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政府の「緊急要請」でデマ急増? 怪しい情報を見抜く4つのコツ【元刑事解説】

不安をあおる情報が拡散する背景と、デマや詐欺を見抜くポイントについて、元警視庁刑事が解説します。

防災庁が発足し、看板を掛ける高市早苗首相(左)と細野豪志防災相(中央)(11月2日、東京都千代田区、時事)
防災庁が発足し、看板を掛ける高市早苗首相(左)と細野豪志防災相(中央)(11月2日、東京都千代田区、時事)

 2026年11月2日、防災庁が発足しました。政府が国民に「1週間の備蓄」などを呼びかける緊急要請を発出したことを受け、SNSなどでは「何か重大なことが起こるのでは?」と不安や憶測が広がりました。とはいえ、政府の公式発表と、そこから生まれる憶測は別のものです。元警視庁刑事の視点から、不安をあおる情報が拡散する背景と、デマや詐欺を見抜くポイントを解説します。

なぜ人は「○月○日に何かが起こる」と信じてしまうのか

 11月2日、防災庁の発足に伴い、政府は「事前防災徹底のための緊急要請」を発出。水や食料を最低3日分、できれば1週間分備えるよう呼びかけました。

 この「緊急要請」という言葉に、「何か重大なことが起こるのでは?」と不安を抱いた方もいるでしょう。ただ、今回の要請は、差し迫った災害や有事を予告するものではありません。

 私が注目するのは、こうした社会不安が広がるときの人間心理です。人は不安を感じるほど、その原因や答えを強く求めます。特に、家族の命や財産に関わることなら、なおさらです。

 そこに「政府が隠している重大情報」「関係者だけが知る極秘情報」といった投稿が流れてくると、つい気になってしまいます。さらに、SNSで繰り返し目にしたり、知人から送られてきたりすると、信憑性があるように感じてしまうこともあります。

 しかし、情報の拡散数や発信者との親しさは、正しさの証明にはなりません。そして、こうした不安や思い込みにつけ込むのが犯罪者です。

 特殊詐欺では、警察官などを装い、「あなたの口座が犯罪に使われている」「今すぐ対応しないと逮捕される」などと恐怖心をあおり、冷静に判断する時間を与えず、金銭をだまし取る手口が使われています。社会不安が高まるとき、警戒すべきなのは災害や有事だけではありません。その不安を利用して、人を操ろうとする存在にも注意が必要なのです。

犯罪者は「不安」と「安心」をセットで利用する

 特に警戒してほしいのは、不安をあおった後に、何らかの行動を求めてくる情報です。特殊詐欺でも、犯罪者はまず相手を不安にさせます。例えば、警察官を名乗り、「あなたの口座が犯罪に使われている」と告げた後、「資産を守るためにお金を移してください」と指示する手口です。

 最初に恐怖を与え、次に解決策を示す。これは、犯罪者が相手を誘導する際に使う典型的な手口の一つです。社会不安が広がるときも、まったく同じ構造の詐欺が多発します。

 例えば、「政府の緊急要請を受け、防災用品を特別販売します」「大規模な通信障害に備え、こちらで本人確認をしてください」「金融システムが停止する恐れがあります。資産を安全な口座へ移してください」といった、不安につけ込んで金銭や個人情報を奪おうとする誘導には注意が必要です。特に、不安をあおられた直後に「送金」や「個人情報の入力」を求められたら、まずは詐欺を疑ってください。

「元警察官」「政府関係者」などの肩書だけで信用しない

 犯罪者は、警察官や官公庁の職員など、社会的に信用されやすい立場を平気で装います。SNSでも「元政府関係者が暴露」「専門家が緊急警告」といった投稿を見かけますが、肩書だけで情報を信用するのは危険です。

 私自身、元警視庁刑事として情報を発信していますが、重要なのは肩書よりも、その発言に確かな根拠があるかどうかです。発信者の実在性や専門性、公的資料などの裏付けを確認する必要があります。

