オトナンサー|オトナの教養エンタメバラエティー

「オムツ取れない」だと支援級は難しい? 26歳自閉症の息子持つ母、特別支援学校への入学を勧める“現実的な理由”

小学校入学前の段階でオムツが取れていない場合、特別支援学校への進学を勧める理由について、知的障害がある自閉症の26歳の息子を持つ母が解説します。

支援級、特別支援学校を選ぶときの目安は?(画像はイメージ)
支援級、特別支援学校を選ぶときの目安は?(画像はイメージ)

 私には、知的障害がある自閉症の26歳の息子がいます。来年の春に小学校の入学を控えているお子さんの親御さんの中には、子どもの発育や障害の状態を考慮し、支援級に行くか、特別支援学校に行くか迷う人も珍しくありません。

 実際に、私は「オムツが取れていない場合は、支援級ではなく特別支援学校に行くべきなのでしょうか?」という質問を保護者の方々からいただくことがあります。基本的には「その方がよい」と考えています。

 ただし、これは「オムツが取れていないから支援級に行けない」という意味ではありません。実際には自治体や学校によって対応は異なりますし、支援級に在籍しているお子さんの中にはオムツを使用しているケースもあります。

 その上で、なぜ私が特別支援学校を勧めることが多いのか、その理由をお話しします。

支援級の環境はクラスによって大きく変わる

 まず知っておいていただきたいのは、支援級の環境は毎年同じではないということです。たまたま重度のお子さんが多い学年もあれば、比較的軽度のお子さんが多い学年もあります。

 また、児童数によってクラス編成も変わります。例えば、8人の児童に対して教員1人という体制だったものが、児童が9人になったことで2クラスに分かれ、4~5人に教員1人という体制になることもあります。

 もしクラスの子どもたち全員がオムツを使用しているような状況であれば、生活面の指導に重点を置くことも可能かもしれません。

 しかし現実には、支援級にはさまざまな子どもが在籍しています。知的障害が軽度のお子さんや、学習を中心に支援を受けているお子さんもいます。

 そのため、クラス全体としては学習活動も進めていかなければなりません。

知的障害のある子どもにとって大切なこと

 私は以前から、知的障害が明確にあるお子さんの場合、無理に通常級へ進むよりも支援級や特別支援学校を選んだ方が本人の負担が少ないと考えています。

 通常級の授業は、一般的な教科書の内容を理解できることを前提として進められます。そのため、授業内容が理解できない状態で何時間も座っていなければならないことは、子どもにとってかなり苦痛になり得ます。

 もちろん境界知能のお子さんなど、自治体の基準によっては支援級に入れず通常級を選択するケースもあります。進路は一律に決められるものではありません。

 ただ、今回のテーマである「オムツ」について考えるときには、学習面だけでなく生活面の支援がどの程度必要なのかを見ることが重要だと思います。

オムツ交換とトイレトレーニングは別のもの

 ここで誤解してほしくないのは、支援級でもオムツ交換はしてもらえるということです。子どもが排せつしたまま放置されることはありません。自治体によっては介助員や支援員が配置されており、必要に応じてオムツ交換を行ってくれます。

 しかし、オムツ交換をしてもらえることと、トイレトレーニングをしてもらえることは別問題です。私はこの違いがとても大きいと思っています。

特別支援学校ではトイレの自立を目標にできる

 一般的なトイレトレーニングは、膀胱にある程度おしっこをためられるようになった段階で始めます。例えば、2時間程度オムツがぬれない状態であれば、膀胱(ぼうこう)に尿をためる力が育っていることになります。

 そこで大人が定期的にトイレへ誘導し、便器に座って排尿する経験を積み重ねます。

 すると子どもは、「おしっこがたまったらトイレで出すものなんだ」ということを理解していきます。そうなると個別の支援計画の中に「オムツを外す」という目標が組み込まれます。

「入学後の1カ月でトイレの自立を目指す」という具体的な目標が設定されることもあります。

 教員が計画的にトイレへ誘導し、排せつのタイミングを観察しながら支援してくれるため、オムツ卒業に向けた取り組みを学校全体で進めやすい環境があります。

支援級では学習との両立が必要になる

 一方で支援級は、生活支援だけを行う場所ではありません。子どもたちは学習活動も行っています。そのため、トイレトレーニングを中心に一日のスケジュールを組むことは難しくなります。

 現実的には、「休み時間だからオムツを確認する」「体育の前だから交換しておく」といった対応になりやすいでしょう。

 もちろん安全面や衛生面を考えれば必要な対応です。しかし、子どもの膀胱の状態や排せつリズムに合わせてトイレへ誘導するわけではないため、トイレトレーニングとしては十分ではありません。結果として、オムツがなかなか外れないケースもあります。

 私はこの点が、特別支援学校と支援級の大きな違いだと感じています。

身辺自立が進んでいるかどうかが一つの目安

 私が進路を考える際に重視しているのは、「身辺自立」がどの程度できているかです。身辺自立とは、着替えや排せつ、食事などの日常生活の基本的な動作を指します。

例えば、次のような力が身に付いているのであれば、支援級という選択肢も十分考えられるでしょう。

・トイレが自立している
・着替えがある程度できる
・一人で食事ができる
・スプーンや箸を使って食べられる

 一方で、以下の状況であれば、生活面の支援が充実している特別支援学校の方が本人に合っている可能性があります。

・排せつが全面介助
・食事を食べさせてもらわないと食べない
・そしゃくが難しい
・日常生活の多くに常時介助が必要

大切なのは子どもに合った環境を選ぶこと

 進学先を考えるとき、保護者はどうしても「支援級か特別支援学校か」という二択で悩みます。

 しかし本当に大切なのは、どちらが上か下かではありません。その子にとって、学びやすく、安心して過ごせて、自立に向けた支援を受けられる環境はどこかという視点です。オムツが取れていないということは、まだ排せつ面で支援が必要な状態です。

 だからこそ私は、オムツが取れていないお子さんについては、まず特別支援学校を選択肢として検討してみる価値があると思っています。

 特に排せつの自立を目標にしたいのであれば、特別支援学校の方が専門的かつ継続的な支援を受けやすい場合が多いからです。

 最終的には自治体の制度や学校の体制、お子さんの発達状況によって判断は変わりますが、「身辺自立をどこまで支援してもらえるのか」という視点を持って見学や相談をしてみることをお勧めします。

(子育て本著者・講演家 立石美津子)

【画像】「えっ…?そうだったの……?」 これが「発達障害児」にみられることのある行動です(5つ)

画像ギャラリー

立石美津子(たていし・みつこ)

子育て本著者・講演家

20年間学習塾を経営。現在は著者・講演家として活動。自閉症スペクトラム支援士。著書は「1人でできる子が育つ『テキトー母さん』のすすめ」(日本実業出版社)、「はずれ先生にあたったとき読む本」(青春出版社)、「子どもも親も幸せになる 発達障害の子の育て方」(すばる舎)、「動画でおぼえちゃうドリル 笑えるひらがな」(小学館)など多数。日本医学ジャーナリスト協会賞(2019年度)で大賞を受賞したノンフィクション作品「発達障害に生まれて 自閉症児と母の17年」(中央公論新社、小児外科医・松永正訓著)のモデルにもなっている。オフィシャルブログ(http://www.tateishi-mitsuko.com/blog/)、Voicy(https://voicy.jp/channel/4272)。

立石美津子(たていし・みつこ) 関連記事

もっと見る

編集部おすすめ記事

暮らし・ライフ 最新記事

暮らしの記事もっと見る

ライフの記事もっと見る

コメント

CAPTCHA