「鬼十則」は過労自殺の証拠たりうるのか 社訓の法的意味を考える
社訓を削除させる法的根拠はない
Q.仮に裁判などで社訓が問題視された場合、裁判所は当該企業に対し、削除など強制的な措置を取れるのでしょうか。
岩沙さん「鬼十則のような社訓は通常、会社が労働者に与える訓示的規定を定めるものにすぎず、労働者を法的に拘束するものではありません。裁判所は法律上の判断をする組織であり、訓示的規定にとどまる鬼十則について削除を強制することはできません」
Q.社訓が労働基準法に抵触するようなケースにおいてもですか。
岩沙さん「社訓が労働契約の内容となっている場合に、労働時間などの労働条件に関して労働基準法に違反する部分があれば、その部分について規定は無効と判断され(労働基準法13条)、犯罪行為をそそのかすなど公序良俗に反する規定があれば、その規定は無効とされます(民法90条)。ただし、これらの場合でも裁判所は、社訓を強制的に削除させることはできません。それを可能にする法的根拠がないからです」
判断難しければ専門家へ
Q.社訓などで精神的に苦しんでいる人に、弁護士のお立場・ご経験からアドバイスを頂けますか。
岩沙さん「労働者は基本的に、社訓に従う義務はありません。仮に就業規則などによって社訓に従わなければならない場合や、社訓に基づく具体的な業務命令があった場合でも、その社訓や業務命令が違法または不合理な内容と思われる場合には、それに従わないことも考えられます。たとえば『命がけで仕事をしろ』という内容の社訓があったとしても、当然、死を覚悟してまで働く義務はありません。ただ実際には、社訓や業務命令が違法、または不合理かどうかの判断は難しいため、専門家への相談を考えるべきでしょう」
(オトナンサー編集部)

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