「脳卒中」の危険サインを見逃しちゃダメ 医師が警告する“直ちに救急車を呼ぶべき症状”とは
脳卒中に関して、直ちに救急車を呼ぶべき症状を医師に聞きました。

がんや心疾患などとともに日本人の死因として多いのが「脳卒中」です。そもそも、なぜ脳卒中になるのでしょうか。また、脳卒中を疑う危険なサインには、どのような症状があるのでしょうか。基幹病院で長年勤務し、総合内科専門医である、たいや内科クリニック(愛知県豊田市)院長の加藤大也さんが解説します。
脳卒中の3大疾患「脳梗塞」「脳出血」「くも膜下出血」とは
そもそも、脳卒中は、脳の血管が詰まったり、破れたりすることで、突然、脳の働きに障害が生じる病気の総称です。脳の血管が詰まる「脳梗塞(のうこうそく)」、脳の血管が破れる「脳出血」「くも膜下出血」などの病気が含まれています。これら3つの病気の原因や特徴は次の通りです。
■脳梗塞
動脈硬化や血栓により脳の血管が詰まり、脳の一部に血液や酸素が十分に届かなくなることで発症します。また、心房細動によって心臓内にできた血栓が血流に乗って脳の血管を詰まらせることもあります。主な症状は「片側の手足のまひやしびれ」「言葉が出ない」「ろれつが回らない」「視野が欠ける」などです。
■脳出血
高血圧などによって脳の血管が破れ、出血することで発症します。高血圧は重要な危険因子ですが、高齢者では脳アミロイドアンギオパチーなどが原因となることもあります。主な症状は、突然の片側の手足のまひ、言語障害、意識障害などです。頭痛や嘔吐(おうと)を伴うこともありますが、必ずしも激しい頭痛が現れるわけではありません。
■くも膜下出血
脳を覆う「くも膜」と「軟膜」の間にある、くも膜下腔に出血が生じる病気です。多くは脳動脈瘤の破裂によって発症します。突然発症し、数分以内に痛みが最も強くなる激しい頭痛(雷鳴頭痛)が典型的で、嘔吐や意識消失などを伴うことがあります。ただし、すべての患者さんに典型的な激しい頭痛が現れるわけではありません。
脳卒中の危険サインを表す「FAST」
脳卒中の発症を早期に発見するための合言葉が「FAST」です。これは単なる前兆ではなく、すでに脳卒中を発症している可能性を示す重要なサインです。この言葉を覚えてください。顔や腕のまひは、体の片側に現れることが多いのが特徴です。
■F(Face)顔のまひ
片方の顔が垂れ下がる、笑顔がゆがむ。
■A(Arm)腕のまひ
片方の腕が上がらない、力が入らない。
■S(Speech)言葉の障害
言葉がうまく出てこない、ろれつが回らない、相手の言葉が理解できない。
■T(Time)時間が重要
上記の症状が一つでも突然現れたら、直ちに救急車を呼びましょう。そのほか、片側の手足のしびれや突然の視野の異常、物が二重に見える、急に立てなくなる、強いふらつき、突然の激しい頭痛なども脳卒中を疑う重要な症状です。「いつもと違う」「何かおかしい」と感じたら、脳卒中の可能性を考え、迅速に対応することが大切です。
近年では、FASTに「B(Balance:バランス障害)」と「E(Eyes:目の異常)」を加えた「BE-FAST」という考え方も用いられています。FASTだけでは脳卒中のすべての症状を捉えられるわけではありません。特に小脳や脳幹などの脳卒中では、突然の歩行困難、強いふらつき、物が二重に見えるといった症状が現れる場合もあります。
また、突然の片側のまひや言語障害などが数分から数十分で改善する場合があります。これは「一過性脳虚血発作(TIA)」の可能性があり、その後に脳梗塞を発症する危険性が高まります。ただし、症状が短時間で改善しても、すでに脳梗塞を発症している場合や、別の病気が原因となっている場合もあります。 症状が消えた場合も安心せず、直ちに救急医療機関で評価を受けることが重要です。
なお、すべての患者さんに前兆が現れるわけではなく、多くの脳卒中は前触れなく突然発症します。また、片側のまひが典型的ですが、必ずしもすべての患者さんに認められるわけではなく、両側の症状や非典型的な症状が出ることもあります。
