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「世界観」なき若者へ 書を捨てよ、旅へ出よう【後編】

「わかったつもり」は冷笑の対象になる

 もう一つ、海外旅行で大事なポイントは、先に強いと書いたものの、日本のパスポートを持っていたとしても、日本人は最強で万能ではないことに気づくことです。「欧米の白人社会で、東洋人である日本人は人種差別されることがある」という、「地球の歩き方」には載っていない体験もしてみたらよいでしょう。

 私が米国の東部にある都市で、穏やかな初夏の午後にしゃれたレストランに入った時のことです。気持ちのよいテラス席でビールを飲もうかと、いすに座った途端、ハイスクールしか出ていないような、典型的な「アホ面」の白人店員から「ゲッタウト!(出てけ)」と追い出されたことがあります。欧州でも似たような体験をしました。

 その時はムカついても、「日本人であること」や「白人社会圏にとって、アジア圏は世界の辺境でしかないこと」「日本の国際的立ち位置」「白人社会の欺瞞」など、フカーイ考察をすることができます。そうした経験則を持っていれば、今後、日本社会がさまざまな力関係で海外から無茶をふっかけられても、「それならこ~しますがな、フンフン」とすました顔で対処できるようになるでしょう。

 このような体感経験が、後に年をとってから「つぶしがきく」素地になります。だからこそ、借金してまでも若い頃に海外へ行ってみるメリットがあるわけです。自分の目で見たり、体験したりしたわけでもないのに、テレビやネットの断片的な伝聞でしかない海外の「リアル」を「デジャヴ感覚」でわかったつもりになることが一番良くないことだと私は思います。同程度の教養を持つ連中なら支障もないでしょうが、ワンランク上の人からはそういった「底の浅さ」は冷笑の対象になります。それは自分の価値を自分で低くする「損」以外の何者でもありません。

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サイゴー・ヴァン・ウィンクル

辛口社会エッセイスト

1960年代生まれで学生時代は「新人類」と呼ばれた。バブルを満喫した一方で、暗黒の不況時代の辛苦も味わった「酸いも甘いも知り尽くした」悲しいジェネレーション。シニカルにして小心者。得意とするのは、池上彰が教えてくれない社会時評。ナポリタンと椎名林檎をこよなく愛する。

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