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不動産広告の「駅徒歩10分」「バス停徒歩5分」、どうやって調べている?

不動産広告に掲載されている「○○駅から徒歩10分」「△△バス停から徒歩5分」といった情報は、どのような方法で調べているのでしょうか。不動産コンサルタントに聞きました。

「駅から徒歩10分」、どうやって調べている?
「駅から徒歩10分」、どうやって調べている?

 賃貸住宅を探す際、通勤通学時の利便性を考え、不動産広告に掲載されている「○○駅から徒歩10分」「△△バス停から徒歩5分」といった情報を物件選びの基準にする人も多いと思います。広告に記載されている「○○駅から徒歩10分」「△△バス停から徒歩5分」などの情報は、実際に不動産会社の社員が歩いて調べているのでしょうか。不動産コンサルタントの田井能久さんに聞きました。

地図上の距離を基に計算

Q.多くの不動産広告には賃貸住宅の場所について、「○○駅から徒歩10分」「△△バス停から徒歩5分」という情報が記載されています。「徒歩○分」というのは、実際に不動産会社の社員が駅やバス停から歩いて調べているのでしょうか。

田井さん「不動産広告に記載されている『(駅やバス停から)徒歩何分』は、実際に駅やバス停から歩いて調べた結果ではありません。駅・バス停から物件までの地図上の距離(直線距離ではなく、歩く道のりの距離)を基に計算します。

そもそも、不動産広告で『出発地(駅やバス停など)から○分』と記載するときの基準は『不動産の表示に関する公正競争規約施行規則』の10条で『徒歩による所要時間は、道路距離80メートルにつき1分間を要するものとして算出した数値を表示すること。この場合において、1分未満の端数が生じたときは、1分として算出すること』と定められています。

つまり、計算式は『出発地(駅やバス停など)から物件までの距離(メートル)÷80』となり、例えば、『地図上で、駅から300メートル離れた場所にある物件』なら、300÷80=3.75分なので『徒歩4分』と表示します。なお、『不動産の表示に関する公正競争規約施行規則』とは、不動産公正取引協議会連合会という業界団体が策定し、公正取引委員会と消費者庁の認定を受けた業界のルールです」

Q.例えば、駅から800メートル離れた場所にある物件を紹介するとき、計算上は徒歩10分であるにもかかわらず、不動産広告で「徒歩5分」と表記し、実際よりも好条件な物件だとアピールした場合、問題になるのでしょうか。

田井さん「計算上は徒歩10分なのに不動産広告で『徒歩5分』と表示するのはもちろん、不当表示であり、問題となります。ただし、物件が駅から800メートルの距離にありながら、傾斜があって、歩くのに時間がかかる場合や、信号待ちや踏切での電車の通過待ちなどによって10分以上の時間がかかる場合は問題にはなりません。従って、不動産広告の表示はあくまでも目安として捉え、駅から物件までの所要時間は自分で歩いて確認する必要があると思います」

Q.「駅やバス停から実際にかかる時間と広告の時間が違う」物件があった場合、通報や苦情を訴える窓口はあるのでしょうか。これらのケースが通報や苦情の対象になり得るのかも含めて、教えてください。

田井さん「不動産公正取引協議会(東京都の場合、公益社団法人首都圏不動産公正取引協議会)が全国9カ所にあります。この団体が不動産広告を監視し、規約に反した広告表示を行った事業者に対し、警告や違約金を課徴する活動を行っています。一般消費者からの苦情や相談も受け付けているので、ここが窓口として適切だと思います。

先述のように、駅・バス停から物件までの移動時間はあくまで、出発地から物件までの地図上の距離を基に計算しているため、実際にかかる時間と異なる場合もあります。そのため、『駅やバス停から実際にかかる時間と広告の時間が違う』ケースは通報や苦情の対象にならないことが多いです。もちろん、『駅・バス停から物件までの地図上の距離は500メートルで、計算上は徒歩7分と表示すべきなのに徒歩5分と表示している』といったケースは問題になります」

Q.不動産広告で物件を探している人が「駅から近い」「この距離ならギリギリ住める」と感じるのは、どのようなときが多いのでしょうか。

田井さん「明確な定義はありませんが、駅から徒歩5分以内の物件は不動産広告で『駅近』と表現されることが多いと思うので、駅に近い物件といえます。また、徒歩10分以内の物件は駅に行くのに便利といえるでしょう。

一方、駅から歩いて15分(駅から1.2キロメートル)以上かかる物件については、人によっては徒歩圏外と考えるでしょう。駅から徒歩圏外の物件の場合、居住可能かどうかは個人の感覚や生活スタイルによって全く異なります。東京都内の場合、『駅から徒歩20分』はあり得ない物件かもしれませんが、地方の場合、最寄り駅から車に乗って、自宅に帰る地域も多くあるので、居住できないとは一概にはいえません」

(オトナンサー編集部)

田井能久(たい・よしひさ)

不動産鑑定士、ロングステイアドバイザー

大学卒業後、国内最大手の不動産鑑定事務所に勤務し、1995年に不動産鑑定士資格を取得。その後、米国系不動産投資ファンドで資産評価業務を担当し、全国各地でさまざまな物件の現地調査と価格査定を行った。2006年に独立し、タイ・バリュエーション・サービシーズ(http://www.valuation.co.jp/)を設立。海外事業も展開。1000件以上の評価実績を有する。滞在型余暇を楽しむ人に助言する「ロングステイアドバイザー」でもあり、2015年、マレーシアの企業と業務提携。MM2H(マレーシアの長期滞在ビザ)取得アドバイス業務を行い、自身も2018年にMM2Hを取得。名古屋地方裁判所の民事調停委員や愛知大学非常勤講師も兼務。

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