公務員男性から性的被害を受けた29歳女性、泣き寝入りせず「慰謝料」を手にした行動力(上)
飲み屋で見知らぬ男に話しかけられ…
唯さんによると、事件は次のようにして起こりました。ある日、飲み屋のカウンター席に1人でいた唯さん。突然、見知らぬ男が話しかけてきました。
「今日はどちらから? 俺はさっきまで高校の友達と飲んでいたけど、飲み足りなくて」
唯さんが適当に相づちを打って受け流していると、男は自分の仕事の話をし始めました。肉体的にきつい仕事であること、規律が厳しく問題を起こすと辞めさせられてしまうこと、人間関係も厳しくストレスで熟眠できず、睡眠薬に頼っていること……。
そんなハードな仕事を必死に頑張っている自分は信用できる人物であると訴えたい様子だった、と唯さんは振り返ります。男に何の興味もなかった唯さんは終始そっけない態度でしたが、男は「一緒に歌いませんか?」とカラオケ店へ行くことを提案してきました。唯さんはその誘いを丁重に断り、そのまま退店したのですが、男も急いで会計を済ませると後を追いかけてきたのです。
うっとうしいな――。迷惑顔の唯さんでしたが「生まれ育った家が裕福ではないこと」「日々のストレスで不眠症に悩まされていること」など自分と共通点があり、話しながら帰路を共にしたのです。
「私、こっちなので」
途中の交差点で男とは反対の道を進んだ唯さん。おとなしく別れたかに見えた男でしたが密かに尾行し、自宅アパートの前で立ち止まった唯さんの至近距離までそろりそろりと近づくや、こう脅したのです。
「静かにしろ! 言う通りにしろ! 殺されたくなかったらな!」
恐怖のあまり凍りついた唯さんは男の命令に従わざるをえず、部屋の鍵を開けさせられたのです。「変なことしないでよ!」とにらみつけると、男は「何もしないよ」と言いました。しかし、それは真っ赤なウソ。土足で上がり込むなり、唯さんの腕をつかみ、上から覆いかぶさったのです。事を終えると男は黙って家を出ていきました。「地獄でした」。唯さんはポツリと私に言いました。
「『(男を)家に上げたら、そういうつもり(性交渉を受け入れる)だったはず』と思われているのではないでしょうか」
最初、唯さんはそんなふうに心配していたのですが、今回の場合、男が「殺すぞ!」と脅して唯さんの自宅の鍵を開けさせ、自宅へ無断で上がり込んだのであり、唯さんが男を招き入れたのではありません。
「『拒否しないから(肉体関係を)受け入れたと思っていた』という印象を与えていないでしょうか」
唯さんは、「誤解されるような態度を取ったあなたが悪い」と言われることも恐れていました。しかし、不法侵入者である男に脅されたのですから、拒否の意思を示すことができなくても無理はないでしょう。ましてや、その場でスマホで警察に通報したり、大声を上げて近所に助けを求めたりすることは不可能だったといいます。
「『(私が)抵抗しないから最後までやっても大丈夫だと思った』と言われたら、どうしたらいいのでしょうか」
唯さんは、なおも不安そうな表情で訴えかけますが、男は体が大きく、それを押しのけて逃げ出すのは難しかったといいます。良心の欠片もなかった男は、常に「途中で(暴力行為を)やめる」という選択肢があったにもかかわらず、そうはしなかった。途中で我に返って中断することなく、最終的に姦淫行為に及びました。自分の性欲を満たすためなら、非力な女性に乱暴することなど悪いことだと思わなかったのでしょう。もしかしたら、「酒に酔って、出会った女性と遊んだだけ」などと思っているのかもしれません。
コメント