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「友達と同じ小学校へ」 子どもの願いにどう向き合う? 自閉症の息子を育てた母の視点

自閉症児を育ててきた筆者が、子どもの就学先を決める上でのポイントを解説します。

何らかの障害を抱える子どもが「友達と同じ小学校に行きたい」と主張したとき、どう向き合う?(画像はイメージ)
何らかの障害を抱える子どもが「友達と同じ小学校に行きたい」と主張したとき、どう向き合う?(画像はイメージ)

 私には知的障害がある26歳の自閉症の息子がいます。障害があるお子さんの保護者から相談を受けることも多いです。

「幼稚園や保育園で一緒に過ごした友達と同じ学校に行きたい」

 子どもがそう言うから、できることなら同じ学校に行かせてあげたい。親として、その気持ちはよく分かります。慣れ親しんだ友達と一緒に小学校生活をスタートできたら、子どもも安心するでしょう。

 ただ、就学先を考えるときには、少し先のことにも目を向けてみてほしいと思います。

「友達と同じ学校」と「その子に合った教育環境」は別

 友達と同じ学校に行けることと、その子に合った教育環境を選ぶことは、必ずしも同じではありません。幼稚園や保育園と小学校では、子どもを取り巻く環境が大きく変わります。

 幼児期は、先生の手厚い見守りのなかで、比較的少人数の友達と過ごすことが多いでしょう。しかし、小学校に入ると、友達関係がより複雑になっていきます。

 自分の気持ちをうまく伝えられなかったり、相手の気持ちを読み取ることが難しかったりすると、友達との間でトラブルが起きることもあります。仲間外れやいじめといった問題に直面する可能性もあります。

 また、小学校は友達と楽しく過ごすだけの場所ではありません。国語や算数などの教科学習を通して、学力を身に付けていく場でもあります。

 授業の内容が理解できるか、集団での指示を聞いて行動できるか、分からないときに助けを求められるか。そうしたことも、学校生活を送る上で大切になってきます。

 だからこそ、今の子どもの希望を大切にしながら、将来、社会に出てからどのような生活を送れるようになってほしいのか。その視点も持っていただけたらと思います。

親自身の経験だけでは、わが子の将来は判断できない

 例えば、父親が自分の子ども時代を振り返り、「自分も勉強が苦手だったけれど、何とかやってこられた。だから、この子も大丈夫だろう」と考えることがあります。

 わが子の可能性を信じたい。必要以上に心配したくない。そんな親心があるのだと思います。

 しかし、親自身の子ども時代と、目の前にいる子どもの発達の状態が同じとは限りません。

 自分も似たようなところがあったという経験が、わが子の成長を考える上で参考になることはあるでしょう。ただ、子どもの発達の仕方や必要な支援は、一人一人異なります。

 また、親が自分の子ども時代を振り返るとき、当時の困りごとや周囲から受けていた支援を、すべて正確に覚えているとは限りません。

「自分もそうだったから大丈夫」と考えているうちに、今の子どもに必要な支援について考える機会が少なくなってしまうこともあります。

親が将来を見通せず、不安になるのは当たり前

 以前、知り合いから、こんな話を聞きました。

「子どもが幼児の頃は、どうしても期待ばかりしてしまう。自分が歩んできた道とは違うため、子どもの将来がまったく見えない。周りにも同じような子どもがいない。誰を参考にすればよいのか、誰に相談すればよいのかも分からず、不安になる」

 その人はこうも続けました。

「親としては、『これくらいできれば大丈夫』と考えてしまう。昔の同級生には、もっと勉強が苦手な子も通常学級にいたけれど、何とか生活している。だから、わが子も何とかなるのではないかと思ってしまう」

「学習面とあいさつさえできれば大丈夫だと考えたり、支援学級では十分に学習できないのではないかと不安になったりする。障害者雇用への不安もある。障害を受け入れられず、落胆する気持ちもある。祖父母からの圧力もある」

 親が子どもの将来を見通すのは、なかなか難しいものです。これまで自分が経験したことのない道を、わが子と一緒に歩もうとしているのですから。不安になったり、現実を受け止めるまでに時間がかかったりすることもあるでしょう。

 だからこそ、親を責めたいわけではありません。

 親自身が一人で悩み続けるのではなく、子どもの発達や教育、卒業後の生活について、具体的な情報を得られる機会があると心強いと思います。

 学校を卒業した後にも人生は続きます。どのような力を身に付けておくと、本人が生活しやすくなるのか。どのような支援があれば、本人の力を発揮しやすくなるのか。そうしたことを、少しずつ考えていけたらと思います。

今の希望を大切にしながら、その先の人生も見据える

「お友達と同じ学校に行きたい」という子どもの気持ちは、否定するものではありません。

 友達と離れたくない。慣れた環境で過ごしたい。その思いには、子どもなりの理由があるはずです。

 その気持ちを受け止めながら、子ども自身にはまだ判断が難しい部分について、親や周囲の大人が一緒に考えていけるとよいと思います。特別支援学級や特別支援学校でも新たな友達はできます。

 友達と同じ学校に行くことだけを目標にするのではなく、その子が安心して学び、自分の力を伸ばせる環境についても考えてみてほしいのです。

 そのためには、通常学級、特別支援学級、特別支援学校など、それぞれの教育環境で受けられる学びや支援について情報を集め、子どもの発達や現在の状況に合った選択肢を検討していくことが大切です。

 どの教育環境が合うかは、一人一人異なります。障害名や現在のできることだけで、一律に決められるものではありません。

 就学先を考えるときには、目の前の友達関係だけでなく、小学校での学びや人間関係、そして学校生活の先に続く人生にも目を向けてみてください。

(子育て本著者・講演家 立石美津子)

【画像】「えっ…?そうだったの……?」 これが「発達障害児」にみられることのある行動です(5つ)

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立石美津子(たていし・みつこ)

子育て本著者・講演家

20年間学習塾を経営。現在は著者・講演家として活動。自閉症スペクトラム支援士。著書は「1人でできる子が育つ『テキトー母さん』のすすめ」(日本実業出版社)、「はずれ先生にあたったとき読む本」(青春出版社)、「子どもも親も幸せになる 発達障害の子の育て方」(すばる舎)、「動画でおぼえちゃうドリル 笑えるひらがな」(小学館)など多数。日本医学ジャーナリスト協会賞(2019年度)で大賞を受賞したノンフィクション作品「発達障害に生まれて 自閉症児と母の17年」(中央公論新社、小児外科医・松永正訓著)のモデルにもなっている。オフィシャルブログ(http://www.tateishi-mitsuko.com/blog/)、Voicy(https://voicy.jp/channel/4272)。

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