脳卒中を予防するためには、塩分を控えた食事や適度な運動を心掛け、禁煙を徹底しましょう。また、高血圧や糖尿病、脂質異常症、心房細動などがある場合は、定期的に医師の診察を受けて治療を継続することが重要です。特に心房細動では、脳梗塞のリスクに応じて抗凝固薬による治療が必要になる場合があります。
疑う症状が出たら? 直ちにとるべき「3つの行動」
脳卒中は、発症後の対応がその後の人生を大きく左右します。もし自分や周囲の人に脳卒中を疑う症状が出た場合、次の行動を徹底してください。
(1)迷わず119番する
「少し様子を見る」という選択肢はありません。先述のFASTの症状、または「突然、顔や片側の手足にまひが生じる」「言葉が出ない」「ろれつが回らない」「急に立てなくなる」「視野が欠ける、物が二重に見える」「経験したことのない激しい頭痛が起こる」などの症状が現れた場合は、直ちに救急車を呼びましょう。
嘔吐は脳卒中に伴うことがありますが、嘔吐だけで脳卒中と判断することはできません。ただし、激しい頭痛や意識障害などを伴う場合には、緊急の対応が必要です。
症状が軽くても、短時間で改善しても、自己判断で様子を見ることは避けてください。また、本人が自動車を運転して病院へ向かうことも避けましょう。
(2)安静にする
救急車が到着するまで、患者さんを無理に歩かせず、安全で楽な姿勢で安静を保ってください。脳梗塞か脳出血かは症状だけでは判断できないため、自己判断で頭の高さを調整する必要はありません。
意識があり、呼吸が安定している場合は、無理に体勢を変えず、安静を保ちます。反応がなくても普段どおりの呼吸がある場合や、嘔吐によって窒息する危険がある場合には、気道を確保し、必要に応じて体を横向きにする「回復体位」を取らせます。呼吸の状態を継続して確認することも重要です。
ただし、転倒などによる頭部や頸部の外傷が疑われる場合は、気道確保の必要性にも配慮しながら、119番の指令員の指示に従って対応してください。
また、脳卒中では飲み込む機能が障害されることがあるため、飲食物や薬を自己判断で口から与えないようにしましょう。
反応がなく、普段どおりの呼吸をしていない場合は、119番の指示に従って心肺蘇生を開始してください。近くにAEDがある場合は、手配して使用します。
(3)時間を確認する
症状が出た具体的な時間を確認し、救急隊や医師に伝えます。例えば「○時ごろに急に話せなくなった」「△時に腕が動かなくなった」といった正確な情報は、治療方針の決定に役立ちます。発症時刻が分からない場合には、最後に普段どおりだった時刻を伝えることも重要です。
脳梗塞では、原則として発症から4時間半以内に治療を開始でき、画像検査などによって適応があると判断された場合に、血栓を溶かす薬を点滴する「t-PA静注療法(血栓溶解療法)」が行われることがあります。
また、脳の太い血管が詰まっている場合には、カテーテルを用いて血栓を取り除く「機械的血栓回収療法」が選択されることもあります。機械的血栓回収療法は、閉塞している血管の部位や脳の画像検査の結果など、一定の条件を満たす患者さんでは、最後に正常だったと確認できた時刻から最大24時間以内でも適応となる場合があります。
ただし、すべての脳梗塞に24時間まで治療が可能という意味ではなく、治療開始は早いほど望ましいとされています。さらに、発症時刻が不明な脳梗塞でも、MRIなどの画像所見に基づき、t-PA静注療法の適応となる場合があります。
これらの治療にはそれぞれ適応条件があり、検査結果や患者さんの状態などを踏まえて医師が判断します。そのため、「もう時間がたってしまったから」と諦めず、脳卒中が疑われたら直ちに救急車を呼ぶことが大切です。















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