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自閉症の小6息子が「吐き戻し」繰り返し、母ノイローゼ気味に…絶望のトンネルから抜け出せた“まさかの出来事”

知的障害の自閉症児を育てる女性ライターが、息子が吐き戻しを繰り返したエピソードについて、紹介します。

新しく飲み始めた薬がきっかけで、吐き戻しが癖になってしまった息子(べっこうあめアマミさん作)
新しく飲み始めた薬がきっかけで、吐き戻しが癖になってしまった息子(べっこうあめアマミさん作)

 ライターとして活動するべっこうあめアマミさんは、重度知的障害を伴う自閉症がある11歳の息子と、きょうだい児の娘を育てながら、障害児育児に関する記事を執筆しています。

 今回は、突如として始まった特別支援学校6年生の息子さんの「吐き戻し」に悩まされ、ノイローゼ気味になった日々と、ある出来事を境に症状が落ち着いていったエピソードを紹介します。

幼少期からあった「つば吐き」が「吐き戻し」に

「この落ち着かない日々は、いったいいつまで続くのだろう…」

 今年の春ごろ、家の中という最も落ち着くはずの場所にいても、私は息子から目を離すことができませんでした。なぜなら、少しでも目を離すと、息子がどこかで吐き戻しているかもしれなかったからです。

 重度知的障害を伴う自閉症がある息子には、幼少期からつばを吐く癖がありました。ただ、その癖も最近ではあまり見られなくなり、私は「落ち着いてきたな」と感じていたのです。

 しかし去年の年末頃、息子に咳払いの癖が出てきました。最初は風邪気味なのかなと思っていましたが、あまりに長引く上に、あまりにわざとらしかったため、「これは単なる体調不良ではないのでは?」と思い始めました。

 そこでかかりつけの児童精神科に相談し、漢方を処方してもらうことになりました。すると、その漢方がとてもよく効き、せき払いの癖はきれいになくなったのです。

「漢方がこんなに効くなんて思わなかった、息子に合う薬があってよかったな」

 そう思って、私はほっとしました。しかし、困ったことに、今度は漢方を飲み始めたことをきっかけに、今年の初めくらいからどろどろとした茶色っぽいつばを出すようになったのです。

 息子は口に入れたものをそのまま飲み込まず、かみ砕いて食べるので、漢方も同じようにかみ砕いて飲みます。そのため、どうしても口の中に漢方の苦々しさが残ってしまったのでしょう。

 息子は苦さや辛さなどの強い刺激にも鈍感である「感覚鈍麻」があるのですが、さすがに漢方の錠剤を何粒もかみ砕いていたら、歯の隙間に残った漢方がずっと口の中で違和感を残していたのだと思います。

 漢方を飲んでしばらくすると、息子はトイレに行き、漢方まじりと思われる茶色くてどろどろとしたつばを便器に吐いていました。最初は、量もそこまで多くなく、トイレで吐くのでそんなに困りませんでしたが、それが徐々にエスカレートしていったのです。漢方を飲んだ直後でなくても、食べたものを胃から出すようになってしまいました。

 私はこれはまずいと思い、漢方の服用をやめさせました。しかし、すでに息子の中では「一度胃に入れたものをもう一度出す」行為そのものが楽しくなってしまったようです。漢方をやめても吐き戻しは止まりませんでした。それどころか、日に日に頻度も量も増えていったのです。

学校でも家でも吐き続ける息子に、ノイローゼ気味に

家の中でも息子が吐いていないか気になって落ち着かない母(べっこうあめアマミさん作)
家の中でも息子が吐いていないか気になって落ち着かない母(べっこうあめアマミさん作)

 ひどい時期には、学校にいる間に7回も吐き、放課後等デイサービスでも吐き、帰宅してから家でも3、4回吐くという日々が続きました。もはや漢方は飲んでいないので、出てくるものは完全に嘔吐(おうと)物でした。

 ただ、息子の吐き戻しには、私がこれまでイメージしていた「吐く」行為とは少し違うところがあったのです。息子は苦しんで吐くわけではなく、手を突っ込むわけでもなく、つばやたんを出すかのように無音でそっと「胃の中のものを外に出す」のです。

