不妊、老後不安、介護…「熟年再婚」の落とし穴を経験した3人の男性たち
満身創痍の前妻の母を引き合いに出し…
「はっきり言って、彼女さんのお母さんがどうなろうと私には関係ないわ! そっちの都合で慰謝料を減らすなんて納得がいかない! お母さんが倒れなければ慰謝料を減らさずに済んだんでしょ? ダメなら諦めればいいじゃない…実のお母さんじゃないんだし!」
前妻の傍若無人な物言いに、さすがの浩紀さんも内心、「自分さえよければそれでいいと思っているのか!」とカチンときたそうです。浩紀さんは3年前に再婚したとき、前妻にそのことを報告しなかったのですが、それは、彼女が当時の不倫相手だったからです。しかし、前妻は不倫相手が再婚相手だと感づいているので、辛辣(しんらつ)なメールを返してきたのでしょう。
では、前妻の母はどのような状況なのでしょうか。浩紀さんいわく、母は別居前のタイミングで自己免疫不全症によりリウマチを発症したそうです。さらに、膝、首、頸椎(けいつい)の骨を損傷して金属のボルトで固定しており、満身創痍(そうい)の状態なので、いつ介護が必要になってもおかしくありませんが、本当に母が倒れたらどうするつもりなのでしょうか。
浩紀さんは、前妻が「将来的には母と私、(浩紀さんと前妻の)娘の3人で暮らしたい」と口にしていたのを聞いたことがありました。現在、前妻は母と一緒に暮らしていませんが、先々は引き取るつもりなのは明らかです。そのことを踏まえた上で、浩紀さんはこう反論したのです。
「母の世話をすることは絶対にないし、母のために無駄金を一銭も使うつもりはない。万が一、引き取り手がいないなら野垂れ死にすればいい。あなたはそう断言できますか? 母を見捨てることができないのに、金がないくせに相手の母親を引き取るなんて身分不相応だって言うの? 言っていることとやっていることが矛盾しているんじゃないか?」
浩紀さんの豹変(ひょうへん)ぶりに何も言い返せなかったのか、ようやく気持ちが通じたのか、それとも前夫とこれ以上、話を続けることが精神的に耐えられなかったのか、今となっては定かではありませんが、前妻は最終的に浩紀さんの提案を受け入れたのです。
厚生労働省によると平成27年時点で、「夫が初婚、妻が再婚」というケースは婚姻全体の7.1%、「夫が再婚、妻が初婚」は10.0%、「夫、妻ともに再婚」は9.7%に達しています。昭和50年には、「夫が初婚、妻が再婚」は3.6%、「夫が再婚、妻が初婚」は5.2%、「夫、妻ともに再婚」は3.9%でした。再婚は40年で2倍以上に増えているので、3人のように、再婚時に家計の見直しを強いられる人は増えていくでしょう。
本当に好きな人と一緒にいられる楽しさ、新しい家庭を持つことの喜び、老後をともに過ごせる幸せ――。熟年再婚の光にばかり目が行きがちですが、相応の代償を払わなければならない“影”があることも覚えておいた方がよいでしょう。
(露木行政書士事務所代表 露木幸彦)
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