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自分がミスしたのに帰る「マイホーム主義」、古い「仕事主義」は共存できる?

「仕事」も「家庭」も “バランス派”の出現

 Cさん(35歳、男性)はマイホーム大好きな2児のパパですが、仕事との関わりについてはこのように話しました。

「うちは共働きで、家事育児を分担しています。家事もタスクとして見ると、結構やることがあって、家庭に仕事を持ち込んでしまうと家事の方が回らなくなってしまうので、仕事と家庭は極力分けるように努めています。とはいえ、仕事あっての家庭なので、仕事で手を抜いてはいけないとも思っています。どちらか片方を取れと言われたら家庭を選びますが、仕事は仕事で大切にしたいです。

個人的な予感みたいなものがありまして、どちらか一方をないがしろにしてしまったら、もう一方も大切にできないんじゃないかと。『家庭だけ大切であとはどうでもいい』ではなく、自分が関わることを一つ一つ大切にできれば、自然と家庭も大切にできるのかなと」

 Bさんと同じ“マイホーム主義”ではありますが、Cさんのアンテナは仕事にもしっかり向けられている印象です。

 Dさん(40歳、男性)は仕事第一で勤めてきましたが、子の親となってから徐々に意識が変わっていったそうです。

「子どもが生まれて、意識や時間をかなりそちらに割かなければならなくなり、最初は、思うように仕事に取り組めないことにフラストレーションを感じていました。

しかし、子どもをかわいく思う気持ちと、育てていく責任感を次第に大きく感じるようになっていきました。すると、子どもや家庭が“自分”の一部として意識されるようになりました。仕事と家庭は別の種類のものだと思うので『こっちが大切』とは言えませんが、『家庭も大切』は今なら確実に言えます。

うちの職場でも、仕事主義やマイホーム主義に極端にメーターを振っている人がわずかながらいますが、周りは私も含めて割と『仕事も家庭も大切』という人が多いので、仕事主義やマイホーム主義に極端にメーターを振っている人が衝突しそうになると、周りが仲裁に入ったり、いっそ彼らを蚊帳の外に出したりして、『仕事も家庭も大切』な人だけで案件を片付けて何とかやっています」(Dさん)

 CさんとDさんは仕事主義とマイホーム主義の両方を持ち合わせる、いわばハイブリッド型といったところでしょうか。Dさんの言葉を借りれば“バランス派”です。

 仕事主義一辺倒だったところにマイホーム主義も是とする価値観が入ってきて、現代日本は両者が混在する過渡期です。AさんとBさんのように対立するケースもありますが、両者を取り入れたハイブリッド型の登場や、両者がそれなりに安定して共存できているケースもあるようなので、過渡期としてはそれなりに進んでいると見ていいでしょう。

 異なった価値観を持つ人同士の呉越同舟は、お互いにとって不運以外の何ものでもありませんが、仕事主義とマイホーム主義の葛藤と共存をサンプルに見ると、両者がうまく折り合いをつけながらやっていくには「相手方の価値観をいったん認める」ことが肝要なのかなと感じさせられました。

(フリーライター 武藤弘樹)

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武藤弘樹(むとう・こうき)

フリーライター

早稲田大学第一文学部卒。広告代理店社員、トラック運転手、築地市場内の魚介類卸売店勤務などさまざまな職歴を重ね、現在はライターとミュージシャンとして活動。1児の父で、溺愛しすぎている飼い猫とは、ほぼ共依存の関係にあるが本来は犬派。趣味はゲームと人間観察。

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