「人間ってそんなに自分の意思で胃からものを出せるの?」と、私は何度も不思議に思いました。摂食障害のように苦しそうに吐くわけでもなく、吐いたあとにケラケラと笑っていることもありました。まるで感覚遊びの一環になってしまったかのようです。

 困ったのは、息子が吐いても、私はどこに吐いたのか分からなかったことです。時間がたってから、床やおもちゃ箱の中からカピカピになった嘔吐物を見つけることもありました。

 また、わざわざソファのくぼみや隙間などの掃除しづらいところにも大量に吐きます。

 家の中のそこらじゅうに嘔吐物がある可能性があり、私はだんだん疑心暗鬼になっていきました。まるで家の中のどこかに地雷が埋まっているかのような感覚です。

 学校や放課後等デイサービスでも吐いてしまうので、息子は嘔吐物だらけになった服を大量に持ち帰りました。汚れた服を洗い、床を掃除し、ソファの隙間を確認して、おもちゃ箱の中まで調べる――そんな毎日に追われ、私は次第にノイローゼ気味になっていったのです。

 特につらかったのは、家の中でも息子から常に目を離せなくなったことです。ほんの少し別のことをしている間にも、「今吐いていないだろうか」と気になってしまいます。家事をしていても、息子の動きが気になって仕方がありません。息子がいると、家の中がまったく落ち着かないのです。

 あまりにも壮絶な吐き戻しに、私は終わりの見えないトンネルの中にいるような絶望を感じていました。

「この先もずっとこんな生活が続くのだろうか」

 そんな不安が頭から離れませんでした。

ペットシーツで対策しつつも「宿泊訓練」が思いがけない転機に

 このままではいけないと思い、私も息子の吐き戻しに対処するためにいろいろな工夫をしました。息子はお気に入りの服だと、なぜかあまり汚さないようだったので、息子が好きな色の服を買いそろえるようにしました。

 また、息子が吐いても処理が楽になるように、よく吐く場所にはペットシーツを敷きました。ソファの隙間に詰めたり、トイレの床に敷いたりして、できるだけ掃除しやすいようにしたのです。

 すると、不思議なのですが、息子はペットシーツがあると吐く気が失せるようで、あまり吐かなくなっていきました。もちろん、それですべてが解決したわけではありませんが、できることを一つずつ試しながら、何とか毎日を乗り切っていました。

 そんな中、息子の学校の宿泊訓練が6月に行われました。一泊二日の、息子にとっては普段とはまったく違う非日常のイベントです。そのときの私は、息子が宿泊訓練に行くことで、一晩はようやく安らかに過ごせるとホッとすると同時に、宿泊先で多大な迷惑をかけてくるのではないかと不安も大きかったです。

 ところが、宿泊訓練は大きなトラブルもなく、無難に終わりました。そして、息子が宿泊訓練から帰ってきてから、私はある変化に気付きました。

「あれ? 最近、吐いてない?」

 あれほど頻繁だった吐き戻しが、明らかに減っていたのです。学校の先生にも聞いてみました。

「宿泊訓練で、何か特別なことをしたんでしょうか?」

 しかし、宿泊訓練で何か特別なことをしたわけではないとのことでした。先生自身も私と同様に、「なぜかは分からないけど急に吐き戻しが減った」と感じていたようです。

 ただ、息子にとっては宿泊訓練という非日常のイベントが、何かの区切りをつけるきっかけになったのかもしれません。

 その後、放課後等デイサービスでも同様に吐き戻しが激減していると分かり、「なぜかは分からないけど宿泊訓練を境に吐き戻しが激減した」というのが私たちの共通認識となりました。

