中谷美紀「糖質制限を続けている」…「機能性低血糖症」ってどんな病気? 糖尿病専門医に聞いた
俳優の中谷美紀さんが診断されたという「機能性低血糖症」。どのような病気なのか、糖尿病専門医に聞きました。
9月2日、俳優の中谷美紀さんが、自身のインスタグラムで、体調管理に伴う日常生活上での工夫について投稿し、話題となりました。2022年の投稿で、「血糖調節異常」で医師の指導を受けていることを明かしていた中谷さんは、「糖尿病の方とは異なり、インシュリン(インスリン)が出過ぎてしまう」といい、「2010年に機能性低血糖症と診断されて以来、糖質制限を続けており、お砂糖を断つことはもちろん、食事もGI値の低い食品を選択」していること、「24時間血糖値を観察することのできるセンサー」を身に着けていることをつづっています。
中谷さんが診断されたという「機能性低血糖症」とは、どのような病気なのでしょうか。内科医・糖尿病専門医の市原由美江さんに聞きました。
糖尿病ではない人にも「反応性低血糖」は起こる
Q.「機能性低血糖症」とは何ですか。
市原さん「日本糖尿病学会のガイドラインによると、『機能性低血糖症』という病名はありません。私たち糖尿病専門医が診療で使うのは、『反応性低血糖』という“現象”を表す言葉です。以下、『反応性低血糖』を用います。
糖質を過剰に摂取した場合、食後の血糖値が上昇し、その数値が200ミリグラム/dl以上になると、倦怠(けんたい)感や眠気などの症状が出ることがあります。これを『食後高血糖』といいます。
この食後高血糖を改善しようとして、膵臓(すいぞう)からインスリンが過剰に分泌されるため、食後数時間が経過してから低血糖となることがあります。これが『反応性低血糖』と呼ばれるものです。食後しばらく経過した空腹時、夕方の時間帯での反応性低血糖が多く、震えや冷や汗、異様な空腹感、目まい、ふらつきといった低血糖症状が出ることがあります」
Q.反応性低血糖は、糖尿病ではない人にも起こるのですか。
市原さん「反応性低血糖は、『境界型糖尿病』または2型糖尿病の初期の可能性が高いです。しかし、境界型糖尿病の診断に至らないにもかかわらず、食後の高血糖を認める人も少なくありません。つまり、糖尿病でも境界型糖尿病でもない人にも、反応性低血糖は起こる可能性があります」
Q.反応性低血糖が起こりやすい人の特徴はありますか。
市原さん「食後高血糖を認める人に起こる可能性があるので、境界型糖尿病や2型糖尿病の初期段階の人はもちろん、男性は40代以降、女性は50代以降、過食や運動不足、肥満があり、2型糖尿病の家族歴のある人は要注意です」
Q.反応性低血糖がみられる場合、どのような食生活への切り替えが望ましいのでしょうか。
市原さん「過剰な糖質を摂取することで食後の高血糖を招き、それを抑制するために過剰なインスリンが分泌されて、のちのち低血糖を呈するのが反応性低血糖です。例えば、ラーメン+おにぎりといった炭水化物の重ね食べや、甘いお菓子の大量摂取は控えるべきです。なるべく糖質量を一定にする必要があります。
一方、反応性低血糖が怖くて糖質をほとんど取らない患者さんが多くいます。確かに、糖質を摂取しなければ高血糖にならず、反応性低血糖にもなりません。しかし、糖質制限することで死亡率が上昇することが明らかになっており、長期的な糖質制限は自己責任になってきます。
普通の量の糖質を取っても食後高血糖になってしまうこと自体が既に病気であり、膵臓がうまく機能していないということです。私は治療として、反応性低血糖を予防する薬をお勧めしています」
Q.反応性低血糖を放置するとどうなりますか。
市原さん「食後高血糖が起こっているため、動脈硬化を進展させます。それに伴い、脳梗塞や心筋梗塞といった命に関わる病気のリスクも上がります。低血糖を頻回に繰り返すことで認知機能を低下させたり、不整脈を誘発したりと他の病気のリスクを上げます。
糖尿病は膵臓の病気です。膵臓の機能が回復することは考えにくく、加齢とともに進行することがほとんどです」
Q.日常生活上で気付きやすい、反応性低血糖の疑いが考えられるサインとは。
市原さん「特に多いのが、夕方の異様な空腹感、動悸(どうき)、冷や汗などの低血糖症状です。昼間に多めの糖質を摂取した後に起こりやすいので、もし夕方に体調不良があれば昼の食事を振り返るとともに、不調が続くようであれば糖尿病専門医にご相談ください」
(オトナンサー編集部)
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