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「突然片目が見えなくなった」は“脳梗塞”のサイン!? 眼科医が「目の血管」をくまなく調べるワケ

血管の異常が目に現れることはあるのでしょうか。眼科医に聞きました。

「突然片目が見えなくなった」「激しい頭痛」など、小さなサインも見逃さないことが大切(画像はイメージ)
「突然片目が見えなくなった」「激しい頭痛」など、小さなサインも見逃さないことが大切(画像はイメージ)

 日常生活で油断できない病気の一つが脳梗塞や脳出血、くも膜下出血といった、いわゆる「脳卒中」です。2026年8月にはお笑いコンビ「サンドウィッチマン」の伊達みきおさんが、体調不良のため病院で検査を受けたところ、脳梗塞と診断されたことが所属事務所によって発表され、この病気の恐ろしさが注目されました。

 脳梗塞は突然起こるイメージがありますが、高血圧や糖尿病、脂質異常症などによって血管に負担がかかり続けることが発症リスクを高めるとされています。こうした血管の異常が「目」に現れることがあるのでしょうか。いわみ眼科(兵庫県芦屋市)理事長で眼科医の岩見久司さんに聞きました。

眼底には小さな動脈や静脈が走っている

Q.そもそも、脳梗塞と「目」には何か関係があるのでしょうか。

岩見さん「関係あります。実は、目の奥にある『眼底』には、細い動脈や静脈がたくさん走っています。眼底検査では、こうした血管を直接見ることができます。

例えば、高血圧が長く続くと、目の奥の血管が細くなったり、動脈と静脈が交差するところに変化が出たりすることがあり、小さな出血が見つかることもあるのです。まれですが、血管を詰まらせる『塞栓』と呼ばれる小さなかたまりが見つかる場合もあります。

ただし、眼底写真を見ただけで『将来的に脳梗塞になる』と予測できるわけではありません。眼底検査は、脳梗塞を診断するための検査ではありません。

一方で、目の血管に変化が見つかったことをきっかけに、医師が『全身の血管も一度調べた方がよいのではないか』と考えることはあります」

Q.では、全身の血管の状態を考えるきっかけとなる目の病気を教えてください。

岩見さん「代表的な病気の一つが、網膜静脈分枝閉塞症(BRVO)です。少し難しい名前ですが、簡単にいうと、目の奥にある静脈の流れが悪くなり、網膜に出血やむくみを起こす病気です。特に高血圧との関係がよく知られています。

さらに、BRVOなどの網膜静脈閉塞症になった人は、脳梗塞やくも膜下出血などの脳卒中の発症リスクにも注意が必要だという研究があります。2024年には、10の研究、合わせて約42万9000人のデータをまとめた報告が発表されました。その結果、網膜静脈閉塞症がある人の場合、ない人に比べ脳卒中を起こすリスクが約1.4倍高い傾向が確認されました。

ただし、これは『BRVOになると、それが原因で脳卒中になる』という意味ではありません。高血圧や動脈硬化、糖尿病など、目の血管にも脳の血管にも負担をかける共通の原因が隠れている可能性があります。

ですから、BRVOを見つけた場合には、目だけを治療して終わるのではなく、『血圧は大丈夫だろうか』『糖尿病などが隠れていないだろうか』と全身について考えることも大切です」

片目が急に見えなくなったら危険?

Q.「目の血管が詰まる病気」は、すべて同じなのでしょうか。

岩見さん「いいえ、先ほどのBRVOは『静脈』の流れが悪くなる病気ですが、目には『動脈』が詰まる病気もあります。特に注意が必要なのが『網膜中心動脈閉塞症』という病気です。これは網膜に血液を送っている重要な動脈が突然詰まり、片方の目が急に見えなくなることがある恐ろしい病気です。これを単なる『目の病気』と考えてはいけません。

米国心臓協会(AHA)は、網膜中心動脈閉塞症を『急性虚血性脳卒中の一形態』と位置付けています。脳梗塞と同じように、血流が途絶えることで神経組織が障害される病気だからです。

そのため、突然片目が見えなくなった場合は、『しばらく様子を見よう』と考えず、急いで医療機関を受診する必要があります。場合によっては、目だけではなく、脳や首の血管、心臓などを調べることもあります。

同じ『目の血管が詰まった』という病気でも、動脈なのか静脈なのかによって、緊急性や全身を調べる必要性は変わってくるのです」

Q.毎年、健康診断を受けていれば、こうした目の血管の異常もチェックされるのでしょうか。

岩見さん「必ずしもそうではありません。健康診断で『視力検査』を受けている人は多いと思います。しかし、視力検査と眼底検査は全く違う検査です。

視力検査は『どのくらい見えているか』を調べます。一方、眼底検査では『目の奥にある網膜や血管がどうなっているか』を調べます。

一般的な会社の定期健康診断では視力検査は行われますが、眼底検査は全員に行われる検査ではありません。

また、40~74歳を対象とする『特定健康診査』、いわゆる特定健診にも眼底検査はありますが、こちらも全員が受けるわけではありません。

例えば、その年の健診で血圧が上140mmHg、または下90mmHg以上だったり、空腹時血糖が126mg/dL以上、HbA1c(ヘモグロビンエーワンシー)が6.5%以上だったりする場合などに、医師が必要と判断すれば眼底検査が追加されます。

つまり、『毎年健康診断を受けているから、目の血管も毎年調べてもらっている』とは限らないのです」

Q.では、脳梗塞が心配な人は眼底検査を受ければ安心なのでしょうか。

岩見さん「眼底検査を受ければ安心、ということではありません。脳梗塞を予防するためにまず大切なのは、高血圧、糖尿病、脂質異常症、心房細動、喫煙など、よく知られた危険因子をきちんと調べ、必要なら治療することです。眼底検査は、それに取って代わるものではありません。

ただ、眼底には実際の血管が見えています。そこで異常が見つかったことをきっかけに、『血圧をもう一度きちんと測ってみよう』『血糖値やコレステロールも調べてみよう』と全身を見直すことがあります。

必要であれば、眼科医が内科や循環器内科、脳神経の専門医につなぐこともあります。

眼科というと、『視力をチェックするところ』というイメージを持つ人が多いかもしれません。しかし、私たちは目の奥にある血管も見ています。眼底検査には『目に現れた小さな変化から、全身の健康について考える』という役割もあるのです」

(オトナンサー編集部)

【画像】「えっ…!?」 これが「脳卒中」を予防する食べ物です!

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岩見久司(いわみ・ひさし)

医師(眼科専門医、レーザー専門医、医療法人社団久視会 いわみ眼科理事長、兵庫医科大学非常勤講師)

大阪市立大学医学部卒。医学博士。1日100人を超す外来診療をこなしながら、若手医師の教育や医師・医療関係者向けの講演も頻繁に行っている。加齢黄斑変性や糖尿病網膜症などを得意とする網膜内科医。近年、網膜の病気につながる可能性のある子どもの近視が急増しており、近視治療にも積極的に取り組んでいる。多くの人が「100歳まで見える目」を維持できるよう、2023年度から啓発活動を展開している。いわみ眼科ホームページ(https://iwami-eyeclinic.com)。ドクターズ・ファイル(https://doctorsfile.jp/h/189711/df/1/)。いわみ眼科チャンネル(youtube)(https://www.youtube.com/@dr.iwami911eye)。

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