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テレワーク普及で東京近隣県へ「移住」、決断して本当に大丈夫? 後悔しない選択は?

職場でテレワークが導入されたのをきっかけに、都内からの移住を検討する人もいるようです。注意点はあるのでしょうか。

新幹線を使えば都内にも便利な熱海市
新幹線を使えば都内にも便利な熱海市

 新型コロナウイルスの影響でテレワークを導入する企業が増えましたが、それを機に東京都内から、茨城・群馬・栃木各県などへの移住を検討している人もいるようです。「住宅を安く手に入れたい」「自然豊かな場所に住みたい」などの理由から、高速バスや新幹線で都心に通勤できる範囲で住居を見つけるケースが目立っています。

 こうした移住は一見魅力的ですが、本当に決断しても大丈夫なのでしょうか。後悔しない移住先を見つけるためのコツや注意点について、不動産コンサルタントの田井能久さんに聞きました。

住居費節約、新鮮な食材…

Q.東京都内から、茨城、群馬、栃木、静岡、山梨各県などへの移住を検討する人が増えていますが、こうした地域に移住するメリット/デメリットは。

田井さん「メリットは何といっても、住居費を節約できることです。また、場所によっては新鮮な地元の野菜や魚が入手できることから、都会暮らしでは経験できない生活が可能になります。さらに、テレワーク中心の会社でも多少は出勤が必要かと思いますが、通勤に新幹線や高速バスを使う場合、目的地まで座れるため快適です。都心部のように満員電車に揺られて疲弊することはほとんどありません。

デメリットは、買い物や交通の利便性など都会ならではのメリットをすべて失うことです。家族にとって『田舎暮らし』が快適かどうかも分かりません。また、居住地が山や川、海に近い場合、都心よりも災害リスクが高まる可能性も考えられます」

Q.東京から茨城、群馬、栃木、静岡、山梨各県などへ移住をする際の注意点や心掛けるべきことはありますか。

田井さん「現在、テレワークをきっかけに都内から、質問に挙がった各県や千葉・埼玉・神奈川各県に移住することが一つのトレンドになっています。ただ、家族がいる場合に『世帯主が毎日出勤しなくてよくなったから』という理由だけで移住を決めていいかは、慎重に話し合う必要があると思います。

『どこに住むか』は『どのような生活をしたいのか』と直結する問題なので、トレンドではなく自分のライフスタイルをよく考えて選ぶ必要があります。いわゆる田舎暮らしになれば公共交通機関が少ないため、自分で車を運転して買い出しに行かないといけません。また、町内会や地域のルールを重視する地域も多いため、近所付き合いを積極的に行い、その土地のルールに慣れていく必要があります。それらを承知した上で決断すべきだと思います」

Q.東京からの移住を決断してもよいケース、見直した方がよいケースは。

田井さん「『本来は郊外での生活や田舎暮らしがしたかったのに、仕事の関係で仕方なく、都心から近い場所に住んでいる人』で、テレワークで今後も継続的に仕事ができ、すでに移住先の目星がついている人は移住するチャンスだと思います。

しかし、『毎日、会社に行かなくてもよくなったので、気分転換に田舎に引っ越しでもしてみるか』という程度の考え方の人は、新型コロナウイルスが終息すると都心に帰りたくなることが予想されるため、移住は無駄な出費が増えるだけだと思います。

引っ越しが趣味ならいいですが、一般的に住居を変えるのは手間もお金もかかるので慎重にすべきです。移住したい理由が最近思い付いたものでなく、自分でいつか実現してみたいと数年前から思い続けている『夢』のようなものであれば、検討してもいいと思います」

Q.後悔しない移住先を見つけるためのコツはありますか。例えば、住宅を探す際は大手の不動産業者を利用した方がいいのでしょうか。

田井さん「先述したように、まずは移住したい理由をはっきりさせる必要があります。

例えば、都会の利便性を享受している人が『住宅を安く手に入れたい』『移住が流行しているから』という理由だけで自然環境が豊かな地域に移住すると、どうしても都会よりも利便性が劣るため、なじむことができずに後悔する可能性が高いです。住居費を安くしつつ、利便性をある程度維持したいのであれば、東京都心から離れた県ではなく、千葉県や埼玉県にある各駅停車の駅周辺の物件を選ぶとよいでしょう。

十分な下見をせずに決めると『自分が想像していたものと違う』と感じる可能性もあります。そこで、まずは住民票を移さずに住んでみた上で、本格的な移住を判断してみてはいかがでしょうか。例えば、家具や家電を完備した住宅を月額制(水道光熱費込み、敷金・礼金などの初期費用不要)で貸し出す企業も登場しており、そのようなサービスを利用すると、比較的簡単に“お試し移住”を実現できます。

業者選びについてですが、大手の不動産業者が持っている情報は都心部の物件が中心なので、移転先の物件情報はその土地に根付いた不動産業者から手に入れた方がいいと思います」

Q.都心への通勤を想定した場合、茨城、群馬、栃木、静岡、山梨各県で、おすすめの地域はありますか。

田井さん「テレワークで月に数回しか都心に通勤しない人の場合、乗ったらすぐに都心へ行けるような交通機関が発達している所が便利だと思います。具体的には、東海道新幹線や上越新幹線、私鉄の特急停車駅沿いの街などがよいのではないでしょうか。そう考えると、例えば熱海市(静岡県)は風光明媚(めいび)で温泉もあり、新幹線ですぐ都心に行けるため、『テレワーカー向け住宅地』として個人的に注目しています」

(オトナンサー編集部)

田井能久(たい・よしひさ)

不動産鑑定士、ロングステイアドバイザー

大学卒業後、国内最大手の不動産鑑定事務所に勤務し、1995年に不動産鑑定士資格を取得。その後、米国系不動産投資ファンドで資産評価業務を担当し、全国各地でさまざまな物件の現地調査と価格査定を行った。2006年に独立し、タイ・バリュエーション・サービシーズ(http://www.valuation.co.jp/)を設立。海外事業も展開。1000件以上の評価実績を有する。滞在型余暇を楽しむ人に助言する「ロングステイアドバイザー」でもあり、2015年、マレーシアの企業と業務提携。MM2H(マレーシアの長期滞在ビザ)取得アドバイス業務を行い、自身も2018年にMM2Hを取得。名古屋地方裁判所の民事調停委員や愛知大学非常勤講師も兼務。

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