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脱臼はなぜ起こる? 激しい痛みに襲われる脱臼の原因・症状・対処法

脱臼の原因や対処法、再発予防策について、医師とともに解説します。

脱臼をした時の適切な対処法とは?
脱臼をした時の適切な対処法とは?

 スポーツや日常生活の中で、ぶつかったり転んだりすることによって「脱臼」をしてしまうことがあります。中には、一度治っても、少しの衝撃で繰り返し脱臼が起こりやすくなってしまう人もいます。

 脱臼をした場合、どのように対処すればよいのでしょうか。脱臼の原因や症状、応急処置の方法、再発予防策などについて、医師の髙田女里さんに聞きました。

脱臼とは?

 本来、骨はどのような動きをしても関節によって正しい位置に保たれています。しかし、関節に大きな衝撃が加わったり、正常な可動域を超えた動きをしたりすると、骨の位置が関節からずれてしまうことがあります。この状態を「脱臼」といいます。

 関節を形成する骨がずれるほどの、大きな衝撃や可動域で脱臼してしまった場合、靭帯の損傷も伴うことが多いです。関節包や靭帯の損傷により、非常に強い痛みを伴います。

 脱臼は、程度によって大きく2種類に分けられます。骨が完全に関節から外れ、見た目でも変形していることがわかる状態を「完全脱臼」、関節面が正常の位置から少しずれた程度の状態を「不完全脱臼(亜脱臼)」といいます。どちらも痛みを伴い、関節や靭帯に負担がかかるため、迅速な対処が必要です。

 脱臼が最も起こりやすいのが肩関節です。肩関節は、肩甲骨の一部に上腕骨頭が乗っているような構造をしており、可動域が広い半面、非常に不安定な関節です。ぶつかったり転んだりした衝撃で最も脱臼しやすく、肩に対して上腕骨(頭)が前方に外れる「肩関節前方脱臼」の頻度が高いとされています。

 次いで「肘関節後方脱臼」「顎関節前方脱臼」「第一中手指節関節脱臼」がよく見られます。肘関節や顎関節は、一度脱臼を起こすと小さな力でも脱臼しやすくなる癖がついてしまいます。このように、大きな衝撃を契機とせずに脱臼をくり返す症状を「習慣性脱臼」「反復性脱臼」といいます。

 どれもスポーツ時だけでなく、日常生活にも支障をきたすため、より早く治すことや、習慣性脱臼にならない工夫が重要です。

脱臼の応急処置

 脱臼をした場合、関節包や靭帯の損傷以外に骨折を伴うことがあるため、すぐに医療機関を受診して適切な治療や手術を行うことが第一です。病院まで移動する際、脱臼をした箇所を動かさないように固定する必要があります。

【固定する】

包帯やさらし、大きな布などを使い、なるべく痛みがない位置で患部が動かないようにしっかり固定します。関節や靭帯に負担をかけないようにするためです。

【楽な体勢を取る】

痛みを感じると、全身の筋が収縮するため、できるだけ楽な体勢を取ることをお勧めします。横になり、患部を高くすると痛みが和らぐこともあります。脱臼で骨折を伴っている場合は少しの衝撃でも痛みを感じるため、なるべく動かさないように注意して早めに医療機関を受診しましょう。

脱臼の再発予防

 それでは、脱臼の再発を予防するにはどうすればよいのでしょうか。予防方法と注意すべき部位は以下のとおりです。

【十分な安静期間をとる】

「習慣性脱臼」「反復性脱臼」を防ぐためには、指示された期間は動かすのを控えて、安静に保つことが非常に大切です。関節面や靭帯に緩みや「はがれ」があると、小さな力でも脱臼しやすくなってしまいます。脱臼が癖にならないように、きちんと医療機関を受診し、医師に指示された通りの安静期間を守りましょう。

【手術】

手術によって、脱臼の再発を防ぐことができます。手術には、はがれた軟部組織(腱、靭帯、筋膜など)を元の位置に縫い付ける方法や、骨や腱で補強する方法などがあります。手術をしなくても脱臼の症状は回復しますが、手術で根本的に治療することができるため、再発防止に最適の方法と言えます。手術をした場合、数週間の固定と患部の安静が必要です。

【筋力強化】

リハビリと再発防止の両面から、筋力強化は非常に効果的です。骨は関節を介し、筋肉の収縮と弛緩(しかん)によって保持されたり動いたりするため、筋力を高めることで骨の安定化につながります。適切なトレーニング内容は、傷めた場所や損傷の度合いによって異なります。医師や理学療法士の指示をあおぎ、痛みのない範囲で無理なく行いましょう。

関節に負担をかけない生活を

「脱臼は骨がずれるだけでなく、関節包や靭帯の損傷を起こしているため、十分に治療が完了するまで無理は禁物です。誤った対処によって再発してしまうことがあります。すでに脱臼が癖になってしまっている場合、手術を受けたり、筋力強化のトレーニングを行ったりすることで再発防止が期待できます。ただし、トレーニングを誤った方法で行うと、脱臼を起こしやすくしてしまうこともあります。

脱臼を起こした場合は、まず医療機関を受診し、医師や理学療法士の指示をあおぎながら、ポイントを押さえた正しいトレーニングを行ってください。日常生活で、転んだりぶつけたりしないように気をつけたり、激しいスポーツを控えたりするなど、関節にできるだけ負担をかけないようにすることも大切です」(髙田さん)

(ライフスタイルチーム)

髙田女里(たかだ・めり)

医師(形成外科)・医学博士(法医学)

1980年8月15日生まれ。慶応義塾大学法学部法律学科の憲法ゼミで学んだ後、医師を目指して秋田大学医学部へ学士編入。医師免許取得後、2年間研修医として各科を回り、その後、法医学分野の博士号を取得した。日本形成外科学会会員、日本美容皮膚科学会会員、日本熱傷学会会員。

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