プロ野球観戦中、ファウルボール“直撃”で観客けが 球団に損害賠償請求できる? 弁護士に聞く
プロ野球の観戦中にファウルボールやホームランボールが直撃して観客がけがをした場合、球団側などに損害賠償を請求することは可能なのでしょうか。弁護士に聞きました。
プロ野球の観戦中、ファウルボールやホームランボールが客席に入ることがあります。球場では、ファウルボールなどについて注意が呼び掛けられていますが、SNS上では「ファウルボールが飛んできてびっくり」「ボールが当たって痛い」といった内容の声が上がっており、観客がボールに驚いたり、ボールが当たってけがをしたりするケースがあるようです。
もしファウルボールやホームランボールが当たって観客がけがをした場合、球団側などに対して損害賠償を請求することは可能なのでしょうか。芝綜合法律事務所の牧野和夫弁護士に聞きました。
重過失で免責規定が無効に
Q.プロ野球の観戦中にファウルボールやホームランボールが当たって観客がけがをした場合、その人は球団側などに損害賠償を請求することは可能なのでしょうか。
牧野さん「プロ野球の試合中に観客がけがをした場合、民法の債務不履行(安全配慮義務違反)や不法行為(過失責任)に基づき、球団などに対する損害賠償請求が認められる可能性があります。
一方、プロ野球の観戦に関する規約には、『ファウルボールなどが原因で観客が被った損害について、主催者や球場管理者は責任を負わない』という内容の記述があり、その場合、球団側や球場管理者は、基本的に民事責任を負いません。そのため、観客がけがをしても損害賠償請求が認められないケースが多いでしょう。
ただし、利用規約で球団側などの責任が免除されていても、その後、重過失が認められた場合には、公序良俗違反で利用規約の免責規定が無効になることがあります」
Q.よそ見など、注意不足が原因でファウルボールが当たり、観客がけがをしたとします。この場合、観客の損害賠償はどうなるのでしょうか。
牧野さん「裁判に発展した際に観客側に不注意や落ち度(過失)による損害の拡大が認められた場合、損害賠償金額は『過失相殺』で減額されます」
Q.プロ野球のファウルボールやホームランボールの事故に関する事例、判例について教えてください。
牧野さん「プロ野球で野球観戦契約上の債務不履行(安全配慮義務違反)により、球団に対する損害賠償請求が一部認められたケースがあります。
2010年、札幌ドームの内野席でプロ野球の試合を観戦していた女性が、ファウルボールの直撃により右目を失明しました。女性側は、球団と札幌ドーム、札幌市に損害賠償を請求し、その後、札幌高裁は『安全配慮義務を尽くしたとはいえない』として約3360万円の損害賠償を球団に命じました(2016年5月札幌高裁判決)」
(オトナンサー編集部)
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