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新型コロナ「ワクチン接種で副反応」報道 感染と副反応、どちらが怖い?

低リスクなのに、なぜ怖い?

 最後に、数字を見せられてもやはり、「ワクチンが怖い」と思ってしまう私たちの心のメカニズムについても紹介しておきましょう。

 ある心理実験によると、アフリカの貧困に関する「統計情報」を書いておいた募金箱よりも、飢餓に苦しむ1人の女の子の写真と共に名前を書いておいた募金箱の方が2倍も多く寄付金が集まりました。つまり、私たちは無機質な数字で示された統計情報よりも、顔や名前が見える「特定可能な犠牲者」の事例に心を強く動かされるのです。

 もし、日本でのワクチン接種開始後、「○○県の病院で副反応による死者が出ました」という「事例報道」があった場合、顔や名前は出なくても、そのニュースは「犠牲者個人」をイメージさせますし、仮に著名人の副反応の体験談が出れば、「特定可能な犠牲者効果」がさらに強く働きます。その上、この手の報道の多くでは「ワクチン接種数」などの「分母」が示されません。

 一方、比較対象となるはずの「ワクチン接種の恩恵を受け、新型コロナに感染せずに済んだ人」のことはわざわざ報道されないし、厚労省の発表などを調べてみても、私たちの心に響かない「統計情報」しかありません。従って、私たちは客観的な確率以上に「ワクチンが怖い」と思ってしまいがちです。情報を受け取る私たちも発信する人たちもこのような心のメカニズムを理解した上で、正しい判断をするため、意識的に統計情報を発信したり、利用したりする必要がありそうです。

 幸い、現代では、知りたい統計情報はインターネットを検索すれば、すぐ手に入ります。ネット上には怪しい情報もあふれていますが「発信元が信頼できるか」「出典が示されているか」などの視点を持ち、複数の情報源で裏を取れば、比較的正しい情報を入手できます。何かのリスクを計算したければ、「分子」と「分母」の2つの数字を、2つのリスクを比べたければ、「分子」と「分母」を2つずつ、4つの数字を探してくればよいのです。

 実際に計算してみると、悩んでいた2つのリスクは何百倍も違うことが多いので、多少のずれがあっても判断を間違えることはまれです。ぜひ、皆さんも、不安を感じているリスクについて、自分で数字を探して比べてみてください。

(名古屋大学未来社会創造機構特任准教授 島崎敢)

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島崎敢(しまざき・かん)

近畿大学生物理工学部准教授

1976年、東京都練馬区生まれ。静岡県立大学卒業後、大型トラックのドライバーなどで学費をため、早稲田大学大学院に進学し学位を取得。同大助手、助教、国立研究開発法人防災科学技術研究所特別研究員、名古屋大学未来社会創造機構特任准教授を経て、2022年4月から、近畿大学生物理工学部人間環境デザイン学科で准教授を務める。日本交通心理学会が認定する主幹総合交通心理士の他、全ての一種免許と大型二種免許、クレーンや重機など多くの資格を持つ。心理学による事故防止や災害リスク軽減を目指す研究者で、3人の娘の父親。趣味は料理と娘のヘアアレンジ。著書に「心配学〜本当の確率となぜずれる〜」(光文社)などがあり、「アベマプライム」「首都圏情報ネタドリ!」「TVタックル」などメディア出演も多数。博士(人間科学)。

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