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自閉症児の息子は「程度の低い子」 スクール入会拒否の言葉から私が学んだ“伝え方”

「自分が納得できる」言い方を

 それでも、息子に水泳をさせたくて、また別の体験に行きました。そこでは、次のようなことを言われました。

「○○君は障害をお持ちなんですね。それでは、プールサイドでじっと座っていることは難しいかもしれませんね。私どもでは、障害のある方を指導できる専門のコーチがおらず、スタッフの数も限られています。また、水泳は一つ間違えば命に関わるスポーツです。生徒10人に対してコーチ1人なので、○○君が溺れるようなことがあったら大変です。入会をお受けしたいのはやまやまなのですが、誠に残念ながら、現状ではご希望をお受けすることが難しい状況です」

 断り文句には変わりないのですが、「プール側に迷惑がかかる」という企業サイドの理屈ではなく、保護者の気持ちに配慮して「お子さんの安全のためにも、この教室に入会しない方が賢明だ」と伝えてくれました。

 夫婦や親子の間でも、人間関係をつくっていく上で大切なのは「相手の利益になるように」「自分なら、どう言われたら納得できるか」の視点を持つことなのだと、しみじみ思ったのです。

相手を思う言葉に心は動く

 私はこの経験から、幼稚園や保育園の先生に向けて、発達障害が疑われる子どもがいた場合の「保護者への伝え方」の研修をしています。

「集団の中にいると、明らかに他のお子さんとは違います」「他のお子さんに迷惑がかかっていて、他の保護者からクレームが出ています」「園は集団生活の場です。○○君が一人だけ違う行動を取ってしまうので、困っています」

 これらの言い分は園サイドの都合であり、言われた保護者側はスムーズに受け入れられるものではないでしょう。この場合は、次のような伝え方が望ましいと思います。

「○○君は正直で裏表がなく、思ったことをストレートに言葉に出したり、ときには手が出たりして友達とうまくいかないようで、○○君自身も悩んでいる様子なのです。園では△△センターと連携しています。専門知識を持った職員が丁寧に的確なアドバイスをくれるので、一度お出かけになってみませんか」

「私どもも、専門家のアドバイスをもとに、○○君を保育の中で育てていきたいです。これからはお母さま一人で抱えて頑張りすぎなくてもいいんですよ」

 断り方や伝え方にも、「言い方」があります。言い方一つで印象が変わるこうした対応について、皆さんはどうお感じになりますか。

(子育て本著者・講演家 立石美津子)

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立石美津子(たていし・みつこ)

子育て本著者・講演家

20年間学習塾を経営。現在は著者・講演家として活動。著書は「1人でできる子が育つ テキトー母さんのすすめ」「はずれ先生にあたったとき読む本」「子どもも親も幸せになる 発達障害の子の育て方」など多数。ノンフィクション「発達障害に生まれて 自閉症児と母の17年」(小児外科医・松永正訓著)のモデルにもなっている。オフィシャルブログ(http://www.tateishi-mitsuko.com/blog/)。

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