自分がミスしたのに帰る「マイホーム主義」、古い「仕事主義」は共存できる?
勤める会社に対する姿勢で、「仕事主義」か「マイホーム主義」かで両者が衝突することがあります。双方の考え方や主張を、エピソードを交えて紹介します。

勤める会社に対する日本人の姿勢が、大きく変わってきています。かつては仕事第一主義の人が多かったようですが、現代では「仕事が第一!」ではなく、仕事以外の時間(プライベート)や家庭を大切にする、あるいは優先する人が増えてきました。
一つの職場の中で、仕事第一主義の人とそうではない人とが一緒になることは、頻繁にあり得ます。お互いを尊重し合って共存できればベストですが、主義の根本を異にするので、両者が衝突しやすいのも事実です。双方の考え方や主張を、エピソードを交えながら紹介します。
ミスで他の社員が残業、本人は定時退社
Aさん(54歳、男性)は中小企業の社長を務めています。社員は6人と少ないのですが、年齢層は20代から50代までと幅広いです。そこへ、30代の男性社員Bさんが中途採用で入社したのですが、このBさんをAさんは扱いかねてしまうようになりました。Bさんは完全なマイホーム主義で、Aさんには、ややその度が過ぎるように感じられたのです。
Aさんが説明します。
「Bさんは毎日定時きっかりに退社して、家族が待つマイホームへと帰っていきます。勤務時間外の電話にも決して応答しません。Bさん以外の社員は、その日の仕事が中途半端だと率先して残業をしてくれる人たちだったので、私自身それに慣れるというか、甘えてしまっていた部分があり、仕事とプライベートを完全に分け、それを貫くBさんの姿勢に最初は戸惑いました。
何しろ、どんなに忙しい日でも、他の社員を尻目に荷物をまとめて帰っていくのです。その姿をハラハラして見ていました。『あれじゃあ、他の社員から不満が募るだろうな』と。折を見て、Bさんとそのことについて話し合わなければとも考えていました」
とはいえ、Bさんのやっていることは「定時に退社」という、極めて正当な行為であり、それをとがめることはやはり妙だとAさんも思い、悩んでいたそうです。
ある日、Bさんが自分の担当業務でミスをして、余分な仕事が発生してしまいました。他の社員も何人かBさんのカバーに回りましたが、時刻は定時近く。そこからミスをカバーし終えるとするなら、全員残業は確実でした。
しかし、定時を迎えると、Bさんは手伝ってくれている社員たちを置いて帰ってしまいました。退社していったBさんの迅速さに他の社員はあっけにとられ、少しの沈黙の後、ある社員が「そりゃないでしょう…」とつぶやきました。Aさんは、社員のBさんへの不満が本格化する前に何とかすべきだと判断し、翌日、出社してきたBさんといよいよ話し合いに挑みます。
「『手伝ってくれていた人に悪いんじゃないか』と言うと、『ミスをして仕事を増やしたのが僕なのは事実ですが、そこで発生した仕事を定時時間内にやる必要はないのでは? 残業せずに、残った業務は翌日以降に回すべきだと思います』とキッパリ。
正論なんですが、個人的に納得しかねるというか…そもそも、Bさんは勤務態度がそこまで真面目というわけではなく、仕事でもポカミスが多く、何というか、率直に言って、『権利の主張は一丁前』という印象があったのですね。
私たちや、私たちの少し上の世代は仕事第一主義が当たり前で、古い考え方を若い世代に押し付けてはいけないと思ってはいるのですが、Bさんの完全マイホーム主義は何とも…この日は『Bさんの主張はもっともだし、そのスタイルに異を唱えるつもりは社長としてもない。ただ、これだけ小さい会社で、よくも悪くも持ちつ持たれつだから、お互いを尊重していく姿勢を業務時間内にしっかり見せてほしい』と伝えました」(Aさん)
このAさんとBさんのケースには「仕事主義か、マイホーム主義か」のジェネレーションギャップによる葛藤がありますが、Bさんの日頃の勤務態度にもAさんの不信感があり、それが、Bさんの掲げる完全マイホーム主義にも向けられたと見ることもできます。
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