「ガム」食べ過ぎ、どんなリスク? 顎関節症&片頭痛も 「キシリトールは虫歯予防に効果的」の真偽、歯科医に聞く
「ガムをかむと顎を鍛えることができる」とよくいわれますが、食べ過ぎるとどのようなデメリットが生じるのでしょうか。歯科医師が解説します。

気分をリラックスさせるために、ガムをかむ人も多いと思います。「ガムで顎を鍛えられる」という話をよく聞きますが、食べ過ぎると体にどのような影響を与えるのでしょうか。甘味料の一種である「キシリトール」が含まれたガムは、虫歯予防に効果的といわれていますが、本当なのでしょうか。高谷秀雄歯科クリニック(宇都宮市)院長で歯科医師の高谷秀雄さんに聞きました。
顎関節症のリスクが上昇
Q.そもそもガムをかむと、どのような効果が期待できるのでしょうか。ガムをかむメリットについて教えてください。
高谷さん「ガムをかむメリットは、唾液の分泌を促進させ、虫歯や歯周病の予防とともに脳への血液の流れが上昇し、脳の発達、認知症の予防につながるといわれています。
歯の下には『歯根膜』というクッションのような器官があります。物をかんだときに歯根膜が0.03ミリほど沈み込むことで、歯根膜の下にある血管が圧縮され、ポンプのように血液を脳に送り込みます。それにより、脳は刺激を受けるので、かめばかむほど脳が活性化されます。また、唾液は消化を助け、胃腸の働きを活発にします。
このほか、かむことで、顔全体に分布している表情筋や顎が鍛えられるほか、しわやたるみ、ほうれい線の改善、歯並びをよくすることも期待できます」
Q.ガムで顎を鍛えることができるということですが、何分程度かみ続けるのが望ましいのでしょうか。
高谷さん「歯科医師によって意見が異なるので一概には言えませんが、ガムは10分程度かみ続けるのがお勧めです。先述のように、ガムをかむことで口の中や、口の周りの筋肉が刺激されるため、かむ際に機能する咬(こう)筋、側頭筋、外側翼突筋、内側翼突筋が主に鍛えられると考えます。これら4つの筋肉は、咀嚼(そしゃく)筋と呼ばれています」
Q.ガムをかむときの注意点について、教えてください。キシリトール入りのガムは虫歯予防に効果があるといわれていますが、本当なのでしょうか。
高谷さん「『ガムを長時間かむ』『ガムを多くかみ過ぎる』『ガムを強くかむ』といった場合、顎の筋肉が痛んだり、歯の表面がすり減ってかみ合わせが深くなったりするため、顎関節症のリスクが高くなるほか、下顎のえらが張る『咬筋肥大』になりやすくなります。また、側頭筋が過度に緊張することで片頭痛の症状が出ることもあります。
キシリトールが配合されていれば、どんなガムでも虫歯予防に効果があるわけではありません。甘味料にキシリトール以外の糖質が使用されているかどうかによって、効果は変わります。
歯科医院などの医療機関で取り扱うキシリトールガムは、基本的にキシリトール以外の甘味料が使われていないため、虫歯予防に効果があるといえます。一方、市販のキシリトールガムはキシリトール以外の糖質も含まれており、キシリトールの効果を十分に発揮することができません」
Q.ガムの1日の適切な摂取量について、教えてください。
高谷さん「虫歯予防のためには、1日5~10グラム、個数に換算すると4~8個を目安に摂取しましょう。これを一度に食べるのではなく、1日3~4回に分けて食べると効果的です。ただし、砂糖が含まれたガムの場合、かみ過ぎると虫歯になりやすいため注意が必要です」
気を紛らわせるために、ついガムを多くかんでしまいがちですが、健康のためにも、適量を守って長時間かまないように心掛けましょう。
(オトナンサー編集部)
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