子どもの頃、鉛筆が刺さってできた黒い傷痕…今からでもきれいに治せる?
子どもの頃に鉛筆が刺さった傷痕は、適切に治療すればきれいに治るそうです。けがをした後の処置と合わせて紹介します。

子どもの頃、鉛筆が顔や手に刺さってしまい、その傷が痕として残っている人がいます。ネット上でも、傷痕を撮影して投稿した画像が数多く見られますが、今からでもきれいに治したいと思っている人も少なくないはず。傷痕を、治療できれいに治すことはできるのでしょうか。形成外科医の高田女里さんに聞きました。
レーザーなどで治療可能、保険も適用
Q.鉛筆が刺さった後、時間がたっても黒く残っている傷痕は何なのでしょうか。
高田さん「『外傷性刺青(いれずみ)』の一つです。外傷性刺青とは、けがや事故の際に土砂やアスファルトなどが皮膚に埋まり、そのまま治った結果、入れ墨のように残ってしまった傷痕のことです。場所は、顔や手のひらがほとんどを占めると言われています。鉛筆が刺さった後、黒く残ってしまった傷痕は、鉛筆の芯(黒鉛)が皮膚に刺さった痕です」
Q.なぜ、鉛筆で刺した傷は、ほくろに似た傷痕として残りやすいのですか。
高田さん「鉛筆の芯が皮膚に刺さり、芯の一部が折れたり削れたりして皮膚や皮膚の下に残ったまま治ってしまった場合、ほくろに似た黒い傷痕として残ります」
Q.現在、自覚症状がなくても、そのままにしておくと今後、何らかの症状が出ますか。
高田さん「現時点で自覚症状がなければ、傷痕を放置することにより今後、何らかの症状が出てくるとは考えにくいです。ただし、鉛筆の芯が刺さった後、数日間、傷がジュクジュクしていたり、色素が残った傷痕を無理やり爪で引っかいてしまったりすると、細菌に感染する恐れがあります」
Q.鉛筆が刺さった傷痕はきれいに消えますか。
高田さん「傷痕はほとんどの場合、きれいに消えます。治療法は、レーザーによるものが最も一般的です。鉛筆が刺さった傷痕は多くの場合、青みがかった黒色のことが多いですが、その色に反応するレーザーを使用すれば、多くの場合、3回前後の治療で終了します。なお、健康保険診療が可能です」
Q.深い傷痕の場合、どのように治すのですか。
高田さん「皮膚のやや深いところに鉛筆の芯が刺さってしまい、芯が取れないまま治ってしまった傷痕の場合、レーザーではなく注射で局所麻酔をかけ、メスを使用して皮膚ごと傷痕を切除するという方法が取られることもあります」
Q.もし、鉛筆が刺さってしまったら、傷痕を残さないために何をすればよいのでしょうか。
高田さん「鉛筆が刺さってしまったら、すぐにしっかりと水道水で洗浄し、色素を取り除くことが重要です。しっかりと色素が取り除けていれば、皮膚に色みが残る可能性は低くなります。洗う際、『どうしても痛くて洗えない』場合には、局所麻酔をかけてから十分に洗浄を行いますので、病院を受診しましょう」
Q.鉛筆以外にも刺し傷が痕として残るものには、どのようなものがありますか。
高田さん「とがっていて色素がついているものであれば、鉛筆以外でも刺し傷が痕として残る可能性は高いです。例えば、乾燥して硬くなった墨付きの毛筆が皮膚に刺さり、そのまま治ってしまった場合、皮膚に色素が残ってしまう可能性があります」
Q.最近は、鉛筆を使う機会が減っています。今後、子どもが大人になっても傷痕が残りそうな刺し傷を作るとすると、どのようなものが原因でつくことが多くなりますか。
高田さん「鉛筆に代わって、シャープペンシルを使用する機会が増えていることから、シャープペンシルの芯による刺し傷の傷痕は今後、多くなるのではないかと思います。他にも、ボールペンで刺した傷痕もけがの後に適切な処置をしないと、大人になってからも傷跡が残る可能性は高いと考えられます。
例えば、電車の中で、学生が宿題をするためにシャープペンシルなどを使用している光景を見かけますが、電車の揺れによって皮膚を刺してしまうことがあるため、大変危険です」
※参考サイト
・日本創傷外科学会HP
※参考文献
・形成外科手術書【改訂第5版】2018
(オトナンサー編集部)
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