新NISAで“資金不足”の危機? 「NISA貧乏」にハマる人の共通点&落とし穴【専門家解説】
新NISAの口座選びの正解や選び方を間違えた場合のリスクについて、専門家に聞きました。

SNSなどで「NISA貧乏」という言葉が注目されています。これは、新NISAの非課税枠を埋めようと無理な金額を投資に回してしまい、手元の現金が不足して日々の生活が苦しくなってしまう状態を指します。
「早く資産を増やしたい」という焦りから、生活を圧迫するほど投資にのめり込んでしまうのはなぜなのでしょうか。NISA貧乏に陥る人の特徴や、欲に惑わされず健全に資産形成を進めるコツについて、資産運用の支援事業を行う、Financial DC Japan社長の岩崎陽介さんが解説します。
「NISA貧乏」に陥っている4つの危険サイン
Q.そもそも「NISA貧乏」という言葉はどのような状態を表すのでしょうか。自分が該当しているかどうかを判断する目安はありますか。
岩崎さん「『NISA貧乏』は、金融庁などが定めた公式の制度用語ではなく、一般に使われる俗称です。一般的には、新NISAの非課税枠を埋めることを優先するあまり、日々の生活を切り詰めてしまっている状態を指す言葉として使われています。
本来、資産形成は将来の安心や豊かさのための手段のはずですが、いつの間にか『枠を埋めること』『口座の残高を増やすこと』自体が目的化し、今の生活の質を犠牲にしてしまうケースが見られます。
自分がNISA貧乏に陥っていないかを判断する目安としては、次のような状態に心当たりがないかを確認してみてください」
(1)生活防衛資金(急な病気やケガ、収入減に備えるお金)や、数年以内に使う予定のあるライフイベント資金にまで手をつけて積立投資に回している。
(2)積立額を増やすために家族との旅行や外食、友人との交流、自己投資といった「今しか経験できないこと」を過度に我慢している。
(3)資産形成の目的やゴールの金額が曖昧なまま、とにかく満額を埋めなければという強迫観念に駆られている。
(4)借金をしてまで投資に回そうとしている。
これらは診断基準ではありませんが、一つでも当てはまる場合は、一度立ち止まって積立額や家計の状況を見直すきっかけにしてください。特に、投資に回すために生活防衛資金を取り崩している場合や、投資のために新たに借金をしようとしている場合は、優先して見直す必要があります。
「投資」と「ギャンブル」を履き違える人の特徴
Q.なぜNISA貧乏になるほど投資をしてしまうのでしょうか。投資とギャンブルの違いや、両者を履き違える人の特徴も含め、教えてください。
岩崎さん「背景には、『早く資産を増やしたい』という焦りや、SNSなどで他人の運用成績や情報を目にして不安になり、周りに置いていかれたくないという心理があると感じています。ゴール(何のために、いつまでに、いくら必要か)を決めずに始めてしまうと、際限なく『もっと増やさなければ』という気持ちに駆られやすくなります。
投資とギャンブル・投機の違いは、保有期間の長さだけで単純に線引きできるものではないと考えています。私が大事だと思うのは、次の4点です」
(1)株式なら企業の利益成長や配当、債券なら利子収入など、保有する資産の収益源とリスクを理解しているか
(2)特定の銘柄や資産に集中せず、時間・資産・地域を分散できているか
(3)借入やレバレッジに頼らず、失っても生活に支障のない範囲で行っているか
(4)長期・積立・分散など、短期的な値動きや感情に振り回されにくいルールに沿っているか
値動きの予測だけを頼りに短期で当てにいく行為や、根拠なく特定の銘柄に全資金を集中させる行為は、保有期間の長短にかかわらず、投機やギャンブルに近づいていくと考えています。
なお、宝くじや、ルーレットのように運営者側に有利なルールが設定されたカジノゲームなど、典型的なギャンブルは、賞金以外に運営者側の収益や経費が組み込まれているため、参加者全体で見た収支の期待値はマイナスになる構造です。たとえば宝くじは、当せん金の総額が原則として発売総額の5割以内と法律で定められています。同じ条件であれば、購入・賭けの総額が増えるほど、期待値ベースでの損失額もそれに比例して大きくなります。ただし、期待値がマイナスということは、毎回必ず負けるという意味ではありません。
一方、株式の短期売買のような投機については、手数料や税金、感情的な判断による損失拡大などのリスクはあるものの、「続ければ続けるほど必ず資産が減る」と一律に言えるものではありません。
ただし、これは私見ですが、短期売買を安定した資産形成の手段だと誤解すると、損失回復を急いだ売買や過剰な取引につながり、生活を圧迫するほどのめり込む一因になり得ると感じています。
NISAに関して言えば、そもそもNISA口座では信用取引はできず、成長投資枠でもデリバティブ取引を用いた一定の投資信託や、毎月分配型の投資信託などは対象外になっています。また、NISA口座で商品を売却しても、その年に使った年間投資枠は戻りません。売却と買い直しを繰り返すと、年間投資枠を早く使い切ってしまうことになります。一方、非課税保有限度額(総枠)は、現行制度では、売却した商品の取得金額分を翌年以降、その年の年間投資枠の範囲内で再利用できる仕組みです。NISA貧乏の本質は、何に投資するかよりも、「生活に対して投資額が大きすぎる」という金額のバランスの問題だと私は考えています。
この違いを履き違えてしまう人の特徴としては、老後資金のように本来長期で準備する目的にもかかわらず、数か月や1年といった短期間で大きな利益を得ようとする点が挙げられます。
短期間で大きく増やす目標を置くほど、必要な利回りや許容すべきリスクが現実的でなくなりやすく、過度な集中投資やレバレッジ、根拠の乏しい高利回り商品の利用など、ギャンブル性の高い行動に傾きやすくなります。
また、値動きに一喜一憂して頻繁に売買してしまう人、損失が出るとそれを取り返そうとしてさらにリスクの高いものに手を出してしまう人も、投資とギャンブルを履き違えているサインです。損を取り返そうとしてさらに深みにはまってしまう構造は、ギャンブルでよく見られるパターンと共通しています。










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