【台風】接近「24時間前」までが勝負 自分に合った“備え”を すぐに役立つ情報収集&判断スキルとは?
個人の生活環境に合わせた、より実践的な台風への備え方について、リスク管理の専門家が解説します。

8月から10月にかけて、台風の接近、上陸が増えます。台風に備えて、防災用品を購入したり、最寄りの避難所の場所を確認したりしている人は多いと思います。
ただ、事故防止や災害リスク軽減に関する心理的研究を行う、近畿大学生物理工学部・准教授の島崎敢さんによると、人によって生活環境や置かれている状況などが異なるため、こうした一般的な備えだけでは、実際の災害時に役に立つとは限らないといいます。そこで、島崎さんが、個人に合った、より実践的な台風への備え方について、解説します。
最も重要なのは適切な情報収集
台風への備えで最も重要なのは、適切な情報収集です。しかし、単にテレビで台風進路予報を見るだけでは不十分です。複数の情報源を重ね合わせることで、より正確な状況判断が可能になります。
例えば、各鉄道路線や道路の運転見合わせ・通行止め基準となる降水量は、インターネットで調べることができます。この情報と気象庁が公表している積算雨量や予測雨量を組み合わせることで、自分の移動経路で交通機関が止まる可能性を予測できます。これにより、事前に代替ルートを考えたり、移動計画を変更したりする判断ができます。
XのようなSNS上で流れる情報の中には誤情報も含まれているため、裏取りが必要ですが、Xで流れる現地の情報と、公的機関が発表する公式情報を組み合わせることで、公式発表よりも早く現地の状況を知り、迅速な判断や行動につなげられる可能性もあります。
最近は常時、気象情報を発信しているYouTube Liveもあるので、これらも併せて活用すると良いでしょう。
このように情報を自分の行動計画と照らし合わせて総合的に組み合わせることで、より的確な判断が可能になります。
多くの人は台風の予報円や進路情報のみに注目しがちです。確かに、台風の中心付近では風が強くなりますが、雨は中心から離れた場所でも大量に降る可能性があります。
従って、「台風の中心から遠いから大丈夫だろう」という考えは危険です。日本地図全体を俯瞰(ふかん)的に見る習慣をつけ、風や雨、雲の流れを意識した情報収集を心掛けましょう。
また、その瞬間の雨量、将来の雨量だけでなく、これまでの積算雨量も重要です。これらの情報と地域の特性、例えば、崩れやすい場所や氾濫しやすい川の有無などを組み合わせることで、台風の影響をより正確に把握し、適切な対策を講じることができます。
このほか、気象庁が公開する「危険度を色分けした時系列」では、どの地域にどのような警報が何時ごろに発令されそうかという情報も確認できます。
「台風接近」の24時間前には行動を決めて
情報を収集したら、次は自分の行動計画を立てましょう。仕事や学校、出張など、あなたの予定に合わせたタイムラインを作成することをお勧めします。
例えば、台風接近の72時間前から情報収集を開始し、48時間前には勤務先や学校との連絡、予定変更の検討を行います。そして24時間前には、出勤するか、在宅勤務にするか、避難するかなどの最終的な行動判断を下すといった具合です。
また、「警報が出たらどうするか」「電車が止まったらどうするか」など、具体的な状況に対する行動も決めておきましょう。これらの判断基準を事前に決めておくことで、緊急時の混乱を軽減できます。
自宅の状況によって、取るべき対策は大きく変わります。立地(浸水想定区域か、土砂災害警戒区域か)、建物タイプ(一戸建てか、マンションか、何階か)、想定される浸水深、水が引くまでにかかる時間などを確認しておく必要があります。
例えば、マンションの高層階に住んでいる場合、避難所に行くよりも自宅で待機する方が安全かもしれません。一方、土砂災害警戒区域の一戸建てなら、早めの避難を検討する必要があるでしょう。
「うちは大丈夫だろう」という根拠のない自信や、「以前も大丈夫だったから」という過去の経験に基づく判断は非常に危険です。人間の寿命はたかだか100年程度。その短い経験が、地球の長い歴史の中で起こる自然災害に対して、何の保証にもならないことを理解しましょう。昨日まで安全だった場所が、今日、突然危険になることもあり得るのです。
「避難指示が出たら避難する」というのは、絶対にお勧めできません。避難指示は「これ以上そこにいたら、本当に大変なことになる」という最後の通告です。それを待っていては危険ですし、早めに避難すれば、安全かつ快適に避難できます。なるべく雨が降り始める前の明るい時間に避難しましょう。
「避難先は安全な場所を選ぶ」というのは言うまでもありませんが、安全が担保されるなら、次は快適性を考えてください。最初に検討すべきは、親戚や友人の家など、普段の生活環境に近い安全な場所への避難です。次に、職場などよく知っている場所も選択肢に入れましょう。余裕があれば、ホテルや旅館といった有料の宿泊施設も検討に値します。
公共の避難所は、最後の選択肢と考えるべきです。収容人数が限られていることが多く、体育館などの設備では快適さに欠け、感染症や災害関連死のリスクも高まります。
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