「血糖値が高いから激しい運動」は要注意!? 食後“10分の散歩”がおすすめなワケ
糖尿病の人が激しい運動をした場合、体にどのような悪影響があるのでしょうか。運動時の注意点について、眼科医に聞きました。

秋は「食欲の秋」といわれ、食べ物がおいしい季節です。ただ、健康診断で血糖値が高いと指摘され、運動を始めようと考える人もいるのではないでしょうか。「毎日30分も運動する時間がない」と、始める前から諦めてしまうケースもあります。
短い時間でも、体を動かすことに意味はあるのでしょうか。また、糖尿病の人が激しい運動をした場合、体にどのような悪影響があるのでしょうか。運動時の注意点について、いわみ眼科(兵庫県芦屋市)理事長で眼科医の岩見久司さんに聞きました。
「まとまった運動」ができなくても大丈夫?
Q.血糖値が高いのが気になりますが、運動する時間が取れない場合、どうすればいいのでしょうか。数分だけ動いても意味はありますか。
岩見さん「短い活動を繰り返すことにも、血糖面でのメリットが示されています。例えば、普段あまり体を動かさない、過体重または肥満の2型糖尿病患者24人を対象に、座り続ける場合と、30分ごとに3分間ゆっくり歩く場合などを比べた試験があります。歩行を挟むと、座り続ける場合より、実験当日の食後の血糖値の上昇が抑えられました。
ここで行ったのは、『1日に一度、3分だけ歩く』ことではなく、座りっぱなしの合間に、短い歩行を繰り返すことです。日本糖尿病学会も、長時間座り続けず、30分を超える座位を中断して、歩行などの軽い身体活動を挟むことを勧めています。
『仕事の合間に少し歩く』『テレビを見続けず、家の中を歩いて用事を済ませる』という動きから始めてみてください。『まとまった運動ができないから、今日は何もしない』という二択にしなくてよいのです」
Q.食後に10分歩くのも、血糖値対策になるのでしょうか。
岩見さん「食後に分けて歩く方法についても、研究があります。2型糖尿病の成人41人を対象に、『時間帯を指定せず、1日30分歩くよう勧める』方法と、『朝・昼・夕の主な食事の後に10分ずつ歩くよう勧める』方法を、それぞれ2週間比べた試験です。
食後に分けて歩くよう勧めた期間の方が、食後3時間の血糖上昇を評価する指標が低くなり、特に夕食後に差が大きくなりました。
ただし、これは『1日10分歩けば十分』と示した研究ではありません。短く分けて、食後に歩く方法を検討したものです。
また、先ほどの座りっぱなしを中断する研究も含め、主に短期間の血糖値への効果を調べています。この歩き方だけで網膜症や失明を防げると、直接証明したわけではありません。
それでも、長い運動時間を確保することだけにこだわらず、生活の中に歩く機会を組み込む参考にはなります。まず続けられる場面を一つ見つけ、体調に合わせて活動を増やしていくとよいでしょう」
激しい筋トレは危険? 眼科医が警告する「目のリスク」
Q.一方で、「血糖値を下げようとして激しい運動をする」ことにはどのようなリスクがあるのでしょうか。例えば、糖尿病の人が運動を始めるときに目の検査が重要といわれる理由を教えてください。
岩見さん「糖尿病の人が運動する際に検査が必要なのは、糖尿病の合併症によって、適した運動の種類や強さが変わるからです。運動は糖尿病の管理に役立ちます。しかし、合併症の一つである『糖尿病網膜症』が進むと、目の奥に出血しやすい異常な血管が生えることがあります。
このような状態では、激しい運動や、息を止めて強く力む筋力トレーニングなどが、目の中の出血や網膜剥離につながる恐れがあるため、運動内容を調整する必要があります。日本の糖尿病診療ガイドラインでも、激しい運動療法の前には、眼科で網膜症の状態を確認するよう説明されています。
ただし、これは『糖尿病の人は運動してはいけない』という意味ではありません。目の状態が安定している方まで、日常の軽い散歩を一律に控えるよう勧めるものでもありません。
特に、糖尿病があるのに眼科を受診していない人や、受診が途切れている人は、本格的な運動を始める機会に、目の状態も確認してほしいと思います。運動を止めるためではなく、安全に続けるための検査です」
Q.よく見えていても、糖尿病網膜症になっていることがあるのですか。
岩見さん「あります。『よく見えるから、目は大丈夫』とは判断できません。網膜は、目の奥で光を受け取る組織です。糖尿病では、その細い血管から水分が漏れたり、血管が詰まったりします。ところが、こうした変化が起きても、初めのうちは自覚症状がないことが多いのです。
視力検査で『見えるか』を調べることと、眼底検査で『網膜が健康か』を調べることは別です。内科の血液検査だけでも、網膜にどの程度の異常があるかは分かりません。糖尿病の持病がある人は、見えにくくなるのを待たず、眼科で定期的に確認することが大切です。受診の間隔は、網膜症の程度や血糖値の状態などに応じて決めます。
また、急に黒い点や糸くずのようなものが増えたり、視界がかすんだりした場合は、次の予約日を待たずに眼科に相談してください」
Q.安全に運動を続けるために、注意することはありますか。
岩見さん「治療中の人は、薬による低血糖にも注意してください。インスリンや一部の糖尿病薬を使っている場合、運動中だけでなく、運動後にも血糖が下がり過ぎることがあります。運動する時間、食事との関係、血糖の確認方法、低血糖への備えを主治医と相談しておきましょう。薬の量を自己判断で変えるのは避けてください。
すでに運動制限を受けている人や、足に傷がある人などは、その状態に合わせた方法を選ぶ必要があります。『短い運動だから誰にでも安全』とは限りません。
また『少し歩けば食べ過ぎを帳消しにできる』というものでもありません。食事の量やバランス、必要な薬物治療と組み合わせて考えることが大切です。
血糖値が気になる人は健診で確認し、異常を指摘されたら内科を受診しましょう。糖尿病のある人は、眼科の定期受診も忘れないでください。
『食後に少し歩く』『座り続けず、合間に体を動かす』『自分の目や体の状態を知る』といったことについて、最初から完璧を目指さず、続けられることから始めてほしいと思います。今後も日々の生活を楽しむために、目の検査は定期的に受けていただきたいですね」
(オトナンサー編集部)



























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