 さらに近年は、生成AIによって実在する人物の顔や声をリアルに再現した偽動画も作られています。本人が話しているように見えても、本物とは限りません。映像も含め、情報の真偽を慎重に見極めることが大切です。

元刑事が教える「怪しい情報」を見抜く4つのポイント

 偽情報や詐欺の手口はますます巧妙化しています。見た目や肩書に惑わされず、次の4つのポイントを確認してください。

(1)公式発表の「原文」とSNSの投稿を比較する
偽情報は、すべてが作り話とは限りません。実際のニュースに、根拠のない推測を付け加えるケースもあります。例えば、政府が「1週間の備蓄」を要請したのは事実でも、「近いうちに有事が起こる」といったことまで発表されたわけではありません。

政府や自治体の公式サイトで一次情報(原文)を確認し、何が発表され、何が付け加えられた情報なのかを比較しましょう。

(2)画像や動画は「いつ、どこで撮影されたか」を調べる
過去の災害映像や海外の事件が、別の出来事として拡散されることがあります。 画像はGoogleレンズなどで類似画像を検索すると、過去の掲載記事や撮影場所が見つかる場合があります。動画も特徴的な場面を画像として検索することで、出どころを調べられます。
また、複数のアカウントが同じ情報を発信していても、元をたどれば一つの未確認情報ということもあります。拡散数より、独立した情報源による裏付けが重要です。

(3)「専門家の肩書」や「本人そっくりの動画」を信用しすぎない
警察官や政府関係者などを名乗る投稿でも、発信者が実在するとは限りません。実在する人物の名前や写真を無断使用した偽アカウントにも注意が必要です。 さらに生成AIを使えば、本人の顔や声を模倣した偽動画も作れます。

発信者の公式サイトや認証済みの公式アカウントなどを別経路で確認し、本人の発信かどうか、発言の根拠があるかを調べましょう。

(4)偽サイトは「見た目」ではなく、アクセス経路で見抜く
政府や金融機関を装った偽サイトは、ロゴやデザインまで本物そっくりに作られることがあります。URLに公的機関の名称が含まれていても、安全とは限りません。

また、鍵マークや「https」は通信が暗号化されていることを示すもので、サイトの運営者が本物である保証にはなりません。特に「緊急確認」「口座保護」などを理由に送られてきたリンクには注意が必要です。

メッセージ内のリンクからアクセスせず、公式アプリや保存済みのブックマークから確認する。これが偽サイトへの誘導を避ける有効な方法です。 万が一、IDやパスワードを入力してしまった場合は、正規のサイトから速やかに変更してください。金融情報を入力した場合は、金融機関にも連絡しましょう。

 政府の緊急要請は、私たちが日頃の備えを見直すきっかけになります。一方で、社会不安が高まるときには、根拠のない情報や、それにつけ込む詐欺にも注意が必要です。

 あなたが今、信じている情報は、確認された事実でしょうか。それとも、誰かの憶測でしょうか。情報があふれる時代だからこそ、一度立ち止まって確かめることが、自分と大切な人の安全を守ることにつながるのです。

(治安戦略アナリスト・危機管理スペシャリスト 小比類巻文隆)

【画像】「えっ…!?」 これが「犯罪者の思うつぼ」になる“NG行為”です

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小比類巻文隆(こひるいまき・ふみたか)

元警視庁警部補/治安戦略アナリスト・危機管理スペシャリスト

30年にわたって警察官として勤務し、危機管理の第一線を歩んできたスペシャリスト。1993年に警視庁へ入庁後、爆弾処理班を経て中国語通訳捜査官、さらに国際捜査官として、銃器・薬物犯罪を中心に情報収集や秘匿捜査、海外組織による密輸入事案の解明に従事。殺人・強盗・誘拐など重大事件の捜査本部にも多数参加。2023年に退官後は、警察での実践経験を社会に還元すべく、講演や執筆、メディア対応など幅広く活動中。現場のリアルを伝える、数少ない治安専門家のひとり。【公式サイト】https://kohiruimaki-fumitaka.info/contact

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