「賃貸」と「持ち家」はどちらが有利か メリット/デメリットを解説
日々生活していく中で、家を買うべきか迷うこともあると思います。「賃貸」と「持ち家」では、どちらの方が有利なのでしょうか。
結婚や出産などのタイミングで、家を購入すべきかどうか迷う人も多いと思います。以前であれば、「男は家を買って一人前」「賃貸は老後が不安」などと言われていましたが、近年は会社員の収入が伸び悩んでいる上に、昨年10月から始まった消費増税で、家計をやりくりするだけでも精いっぱいの状況の人もいるでしょう。
持ち家と賃貸では、将来的にどちらの方が安定した生活を送ることができるのでしょうか。専門家に聞きました。
貯蓄があれば老後も賃貸でOK
ファイナンシャルプランナーの長尾真一さんに聞きました。
Q.持ち家と賃貸では、どちらの方が有利なのでしょうか。
長尾さん「土地の価格や家賃の動向、各個人が希望するライフスタイルによって前提条件が変わるため、比較するのは難しいです。例えば、持ち家は『夢のマイホーム』と言われるように、経済的な価値だけでは判断できない部分もあります。まずは、自分が将来的にどのような生活を送りたいのかを考えることが大切ではないでしょうか」
Q.それでは、賃貸、持ち家のそれぞれのメリット/デメリットは。
長尾さん「賃貸は(1)『住宅ローン』という借金を負わずに済む(2)ライフスタイルに合わせて住む場所を自由に変えられるといったメリットがある一方で、家賃を払い続けなければならなかったり、広い部屋を見つけにくかったりするなどのデメリットがあります。
持ち家は(1)ローンを払い終えたら月々の負担がほぼなくなる(2)家が資産になる(3)広い場所に住めることがメリットですが、(1)ローン返済に縛られ住む場所が固定される(2)災害で家が損傷するリスクがある(3)少子高齢化で自宅周辺の商業施設などがなくなって生活が不便になる可能性がある――などのデメリットがあります」
Q.物件を購入する際の注意点は。
長尾さん「まずローンの月々の返済額を試算し、おおよその購入予算を決めることが大切です。なぜなら、予算を決めずに物件を見に行くと、どうしても『いい物件(=高額物件)』にひかれてしまいがちだからです。
そうなると『一生に一度の夢のマイホームだから…』と無理をして契約してしまい、結果的にローンを支払うためだけの生活になってしまいかねません」
Q.住宅ローンの月々の返済額は、月収の何割程度までなら問題ないのでしょうか。
長尾さん「住宅ローンの融資が受けられる基準である返済負担率(年収に占める年間返済額の割合)は30~35%とされていますが、これは借りられる額であって『安心して返せる額』ではありません。無理なく返済していくには、できれば収入の20%以内に収めるのが望ましいですが、年収や年齢、家族構成などによって条件は異なります。
また、子どもの成長に伴って教育費の負担が大きくなるなど、返済できる金額は年々変わっていきます。お金の長期的な流れを確認しておくことが大切です」
Q.もし、収入が低くて物件の購入が難しい場合、どのような対策が必要ですか。
長尾さん「賃貸の場合、一番の懸念はリタイア後も家賃を払い続けなければならないことです。そのため、少額でもいいのでコツコツと貯蓄をしておくことが大切です。より長く働いて収入を定期的に得ることができれば貯蓄を増やせますし、年金の受給を70歳まで繰り下げれば65歳で受け取るのに比べ、42%増額することができます。
このように、老後も家賃を払っていける状態をつくれば、賃貸に住み続けることも可能です」
Q.住宅ローンや教育費などを払いつつ、老後に向けた貯蓄を無理なく行うためのコツはあるのでしょうか。
長尾さん「まずは貯蓄を早く始めることが大切です。例えば、65歳までに1000万円をためようとする場合、45歳から積み立てを始めて20年間でためるなら、毎月の積み立て額は4万1666円必要ですが、25歳から40年間かけてためるのであれば、2万833円で済みます。
なお、貯蓄を運用すれば、複利(利子の上でさらに利子がつくこと)の効果も大きくなります。仮に年利3%で運用するとすれば、45歳から20年間なら毎月約3万460円、25歳から40年間なら毎月1万798円で1000万円をためることができます。
また、老後に向けての長期的な資産形成においては、『iDeCo』『つみたてNISA』といった税制優遇が受けられる制度もあります。制度を理解した上で、活用を検討してみるといいでしょう。
なお、住宅ローンがある場合、『iDeCo』などで積み立て運用する場合と繰り上げ返済に回す場合とで、どちらが有利になるのか確認する必要があります。試算が難しければ、ファイナンシャルプランナーに相談してみてはいかがでしょうか」
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