「嵐」ラストツアーの経済効果は1375億円 試算した専門家がひもとく“最強の動員力”
人気グループ「嵐」のラストツアーの経済波及効果について、専門家が解説します。

1999年11月に男性5人組グループとしてデビューし、国民的スターへと駆け上がった「嵐」。彼らのファイナルツアー「ARASHI LIVE TOUR 2026 ‘We are ARASHI’」が2026年5月31日、東京ドームで最終公演を迎え、26年半におよぶ活動を正式に終了しました。SNS上では「約27年お疲れ様でした!」「約27年数え切れないたくさんの思い出をありがとう」「この奇跡の景色を一生忘れません」など、活動終了を惜しむ声が多く上がっています。
このツアーが日本経済に与えた波及効果について、コンサートやスポーツなどがもたらす経済波及効果の研究を行う一般社団法人OASIS JAPAN代表で、東京都市大学非常勤講師の江頭満正さんが解説します。
嵐のキャリアを支えた動員力
5大ドーム・全15公演という規模で、札幌、東京、名古屋、福岡、大阪を巡った「ARASHI LIVE TOUR 2026 ‘We are ARASHI’」は、私たちの試算では約1375億円の経済効果をもたらしました。この数字は、単なる会場チケットの売り上げではなく、全国各地のファンが使った旅費や宿泊代、飲食代、グッズ購入代、そしてそれに付随するあらゆる経済活動の総額です。
嵐がこれまで積み重ねてきた実績を見れば、このツアーがなぜこれほどの経済効果を生み出したのか理解できます。2010年8月から2011年1月まで行われた「ARASHI 10-11 TOUR “Scene” ~君と僕の見ている風景~」は5大ドームなど16公演で計86万人を動員。続く2012年11月から2013年1月までの「ARASHI LIVE TOUR Popcorn」でも全16公演に及ぶ5大ドームツアーを大成功に収め、それぞれ圧倒的な動員力を証明しました。
そして2018年11月から2019年12月まで開催された「ARASHI Anniversary Tour 5×20」は全50公演で計237万5000人を動員しました。
こうした記録は、嵐というコンテンツがいかに安定した動員力を持つアーティストであったかを物語っています。
シングルCDの売り上げでも、「カイト」(2020年7月29日発売)が116万7000枚、「A・RA・SHI」(1999年11月3日発売)が97万3000枚、「Calling/Breathless」(2013年3月6日発売)が88万1000枚。シングル・アルバム合計で4344万4000枚という圧倒的な実績は、20年以上のキャリアの中で培われた、根強いファン層の存在を示唆しています。
開催地が経験した経済的インパクト
興味深いのは、開催地ごとに具体的な変化が報道されていることです。札幌では2026年3月のライブ期間中、ホテル料金が通常の約5倍に高騰したと報じられました。
福岡でも同年4月、嵐のラストライブとドリカムのコンサートが重なったことでホテル不足が深刻化し、インターネットカフェやカラオケ店の予約需要にまで波及。JR九州がライブの参加者向けに特急車両の滞在企画を立ち上げるほどでした。これらは経済波及効果の計算根拠になるデータであると同時に、ファンの来訪がいかに地域社会に影響を与えたかを示す証拠でもあります。
また、過去の事例で注目すべきなのは、名古屋市内のパティスリーで2018年に起きた現象です。嵐の楽屋に差し入れられたのがこの店のケーキだと特定された結果、店はファンの間で嵐ゆかりの「聖地」として認識され、ファンの来店が激増。社会現象となりました。これは地方の店が「エンターテインメント需要」によって全国区になるという、地域活性化の好事例です。
経済効果計算の精密性が示す信頼性
私は、フジロックやアラバキロックフェストなど、国内主要フェスに関する公式の経済波及効果の調査・研究に携わった実績があり、音楽イベントの詳細な数字を熟知しています。
こうした知見や実績をベースに、今回の「We are ARASHI」に関しても、手がかりとなるデータから公表されていない数値を論理的に概算する「フェルミ推定」を正確に実施。その結果、冒頭で挙げた1375億円という数字を導き出しました。
観客数は過去のツアー動員数から推定され、グッズ消費は平均購入費のデータで算出。旅費・交通費は開催地の観光統計と観光庁の「旅行・観光消費動向調査」を基準にし、スタッフの滞在経費まで含まれています。
特に注目すべきは、生配信チケットの試算方法です。ファンクラブ全員が、配信チケットを購入したと仮定。会員数は正確性を期すための計算をしています。ファンクラブ会員の通算会員番号は330万人を超えています。退会者数については、学術論文と他のアーティスト・ファンクラブの入退会データを基にフェルミ推定を重ねました。これは単なる推計ではなく、複数の検証プロセスを経た数値です。
エンターテインメントと地域経済の関係性
1375億円という数字の背景には、夜行バスで駆けつけたファン、地元のホテルに泊まって初めて経験した都市、思い出の品としてグッズを手にした人たち、その一人一人の選択があります。地域経済は、このような個々の消費行動の積み重ねで成り立つもの。
嵐のような人気アーティストのツアーは、単に音楽イベントではなく、地方経済を潤わせる重要な産業インフラになっているのです。ホテル業や飲食業、運輸業、小売業などの事業者が恩恵を受けました。
だからこそ「エンターテインメント×地域経済」という観点は、これからのイベント産業を考える上で、ますます重要になっていくでしょう。嵐のファイナルツアーの成功は、音楽の歴史的転換点であると同時に、地域活性化のモデルケースとして今後も語り継がれるでしょう。
(オトナンサー編集部)


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