 完全にゼロになったわけではありません。それでも、ほぼゼロに近いくらいまで減ったのです。

 あれほど毎日のように吐いていた息子が、まるで何かのスイッチが切れたかのように吐かなくなったことに、私は本当に驚きました。

大変な日々にも終わりは来る

 今振り返ると、息子の吐き戻しのきっかけになった漢方にも、何か「区切り」の意味があったのかもしれません。

 そもそも漢方を飲み始めたのは、去年の年末ごろから出てきた息子のせき払いの癖を改善するためでした。

 漢方が効いてせき払いがなくなったことはもちろん大きいと思います。しかし、「年明け」という時期的な切り替わりや、「新しい薬を飲む」という行為そのものが、息子にとって行動を変える何かのきっかけになった可能性もあるのではないかと思うのです。

 もちろん、これは私の推測に過ぎません。重度知的障害を伴う自閉症の息子が何を考えているのかは、正直なところ親である私にもよく分かりません。自閉症のこだわりの世界は個人差も大きく、問題行動が起きたときに「これをすれば必ず改善する」という明確な方法がないことも多いです。

 そんな「解決策がない」世界だからこそ、今回の出来事はとても印象に残りました。

 あれほど壮絶だった吐き戻しが、明確な理由も分からないまま、宿泊訓練を境に落ち着いていくなんて、にわかには信じられないことでした。もちろん、私がした工夫がまったく関係なかったとは思いません。

 好きな色の服を用意したことや、ペットシーツを敷いたことなど、小さな対策の積み重ねもあったのでしょう。それでも何より大きかったのは、やはり宿泊訓練という「切り替えイベント」だったように感じています。

 今思えば、息子のこれまでのこだわりや問題行動にも、同じように波がありました。ひどく出る時期があれば、いつの間にかなくなっている時期もあります。一つのこだわりが解消したと思ったら、それと引き換えに、また新しいこだわりが出てくることもありました。

 それでも、今困っている行動が、この先もずっと同じように続くとは限らないのだと思います。

 息子の壮絶な吐き戻しも、あのときは本気でどうしようかと悩みました。家の中のどこで吐いているか分からず、汚れた服を毎日のように持ち帰り、息子から目を離すことさえできない地獄の日々。

 しかし、終わってみれば、宿泊訓練という一つのイベントが境目になり、嘘のように落ち着いていったのです。なぜ宿泊訓練だったのかはよく分かりませんが、きっと息子本人にとって、何か特別な意味があったのでしょう。

 あるいは、たまたま別の要因が重なっただけなのかもしれませんが、解決してしまえば、もはや理由は二の次でいいのだと感じます。親には分からないところで、子どもの中で何かが変わっていることがあるのだろうと思います。

 今まさに、わが子の激しいこだわりや問題行動に悩み、「ノイローゼになりそう」と感じている親御さんもいるかもしれません。

 私も、息子の吐き戻しが激しかった頃は本当にそんな気持ちでした。しかし、今は終わりが見えなくても、いつかふっと落ち着く日が来ると思います。あれほど長く感じた息子の吐き戻しの日々にも、ちゃんと終わりが来たのですから。

 そのきっかけがいつ訪れるかは分かりませんが、今悩んでいる親御さんたちには、この経験が「今の苦しみは永遠に続くわけではない」という少しの励みになればうれしいです。

(ライター、イラストレーター べっこうあめアマミ)

【画像】自閉症の息子の“吐き戻し”に苦闘する母

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べっこうあめアマミ(べっこうあめあまみ)

ライター、イラストレーター

知的障害を伴う自閉症の息子と「きょうだい児」の娘を育てながら、ライター、電子書籍作家として活動。「ママがしんどくて無理をして、子どもが幸せになれるわけがない」という信念のもと、「障害のある子ども」ではなく「障害児のママ」に軸足をおいた発信をツイッター(https://twitter.com/ariorihaberi_im)などの各種SNSで続けている。障害児育児をテーマにした複数の電子書籍を出版し、Amazonランキング1位を獲得するなど多くの障害児家族に読まれている(https://www.amazon.co.jp/dp/B09BRGSY7M/)。「べっこうあめアマミ」というペンネームは、障害という重くなりがちなテーマについて、多くの人に気軽に触れてもらいたいと願い、夫と相談して、あえて軽めの言葉を選んで付けた。

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