健診は「異常なし」なのに疲れやすい…実は隠れ貧血、がんかも 受診の目安&鉄分をうまく摂取するコツとは
中高年の隠れ貧血のリスクや鉄分を効率よく摂取する方法などについて、医師に聞きました。

健康診断でヘモグロビンの数値が正常値であるにもかかわらず、貧血になることがあります。このような体内の鉄分が不足している状態は、いわゆる「隠れ貧血」と呼ばれています。隠れ貧血は単なる栄養不足ではなく、大きな病気が隠れている可能性があるとされていますが、どのように対処すればよいのでしょうか。中高年の隠れ貧血のリスクや鉄分を効率よく摂取する方法も含め、天王寺やすえ消化器内科・内視鏡クリニック(大阪市天王寺区)院長で総合内科専門医、消化器病専門医、内視鏡専門医の安江千尋さんに聞きました。
隠れ貧血になりやすい人の特徴とは?
Q.隠れ貧血になりやすい人の特徴や、一般的な貧血との違いについて、教えてください。
安江さん「隠れ貧血になりやすいのは、まず月経のある女性です。毎月の月経によって鉄が失われるため、慢性的に鉄不足になりやすい傾向があります。特に月経量が多い人、偏食傾向がある人、過度なダイエットをしている人、妊娠・授乳中の人は注意が必要です。
また、最近ではスポーツをしている人にも隠れ貧血が増えていることが知られています。運動による鉄消費量の増加、発汗、足裏への衝撃による赤血球破壊などが関与すると考えられています」
Q.「中高年の人は隠れ貧血になりやすい」と聞きますが、本当なのでしょうか。
安江さん「『中高年は隠れ貧血になりやすいのか』という点ですが、これについても一定程度“本当”と言えます。ただし、若い女性とは背景がやや異なります。
中高年では、加齢に伴う食事量の低下や、肉や魚など、鉄分を多く含む食品の摂取の減少によって、鉄不足が起こりやすくなることがあります。また、胃酸分泌や消化吸収機能の低下によって、食事からの鉄吸収効率が落ちることも一因と考えられています。
さらに重要なのは、中高年男性や閉経後女性では、『隠れた病気』が背景にある場合があることです。特に消化器内科では、胃潰瘍や胃がん、大腸ポリープ、大腸がんなどによる慢性的な消化管出血が隠れていないかを重視します。
実際に『何となく疲れやすい』『年齢のせいだと思っていた』といった症状をきっかけに検査を行った結果、鉄欠乏が判明し、胃がんや大腸がんなどが見つかるケースは決して珍しくありません。
そのため、中高年で鉄不足や隠れ貧血を指摘された場合には、『加齢による体力低下』と自己判断せず、『なぜ鉄不足になっているのか』と原因検索を行うことが非常に重要です。
一般的な貧血との違いは、“検査異常の程度”だけではありません。隠れ貧血では症状が曖昧で、『何となく調子が悪い』という形で現れることが多いため、見逃されやすいことが特徴です。『健康診断では問題ないと言われたのに疲れやすい』『以前より集中力が落ちた』と感じる場合には、隠れ貧血という視点も重要になります」
Q.「隠れ貧血」に関して、受診すべき目安はありますか。
安江さん「隠れ貧血は、『ヘモグロビン値が正常だから問題ない』と思われやすい一方で、背景に病気が隠れている場合もあるため、一定のタイミングでは医療機関を受診することが重要です。まず受診を検討したいのは、『慢性的な疲労感が続いている場合』です。特に、次のような症状が続く場合には、鉄不足が関与している可能性があり、受診を勧めます」
【受診を検討すべき主な症状】
・十分に寝ても疲れが抜けない
・日中の眠気が強い
・集中力が低下した
・動悸(どうき)や息切れがある
・めまい、立ちくらみが増えた
また、女性で月経量が多い人は、一度検査を受けることをお勧めします。「夜用ナプキンでも足りない」「レバー状の血の塊が多い」「月経期間が長い」といった場合は、慢性的な鉄不足が起きていることがあります。
