不妊、老後不安、介護…「熟年再婚」の落とし穴を経験した3人の男性たち
彼女を安心させようと、前妻の家を査定
直樹さんには交際中の彼女(56歳)がいるのですが、彼女が将来のことを心配するのも無理はなく、すでに2年間も交際しているのに、いまだに再婚に踏み切れずにいたのです。直樹さんは彼女を安心させるべく、前妻が住む家の査定を不動産業者に依頼しました。査定額は1100万円だったので、売却すれば200万円の利益が出る計算です。
そこで、直樹さんは前妻に「もし倒れたらローンも返せない」と伝え、200万円の売却益を渡す代わりに来月末までに家を売却したいと頼み込んだのです。前妻が病気について疑わないよう診断書のコピーも添付しました。最初のうち、前妻は「約束と違うじゃない!」と聞く耳を持たなかったそうです。
そこで、直樹さんは「それなら、来月からローン(返済)を止めるから」と追撃したそうです。もちろん、住宅ローンを長期間返済しなければ、直樹さんはブラックリスト入りし、クレジットカードやカードローンの利用は停止されますが、今後、借り入れや融資、リボ払いを利用するつもりはないので痛くもかゆくもありません。
1100万円という査定額はあくまで現時点の金額です。今年8月に開催される東京五輪の影響で値上がりしており、売却時期が遅れれば遅れるほど売値が下がるので、直樹さんは「先延ばししない方がいいのでは?」と念押ししたのです。
しかし、前妻は「死ぬなら死ぬでいいわ!」と血も涙もないような言葉をぶつけてきたそうです。これはどういうことでしょうか。住宅ローンには団体信用生命保険(団信)が設定されています。これは、万が一、直樹さんが途中で亡くなっても住宅ローンの残高と同額の保険金が支給され、ローンが完済されることを意味します。
ただし死亡の場合、前妻には相続権はありません。もし、直樹さんが亡くなる前に再婚していた場合、直樹さんは他に財産を持っていないので再婚相手が自宅の権利の2分の1を相続します。前妻の子は残りの2分の1しか相続できず、売却する場合、再婚相手に2分の1の利益を渡さなければなりません。
もし、団信に特約が付与されていれば、死亡だけでなく特定の疾病を患った場合も住宅ローンの残高と同額の保険金が支給され、ローンは完済されます。しかし、直樹さんの住宅ローンには特約が付いていないので、住宅ローンはそのまま残ります。
そのため、直樹さんが糖尿病の合併症(網膜症、神経障害、血管障害…)を患った場合、収入は途絶えますが、貯金が全くないのでそれ以降、住宅ローンを返済するのは不可能です。銀行は自宅に抵当権が設定されているので、所有者の同意なく自宅を売却することが可能です。結局、直樹さんの提案と同じく売却という結果になるのです。
離婚当時、中学生だった子どもはすでに独立していて、前妻が広い家を持て余し、割高な固定資産税や管理費にきゅうきゅうとしていたので、最終的に、前妻は直樹さんの提案を承諾したようです。直樹さんには毎月10万円の余裕が生まれ、退職金と年金だけでなく将来の蓄えを用意する算段がついたので、ようやく籍を入れることができたのです。


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