過去10年同期比で最多! 「リンゴ病」の症状・感染経路・予防と対策
初夏~秋に流行することが多いリンゴ病ですが、真冬にも流行しています。流行年だった2018年の患者数の多さが影響しているようです。

せきや微熱など、風邪のような症状が出て、その後に両頬が赤くなる伝染性紅班(リンゴ病)が流行しています。国立感染症研究所によると、小児科定点医療機関約3000カ所からの患者報告数(1月7~13日)が、過去10年の同期の中で最多に。リンゴ病は例年、初夏から秋にかけて流行するとされていますが、なぜ、真冬のこの時期に流行しているのでしょうか。感染防止の手段とともに医師の市原由美江さんに聞きました。
リンゴ病の薬やワクチンは存在しない
Q.リンゴ病とはどのような病気で、どのような症状が出ますか。
市原さん「頬に赤い発疹が出るため、通称『リンゴ病』と呼ばれていますが、正式名称は『伝染性紅斑』です。頬のほかに手足にも発疹が現れます。発疹は1週間程度で消失します。『ヒトパルボウイルスB19』というウイルスに初めて感染することで発症するため、子どもを中心に流行します。せきや鼻汁、微熱など、風邪に似た症状が出てから約1週間後に頬に発疹が現れます。最初は風邪と診断されることが多いです。
子どもの頃にリンゴ病を発症していない大人も、まれに発症します。子どもの頃に感染していると、抗体ができるので再感染することはありません」
Q.どのような経路で感染するのですか。
市原さん「患者のせきやくしゃみによって、飛び散った鼻汁や唾液などを吸い込むことで感染する『飛沫(ひまつ)感染』と、ウイルスが付着した手で鼻や口を触ることで感染する『接触感染』があります」
Q.薬やワクチンで感染を防げないのですか。
市原さん「伝染性紅斑を予防する薬やワクチンは存在しません。風邪症状の人に近付かない、手洗いをこまめに行う、手洗いする前の手で顔を触らないなど、風邪の予防と同じ対策になります」
Q.リンゴ病は、初夏~秋に流行することが多いとされている病気です。今回はなぜ、冬に流行しているのでしょうか。
市原さん「リンゴ病は、約5年の周期で流行します。確かに、初夏~秋に流行することが多いのですが、年によって流行時期に差があります。2018年は流行の年にあたり、いつもの年よりも患者数が多くなりました。患者数が多くなった結果、感染が収束せず、さらに広がり、真冬の時期まで流行しているのでしょう」
Q.現在は首都圏や東北地方で流行しています。ほかの地域に広がることもありうるのでしょうか。
市原さん「リンゴ病の感染経路は、飛沫感染か接触感染です。特に、首都圏は人の行き来が多いので、感染が広がった可能性があります。また、首都圏から他地域へ移動する人も多いため、流行拡大の可能性は十分にあります」
Q.大人がリンゴ病を発症した場合、子どもとは異なる症状が出ることがありますか。
市原さん「大人がリンゴ病を発症した場合、子どもに比べて症状が強く出ます。症状としては、悪寒や発熱、頭痛などで、約1週間後に皮疹や浮腫、関節痛などの症状がみられます」
Q.妊婦が感染すると胎児に影響があるとされています。どのような影響がありますか。
市原さん「妊婦が感染すると、胎児水腫や流産の可能性があります。過去にリンゴ病に感染したことのない妊婦さんは要注意です。繰り返しますが、薬やワクチンがないため、風邪の症状がある人に近づかない、人混みに出ない、手洗いやうがいを頻繁に行うなど、一般的な風邪対策を行うことが必要です」
Q.リンゴ病に感染した場合、周囲に感染を広げないためにできることは。
市原さん「もし、リンゴ病に感染していても最初は風邪と同様の症状で、皮疹が出る頃には、体内のウイルスは減っています。ウイルスの排泄(はいせつ)はほぼなくなり、感染力はほぼありません。そのため、『風邪かな』と思ったら、マスクを装着する、せきやくしゃみで唾液が付いた手で他人と共有するものは触らない、手洗いを頻繁に行うなど風邪を他人にうつさないためと同様の対策を取ることが重要です」
(オトナンサー編集部)
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