さらに、過度なダイエットや偏食がある人、妊娠中・授乳中の人、スポーツ習慣が強い人も、鉄不足リスクが高いとされています。
なお、中高年男性や閉経後女性では、「鉄不足そのもの」よりも「鉄不足の原因検索」が重要です。特に、「体重減少」「食欲低下」「便潜血陽性」「黒い便」「腹痛」などを伴う場合は、消化管出血や消化器がんの可能性も考える必要があります。
この場合、消化器内科では、胃潰瘍や胃がん、大腸ポリープ、大腸がんなどによる慢性的な消化管出血が隠れていないかを確認するため、胃カメラや大腸カメラを含めた精査が検討されます。目に見える血便がなくても、少量出血が長期間続き、徐々に鉄不足が進行することがあるからです。また、ピロリ菌感染や慢性胃炎などによって鉄吸収が低下しているケースもあります。
「健康診断では異常なし」と言われても、不調が強い場合には、フェリチン測定を含めた詳細検査を受ける意味があります。
一般的な健康診断ではフェリチンを測定していないことも多いため、“鉄不足が見逃されているケース”は決して珍しくありません。受診する場合、まずは内科や消化器内科に相談するケースが多いでしょう。女性の場合、月経異常が強ければ婦人科評価も重要です。
最近では、「年齢のせい」「更年期だから」と思われていた症状の背景に鉄不足が見つかるケースも少なくありません。隠れ貧血は命に直結する病気ではないことが多い一方、“体からのサイン”である可能性があります。症状が続く場合には、自己判断で放置せず、一度相談するのをお勧めします。
隠れ貧血を防ぐには?
Q.隠れ貧血を防ぐにはどうしたらよいのでしょうか。
安江さん「隠れ貧血を防ぐためには、『十分な鉄を取ること』と『鉄不足の原因を放置しないこと』の両方が重要です。
まず基本になるのは食事です。鉄には『ヘム鉄』と『非ヘム鉄』があり、特に吸収率が高いのは動物性食品に含まれるヘム鉄です。代表的な食品としては、赤身肉やレバー、カツオ、マグロ、アサリなどがあります。
一方、ホウレンソウや大豆製品など植物性食品にも鉄は含まれますが、非ヘム鉄は吸収率が低いため工夫が必要です。ビタミンCを一緒に取ることで鉄吸収率が高まるため、野菜や果物を組み合わせることが勧められます。
逆に、コーヒーや紅茶に含まれるタンニンは鉄吸収を妨げることがあります。特に食直後に大量摂取する習慣がある人は注意が必要です。
極端なダイエットは鉄不足の大きな原因になります。特に若い女性では、体重管理のために肉類を避け続けることで慢性的な鉄不足になるケースが少なくありません。女性の場合、月経による鉄損失は避けられません。そのため、月経量が多い人は、婦人科疾患の有無を確認することも重要です。
さらに、胃腸の病気によって鉄吸収が低下することもあります。ピロリ菌感染、慢性胃炎、胃切除後などでは鉄不足になりやすいことが知られています。先述のように、中高年では『鉄不足を起こす原因検索』が特に重要です。
最近では、市販の鉄サプリメントを利用する人も増えています。ただし、鉄は必要以上に摂取すると胃腸症状や便秘の原因になることがあります。
また、『本当に鉄不足なのか』を確認せずに自己判断で長期摂取するのは望ましくありません。まずは食生活を整え、それでも不調が続く場合には血液検査を受けることが大切です。
隠れ貧血は“何となく不調”として見逃されやすい一方で、生活の質を大きく低下させることがあります。何度も強調しますが、疲れやすさや集中力低下を『年齢のせい』と決めつけず、必要に応じて医療機関を受診することが重要です」
(オトナンサー編集部)














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