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“カクカク”音、放置は危険! 「顎関節症」に気付く「2つのポイント」、歯科医師に聞く

口を開けづらくなる、食べ物がしっかりかめなくなるなど、日常生活に支障を来す「顎関節症」。発症に気付くためのポイントや、顎の“音”の種類について、歯科医師に聞きました。

顎を動かすと不穏な音が…「顎関節症」かも?
顎を動かすと不穏な音が…「顎関節症」かも?

「顎(あご)を動かすと“シャリシャリ”と音がする」「口の開け閉めをするたびに“カクカク”と鳴る」。こうした不穏な“音”が発症のサインとして知られる「顎(がく)関節症」。口を開けづらくなったり、食べ物がしっかりかめなくなったりするなど、日常生活に明らかな支障を及ぼすため、「食事の時間がつらくなった」「こめかみや首、肩も痛む」といった体験談も少なくありません。一方で、「誰でも発症する可能性があるの?」「もし“シャリシャリ”音が鳴るようになったらどうすれば…」など、症状に関する疑問や不安を持つ人もいます。

 顎関節症の症状や、音の種類による違い、前兆に気付くためのポイントについて、高谷秀雄歯科クリニック(宇都宮市)院長で歯科医師の高谷秀雄さんに聞きました。

「起床時に顎が疲れている」人は要注意

Q.「顎関節症」とはどんな病気ですか。

高谷さん「顎関節に生じる異常を総じて『顎関節症』と呼んでいます。さまざまな原因や症状がありますが、結果として顎の動きに支障が出ている状態を指すものです。基本的な症状は、『顎の動きに連動して音がする』『顎関節が痛い』『顎が動かしにくい』といった特徴があります。併発しやすい症状としては、頭痛▽肩こり▽めまい▽眼精疲労―など、主に頭頸部(目、耳より下から鎖骨より上まで)に影響が出てきます。

患者さんから聞き取れる異常をもとに、最終的には触診で確認します。歯全体が写る歯科エックス線写真を撮影すると顎関節まで写るので、顎関節に負荷がかかっている兆候があれば、顎関節症に悩んでいないか問診します。

ちなみに、医療や科学が進歩する中でも人工関節はとても困難な分野で、現在まで人工顎関節は実現していません。それだけ精密でありながら、人体の関節において最も稼働回数が多いといわれているのが顎関節です。そのため、何らかの外的要因によってすぐに異常を生じてしまいます」

Q.顎関節症の症状でよく指摘される「シャリシャリ」「ジャリジャリ」「カクカク」といった音は、なぜ鳴るのでしょうか。音の種類によって症状や進行具合に違いはあるのですか。

高谷さん「膝や股関節など、関節の異常は基本的に異音を生じますが、顎関節は耳までの距離が近いため、小さい音でも本人には聞こえやすくなります。『カクカク』や『パキン』と聞こえる音は『クリッキング音』といい、関節周辺の軟組織が消耗している状態が推察されます。悪化すると『ゴリゴリ』鳴るともいわれ、関節を包む組織である『関節包』に穴が開いている可能性も疑われます。なお、『シャリシャリ』『ジャリジャリ』するような音は、医学的に『クレピタス音』といい、関節の硬組織、つまり骨が変形している恐れがあります」

Q.顎関節症を発症しやすい人の特徴はありますか。

高谷さん「顎関節に負担をかけることは全て、顎関節症を誘発し得る要素となるので、原因となる疾患を持っている人が発症しやすいといえます。中でも、歯ぎしりや食いしばりは年齢・性別関係なく発症し、顎関節症につながりやすいものです。さらに、歯並びやかみ合わせがよくない『不正咬合(こうごう)』も、顎関節症の要因となることがあります。左右のどちらかに偏ったそしゃくをしていたり、口内環境が悪くなって虫歯ができ、急に普段と違うかみ方をしたりすることも負担になります。

50年単位で振り返ると、現代の日本人は顎が小さくなっているといわれています。顎周辺の筋肉や骨が小さくなることは顎関節症にもつながるので、老年層より若年層の方が罹患(りかん)率は高いでしょう。そして何よりも、心的要因ストレスを抱えている人の発症率が高くなっています。ストレスが歯ぎしり、食いしばりを誘発し、食事や睡眠の質に悪影響を及ぼすためです」

Q.日常生活上で、「もしかしたら顎関節症なのでは…」と気付くためのポイントはありますか。

高谷さん「初期症状の一つとして、『起床時に顎が疲れている』『片頭痛がする』ことが挙げられます。朝から会話や食事をしないと気付かないことも多いので、1人暮らしの人は少し注意が必要です。疲労感や頭痛は30分もすれば治まってしまうので、朝の身支度をする場所に付箋などを貼ったり、歯に関する小物を置いておいたりするなどして、意識を向けてみてはいかがでしょうか。

また、食事をしていないときは、上下の歯が接触していない状態が正常とされています。常時接触している状態は『THC(Tooth Contacting Habit:歯列接触癖)』と呼ばれ、顎関節に負担をかけていることが分かっているので、これを意識することが、手軽にできるセルフチェックの一つといえます。さまざまなチェック方法がありますが、シンプルなものとしてお勧めなのは、『深呼吸した直後に上下の歯が触れているか』を確認する方法です。THCは病気ではなく“癖”なので改善しやすく、仕事中のデスクやキッチン、運転席などに『THC』と書いたメモを貼っておくことで対策できます」

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高谷秀雄(たかたに・ひでお)

歯科医師(歯科口腔外科)

医療法人雄愛会高谷秀雄歯科クリニック院長・理事長。2008年、鶴見大学歯学部卒業。上尾中央総合病院、東芝林間病院歯科口腔(こうくう)外科にて2年間の研修医を経て、湘南東部総合病院歯科口腔外科にて常勤勤務。2014年、湘南美容外科・歯科クリニック分院長就任。2016年、宇都宮市で高谷秀雄歯科クリニックを開設。「断らない医療」をモットーに、患者さんとのコミュニケーションを大切にし、一人一人に合った歯科治療の提供を心掛ける病院を目指している。専門分野は親知らずの抜歯、口腔がんなど歯科口腔外科領域全般。審美歯科治療、インプラント治療も得意とする。高谷秀雄歯科クリニック(https://www.takatani-dental.jp)、公式YouTubeチャンネル(https://www.youtube.com/channel/UCkrV-TGxGgYXDN1atx7bhNA/featured)。

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