タイムズカーで「免許画像」146万件流出…「至急、本人確認を」と連絡あったら? 元刑事が説く“犯罪から身を守る方法”
企業に対する不正アクセスによって、個人情報が流出するケースが相次いでいます。情報流出後に取るべき対策について、元警視庁刑事が解説します。

カーシェアリングサービス「タイムズカー」のシステムが9月下旬に不正アクセスを受けました。
同サービスを運営するタイムズモビリティの親会社である「パーク24」(東京都品川区)が10月23日までに発表した情報によると、不正アクセスの影響で退会者を含む約662万件の個人情報が流出し、運転免許証や学生証、住民票といった本人確認書類の画像約146万件について、外部に送信された痕跡が確認されたということです。このほか、中国語の闇サイトでは、日本の運転免許証画像が1枚約20円で出品されていたとの報道もあります。
自分の顔写真や住所が、見知らぬ誰かの手に渡っているかもしれない――そう考えると、決して他人事ではありません。元警視庁刑事の経験から、個人情報悪用の危険性と、私たちが取るべき対策を解説します。
自分の免許証がたった20円の商品に…再発行すれば安心?
今回の事件で私が最も懸念しているのは、単なる氏名や住所の流出ではありません。「本人であることを証明する情報」が、第三者に渡ってしまったことです。
運転免許証には、氏名や住所、生年月日、顔写真などが記載されています。報道によると、中国語の闇サイトで、日本の運転免許証画像1000枚が約2万円で出品されていたといいます。
1枚当たりわずか20円。出品画像の真偽や、タイムズカーとの関連は確認されていません。それでも、自分にとって大切な個人情報が、第三者には数十円の商品として扱われかねないという現実には、恐ろしさを感じます。
「勝手に借金をされたらどうしよう」「知らないうちに携帯電話を契約されるのでは?」と不安になるのは当然でしょう。ただし、免許証画像だけで簡単にあらゆる契約ができるわけではありません。金融機関などでは、顔画像との照合やICチップの読み取りといった本人確認も行われています。それでも、別の経路から入手した情報と組み合わせ、なりすましを試みられる可能性は否定できません。
では、免許証を再発行すれば安心なのでしょうか。残念ながら、再発行しても、すでに流出した画像が消えるわけではありません。氏名や生年月日なども、そのまま残ります。再交付を検討する場合は警察の運転免許窓口に相談できますが、それだけですべての悪用を防げるわけではありません。では、どう対応するのが良いのでしょうか。
犯罪者が狙うのはあなたの「不安」かもしれない
私が元刑事として特に警戒してほしいのは、情報流出後の二次被害です。例えば、次のような連絡があったらどうでしょうか。
「あなたの免許証情報が流出しています。被害を防ぐため、至急こちらで本人確認してください」
相手が自分の名前や住所、生年月日まで知っていたら、信じてしまうかもしれません。しかし、それこそが危険です。流出した情報を使って信用させ、偽サイトへ誘導し、パスワードや認証コードを奪うという詐欺が考えられます。犯罪者は、あなたの情報だけでなく、あなたの不安まで利用しようとするのです。
今回のタイムズカーの情報が、実際にこうした犯罪に悪用されたと確認されているわけではありませんが、警戒しておく必要があります。
集団訴訟で解決する? 企業もまた不正アクセスの被害者
今回の事件では、集団訴訟に向けた動きも出ています。パーク24が10月23日、本人確認書類の画像が流出した被害者に、お見舞いとして1人当たり3000円相当の現金または金券を渡すと発表しました。しかし、被害者側の弁護士が同日、「見舞金が低額」だとして、パーク24側に集団訴訟を起こす意向を明らかにしました。
もちろん、個人情報を預かる企業には、それを適切に管理する責任があります。一方で、忘れてはならないのは、タイムズカーもまた、第三者による不正アクセスの被害者だということです。
仮に損害賠償が認められても、実害が確認されていない場合、慰謝料は数千円程度にとどまる可能性が指摘されています。訴訟費用などを考慮すれば、手元に残る金額が限られる場合もあるでしょう。
ただし、訴訟には企業の管理責任を明らかにし、再発防止を促す意義もあります。私が強調したいのは、賠償金を受け取ったからといって、流出した個人情報が戻ってくるわけではないということです。責任の追及と、自分の身を守ること。この2つは分けて考えなければなりません。
自分を守るために今すぐできること
もし自分の情報が流出した可能性があるなら、まずは落ち着いて、次の対策を取ってください。
(1)公式サイトで流出対象か確認する
メールやSMSのリンクを安易に開かず、事業者の公式サイトから確認しましょう。
(2)身に覚えのない契約や請求を見逃さない
不審な通知が届いたら放置せず、契約先に直接確認してください。心配な場合は、信用情報機関に情報開示を請求する方法もあります。
(3)信用情報機関の「本人申告」制度を活用する
CIC(シー・アイ・シー)やJICC(日本信用情報機構)などの信用情報機関には、本人確認書類の情報流出について注意喚起を登録できる制度があります。不正契約を完全に防ぐものではありませんが、審査時の注意につながります。
(4)不審な連絡には即答しない
相手が自分の個人情報を知っていても、本物とは限りません。いったん電話を切り、公式窓口に確認しましょう。
(5)証拠を残し、必要なら警察へ相談する
不審なメールや請求書は保存しておきましょう。警察相談専用電話「#9110」も利用できます。
本当に怖いのは流出した「その後」
現在、多くの企業や自治体で、個人情報の大規模な流出が相次いでいます。私たちは便利なサービスを利用するたびに、自分の情報を預けています。けれども、一度流出した情報がどこへ渡り、どう使われるのかを、本人が把握することは困難です。
企業の責任を問うことや免許証を再発行することはできますが、流出の事実そのものをなかったことにはできません。
犯罪者にとって都合がいいのは、私たちが無関心でいること。そして、不安から判断を誤ることです。だからこそ、情報流出のニュースに接したとき、必要なのは恐怖に振り回されることではありません。
犯罪者は、あなたの油断を狙います。自分の身を守るための知識と行動こそが、これからの時代、最も重要な防犯対策になるのです。「慌てない。放置しない。必ず確認する」を徹底しましょう。
(治安戦略アナリスト・危機管理スペシャリスト 小比類巻文隆)









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