オトナンサー|オトナの教養エンタメバラエティー

自閉症児には「小さい声で話そうね」が伝わらない…実は保育園でも多用されている《避けた方がいい指示》の具体例

自閉症児を育ててきた筆者は、「具体的ではない指示をしても伝わらない」と感じる場面があるといいます。しかし実際、曖昧な指示は保育園などでも使われているようで……?

自閉症児を混乱させてしまう「指示の仕方」がある? ※画像はイメージ
自閉症児を混乱させてしまう「指示の仕方」がある? ※画像はイメージ

 自閉症の人は「相手の気持ちを想像する」「これから起こることを予測する」「状況を柔軟に考える」といった、日常生活に必要な社会的想像力が年相応に育っていないといわれています。そのため、具体的に伝えなければ分かってくれないことがある……と、自閉症児を育ててきた私は感じています。

 ところが、幼児に対する独特の言い回しなのでしょうか、次のような指示を耳にすることがあります。                                                                                                                                                                                                                                

 例えば、子どもたちに静かにしてほしいとき、「アリさんの声で話してね」と伝える保育士。子どもたちは“アリの声”を実際聞いたことがありませんし、そもそもアリって声を出すのでしょうか。「アリ=小さい」とイメージをつなげることができる定型発達の子はそれでも分かると思いますが、発達障害の子には、声の大きさと体の大きさのイメージが連動しないのではないでしょうか。

 でも、だからといって「小さい声で話そうね」と言っても分かりません。療育で使う、音のレベルを測れる教材もありますが、「1の声、2の声、3の声…」というのも分かりにくく、一体どうしたらよいのか迷います。この教材では、「5=音量大」となり、数字が小さくなると音が小さくなることを示しますが、「1だから一番大きな音」と考える子もいます。「このくらいの声で」と先生がまず見本を見せ、マネをさせて、できたら褒めるとよいと思います。

 私自身、現在保育園でひらがな指導をしているのですが、つい「カタツムリのようにゆっくり書いてね」と例えてしまうことがあります。カタツムリが動く様子を実際に見たことがある子とない子がいて、そこには体験格差があります。そして、年長さんには「カタツムリは鉛筆を持たないから分からない」と切り返されたこともあります。

「幼児語」にも注意

 理由は分かりませんが、昔に比べて、最近は幼児語を使う親御さんが減ったように思います。でも先日、久々に耳にしました。電車内で、2歳くらいの子に「あんよ、ばっちいからね。ここおんもだから」と言っている親御さんがいたのです。「あんよ」は“足”のこと、「おんも」は“外”という意味です。

 もし、その子が発達障害児だったらどうでしょう。最初「あんよ」と教えておいて、途中から「足」と言い直す。「おんも」から「外」、「ワンワン」から「犬」、「ニャーニャー」から「猫」……。こういった切り替えは、発達障害の子にとって混乱することがあります。

 子どもが「ワンワン」と言ったら「そうだね、犬だね」、「ニャーニャー」と言ったら「そうだね、猫だね、ニャーって鳴くね」。こうやって自然に日本語を覚えていきます。

 もちろん、子ども自身が発する言葉が幼児語っぽくなるのは仕方ありませんから、言い直しをさせる必要はありません。でも、親まで一緒になって幼児語を多用してしまうと、日本語の獲得が遅くなってしまうのではないかと思うのです。これは定型発達の子にも言えることですが、特に自閉症の子には、さらに理解が難しくなるのではないでしょうか。

 25歳になる私の息子には、知的障害と自閉症があります。あるとき料理教室で、先生がジャガイモについて「この子を切って」と言ったことで、人間の子を探し回っていることがありました。

 自閉症児にとっては「塩少々」「キュウリをちょうどよい長さに切って」といった指示も分かりにくいもの。「塩6グラム」「小さじ1杯」「キュウリは3センチに切ってください」という具体的な指示だと分かりやすいようです。

 料理はレシピ通りに作るとバッチリ味が決まります。でも、指示の仕方が曖昧だと混乱します。水の量、グラム数などを明確に指示してもらえるのであれば、自閉症の子には合っている習い事だと思います。

(子育て本著者・講演家 立石美津子)

【画像】「えっ…?そうだったの……?」 これが「発達障害児」にみられることのある行動です(5つ)

画像ギャラリー

立石美津子(たていし・みつこ)

子育て本著者・講演家

20年間学習塾を経営。現在は著者・講演家として活動。自閉症スペクトラム支援士。著書は「1人でできる子が育つ『テキトー母さん』のすすめ」(日本実業出版社)、「はずれ先生にあたったとき読む本」(青春出版社)、「子どもも親も幸せになる 発達障害の子の育て方」(すばる舎)、「動画でおぼえちゃうドリル 笑えるひらがな」(小学館)など多数。日本医学ジャーナリスト協会賞(2019年度)で大賞を受賞したノンフィクション作品「発達障害に生まれて 自閉症児と母の17年」(中央公論新社、小児外科医・松永正訓著)のモデルにもなっている。オフィシャルブログ(http://www.tateishi-mitsuko.com/blog/)、Voicy(https://voicy.jp/channel/4272)。

立石美津子(たていし・みつこ) 関連記事

もっと見る

著書案内(立石美津子)1 関連記事

もっと見る

著書案内(立石美津子)2 関連記事

もっと見る

編集部おすすめ記事

暮らし・ライフ 最新記事

暮らしの記事もっと見る

ライフの記事もっと見る

コメント