断が変わるため、絶対ではありません。原則として、住宅ローンからアパートローンへの切り替え(同じ金融機関)や借り換え(他の金融機関)をすることで、持ち家を賃貸に出すことが可能になります」
Q.住宅ローンがきっかけでトラブルに発展した事例について、教えてください。
黒田さん「2022年の会計検査院の検査によると、住宅金融支援機構が民間の金融機関と提携して提供する長期固定金利の住宅ローン『フラット35』の融資について、賃貸などとして不適切に利用されていたケースが56件、残高にして約19億円ありました。
フラット35を不正利用した人の中には、機構側から一括返済を求められた人もいます。中には、不動産会社からの提案がきっかけでフラット35を利用してアパートを購入し、賃貸事業を始めたケースもあるようです。
トラブルになってからでは遅いので、賃貸前にしっかりと金融機関に相談しましょう」
(オトナンサー編集部)
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