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「生きていく自信がない」 19歳ひきこもり長女、発達障害で孤立…絶望の親子を救った社労士の“一手”

わが子の人生を振り返ることで本人への理解が深まった

 面談後、母親は奈緒美さんの幼少期から振り返りました。

 奈緒美さんは小さい頃から対人関係が苦手で、親戚などの顔見知りの人でも、急に近づいてきたり話しかけられたりすると体が固まってしまい、言葉が出てきませんでした。

 また、興味関心のない事柄は、まったく頭に入っていきませんでした。

 小学校に進学すると勉強に興味関心が持てず、とても苦労しました。特に国語と社会が苦手でした。国語では「漢字が覚えられない」「文章を読んでいても途中を読み飛ばしてしまう」「筆者の意図をくみ取ることができない」といった状態で、問題を解こうとしても正解することができませんでした。社会では、歴史の出来事、地名や特産品などが覚えられませんでした。

 また、体を動かすのも苦手で、体育では足が遅く、球技では「パスされたボールを受け取れない」「ボールを相手の取りやすいところに投げられない」といったことがありました。

 宿題や次の日の授業の準備は自分でこなせず、いつも母親から「何でこんな簡単なこともできないの。もっとしっかりしなさい」と叱られていました。

 会話のキャッチボールもうまくできず、小学校3年生の時にクラスの女子からいじめを受けるようになってしまいました。あまりのストレスから教室で嘔吐(おうと)してしまったこともあったそうです。

 そのようなことが積み重なり、母親は担任に相談。担任の勧めで児童精神科を受診することにしました。

 検査の結果、奈緒美さんは「自閉スペクトラム症」という診断を受けました。

 その後は月に1回、療育を受けることになりました。そこでは、トランポリンや台に登るなどの体を使う運動や、文字を書いたり塗り絵をしたりする手先の動きの練習をしていました。

 しかし、通院を続けていても奈緒美さんの状況は改善しなかったため、小学校を卒業すると同時に受診を中断してしまいました。

 中学校に進学した奈緒美さんは、その日の授業で必要なものが判断できず、全教科の教材を毎日学校に持っていったそうです。

 かばんにプリントもどんどん詰め込むため、すぐに中身がぐちゃぐちゃになってしまいます。そこで母親が時々かばんの整理をしていました。

 中学生になっても自分で授業の準備や整理整頓ができず、あまりの情けなさから、母親はつい奈緒美さんにきつく当たってしまうのでした。

 奈緒美さんは授業について行けず、中学校に嫌々通っていました。クラスメートからいじわるをされても拒否することもできませんでした。それらのストレスのせいか、よく腹痛を起こしていたそうです。

 そしてとうとう我慢も限界を迎え、体調を崩し14歳の時に不登校となってしまいました。

「私は何をしてもうまくいかない。怒られてばかりでもう嫌! 周りも意地悪な人ばかりで、生きていく自信がない」

 奈緒美さんは涙声で母親にそう言いました。あまりの剣幕に母親も言葉を失ってしまいました。

 奈緒美さんはその後、自室からほとんど出てこない生活を送るようになってしまいました。

 進学もできず、就労の見通しも立たなくなってしまった奈緒美さん。そこで母親は障害基礎年金の請求を考えるようになりました。

 母親は奈緒美さんを説得。奈緒美さんが19歳の時に精神科を受診させることにしました。

 現在は月に1回程度の受診。奈緒美さんはコミュニケーションに苦手意識があるため、受診には母親も同席。奈緒美さんの代わりに医師に事情を説明しています。

 以上が、母親がざっと振り返った内容になります。

 その後、奈緒美さんから同意が得られたので、私も協力して病歴・就労状況等申立書の下書きを完成させました。あとは20歳になって障害基礎年金の請求をする少し前に、20歳当時の状況をまとめるだけです。

 下書きが完成したあと、母親は私に言いました。

「今回、幼少期から振り返ることで『長女もずっと苦しんできた』ということが改めて分かりました。当時は長女に対して憤りを感じてしまい、つい厳しく接してしまいましたが、これからは長女のためにできることをしていこうと思います」

 今回の振り返りを通して、母親は奈緒美さんへの理解をより深めることができたようです。

 母親の言葉からは、奈緒美さんの支えになるといった覚悟がうかがえました。

(社会保険労務士・ファイナンシャルプランナー 浜田裕也)

【画像】要注意! これが、ひきこもりの人にやってはいけない“NG行為”です

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浜田裕也(はまだ・ゆうや)

社会保険労務士、ファイナンシャルプランナー

2011年7月に発行された内閣府ひきこもり支援者読本「第5章 親が高齢化、死亡した場合のための備え」を共同執筆。親族がひきこもり経験者であったことから、社会貢献の一環としてひきこもり支援にも携わるようになる。ひきこもりの子どもを持つ家族の相談には、ファイナンシャルプランナーとして生活設計を立てるだけでなく、社会保険労務士として、利用できる社会保障制度の検討もするなど、双方の視点からのアドバイスを常に心がけている。ひきこもりの子どもに限らず、障がいのある子ども、ニートやフリーターの子どもを持つ家庭の生活設計の相談を受ける「働けない子どものお金を考える会」メンバーでもある。

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