フロス、歯間ブラシのやりすぎで歯茎が下がる? 逆効果になる“NGな使い方”とは【歯科医解説】
デンタルフロスや歯間ブラシの正しい使い方について、歯科医師に聞きました。

11月8日と同月9日は「歯ぐきの日」です。佐藤製薬(東京都港区)が、「いい(11)歯(8)ぐ(9)き」と読む語呂合わせから、制定しました。
歯周病予防のためにデンタルフロスや歯間ブラシを使っている人は多いのではないでしょうか。ただし、使い過ぎで歯茎が下がってしまったケースもあるようです。
そこで、デンタルフロスや歯間ブラシの正しい使い方について、医療法人社団D&J ひらの歯科医院(新潟市西区)理事長で歯科医師の平野大輔さんに聞きました。
強すぎる力、やりすぎは歯茎を下げてしまう
Q.デンタルフロスや歯間ブラシを使うときの注意点について、教えてください。
平野さん「フロスや歯間ブラシが大切な道具であることは間違いありません。ただ、使い方を間違えると、かえって歯や歯茎を傷めてしまうことがあります。
私が一番お伝えしたいのは、『強く入れすぎない』『何度もやりすぎない』ということです。歯と歯の間の歯茎は、とてもデリケートです。フロスを勢いよくパチンと押し込んだり、サイズの合わない太い歯間ブラシを無理にねじ込んだり、同じ場所を何回も何回もこすったりしていると、少しずつ歯茎が傷つき、やがて下がってしまいます。これを『歯肉退縮(しにくたいしゅく)』といいます。
一度下がってしまった歯茎は、自然には元に戻りません。歯茎が下がると、歯と歯の間のすき間が広がって食べ物が挟まりやすくなったり、歯の根の部分が露出して冷たいものがしみやすくなったり、根の部分に虫歯ができやすくなったりします。見た目にも、歯が長くなったように見えたり、歯と歯の間に黒いすき間が目立ったりするようになります。
実際に頑張りすぎて歯茎が下がってしまった患者さんがいらっしゃいました。その人は、歯間ブラシをとても一生懸命に使われていました。お話を伺うと、毎日、何回も力を入れて歯間ブラシを動かしていたそうです。
ところが、歯茎がすっかり下がってしまい、『最近、食べ物が挟まりやすいんですよね』とおっしゃるのです。歯間ブラシを頑張っていたからこそ、すき間が広がり、食べ物が挟まりやすくなってしまったとのことです。とても熱心でまじめな方だっただけに、私としても心苦しいケースでした。
お口のケアは『頑張れば頑張るほどよい』というものではありません。強くやりすぎることは、失敗の元になってしまうのです」
上手に使うためのポイント
Q.では上手に使うにはどうしたらよいのでしょうか。
平野さん「フロスを使うときは、歯と歯の接触点を、のこぎりを引くように小さく前後に動かしながら、ゆっくりと通します。通したら、歯の側面に糸を沿わせるようにして、上下に数回動かします。歯茎の中に深く押し込む必要はありません。歯茎の縁に軽く届く程度で十分です。
歯間ブラシは、無理なく入るサイズを選ぶことが何より大切です。入れるときに強い抵抗を感じたり、痛みがあったりする場合は、サイズが大きすぎます。歯茎を突き刺さないよう、歯茎の形に沿わせてそっと差し込み、数回前後に動かせば十分です。毛先が開いたり、ワイヤーが曲がったりしたら、交換の目安です。
使い始めのころに歯茎から少し血が出ることがありますが、これは歯茎に炎症があるサインであることが多く、やさしく続けているうちに、1〜2週間ほどで治まってくることがほとんどです。
ただし、出血がいつまでも続く場合や、痛みが強い場合は、使い方が合っていないか、歯周病が進んでいる可能性もありますので、歯科医院で相談してください。頻度は、1日1回、時間をかけて丁寧に行えば十分です。寝ている間は唾液が減り、細菌が増えやすくなるため、できれば夜、寝る前に行うのがおすすめです」
よくある疑問(持ち手・ワックスの有無)
ここで私が患者さんからよくいただく質問や、患者さんに伝えていることについて、紹介します。
■よくいただく質問(1)持ち手つきのフロスと、糸だけのフロス、どちらがよいですか?
フロスには、プラスチックの持ち手(ホルダー)がついたタイプと、糸だけを巻いたタイプ(ロールタイプ)があります。診療室で、『どちらがいいですか?』とよく聞かれますが、私は、ご自身が使いやすい形であれば、どちらでも構わないとお答えしています。
糸だけのタイプは、必要な長さだけ切って使うので経済的です。ただ、指に巻きつけて歯と歯の間に通す操作が難しく、特に奥歯は慣れるまで時間がかかります。そのため、操作が難しいと感じる場合には、持ち手つきのものを使っていただいています。大事なのは、道具の種類よりも、毎日使い続けられることです。
■よくいただく質問(2)フロスはワックスつきと、ワックスなし、どちらがよいですか?
フロスには、表面にワックスが塗ってあるタイプと、塗っていないタイプがあります。ワックスなしのタイプは、繊維が広がって歯の表面の汚れをからめ取りやすいといわれていますが、歯と歯の間がきつい場所では引っかかりやすく、糸がほつれたり切れたりすることがあります。
フロスを通そうとしたときに、滑りが悪くて途中で挟まってしまうようであれば、ワックスつきのものを使ってみてください。滑りがよくなり、無理な力をかけずに歯と歯の間に通しやすくなります。
歯ブラシプラスアルファで10年後の歯を守る
フロスや歯間ブラシは、毎日の歯磨きに少しの手間を加えるだけで、虫歯や歯周病の予防に大きな力を発揮してくれる道具です。
ただし、合わない道具を使ったり、強くやりすぎたりすると、かえって歯茎を傷めてしまうことがあります。『自分に合った道具を』『やさしく』『毎日続ける』。この3つを心掛けていただければ、それだけで10年後、20年後のお口の状態は大きく変わってくるはずです。
どの道具をどう使えばよいか迷ったときは、どうぞ遠慮なく、かかりつけの歯科医院に相談してみてください。
(オトナンサー編集部)











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