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大手企業に不正アクセス…個人情報の漏えい相次ぐ 「クレカ」不正利用されたら補償、賠償はどうなる?【弁護士に聞く】

情報漏えいにより、電話番号やクレジットカードなどを悪用されてしまった場合、被害者は企業側に賠償請求できるのでしょうか。弁護士に聞きました。

情報漏えいによりクレジットカードを悪用された場合、企業に賠償請求できる?(画像はイメージ)
情報漏えいによりクレジットカードを悪用された場合、企業に賠償請求できる?(画像はイメージ)

 主に大手企業を狙った不正アクセスにより、氏名や電話番号、クレジットカード情報、免許証などの個人情報が漏えいするケースが相次いでいます。もしもこうした情報の流出により電話番号やクレジットカードなどを悪用されてしまった場合、被害者は企業側に賠償請求できるのでしょうか。芝綜合法律事務所の牧野和夫弁護士に聞きました。

漏えい企業に「損害賠償請求」はできるのか?

Q.もし情報の漏えいが原因でクレカや個人情報などを悪用された場合、企業側に賠償請求できるのでしょうか。

牧野さん「まず前提として、クレジットカードで不正利用された金額そのものを企業に請求できるわけではありません。

企業に対して認められる可能性があるのは、あくまで『個人情報が漏えいしたことに対する精神的損害賠償金(慰謝料)』です。この賠償金は、被害者1人当たり数千円から数万円が一般的な相場です。

大手企業で2014年に約2895万件の個人情報が漏えいする事件が発生しました。これは業務委託先の元社員が顧客情報を不正に持ち出して名簿業者などに売却したことが原因ですが、この事件の集団訴訟でも、判決での損害賠償額は1人当たり数千円(東京地裁判決では3300円)でした。

ただし金額は、漏えいした情報の『秘匿性の高さ』『個人情報の機微性(センシティブ性)』『二次被害の有無』によって大きく変動します。病歴、身体情報、スリーサイズ、思想・信条など、他人に知られたくない内面や身体に関する情報で精神的苦痛が大きくなった場合、損害賠償金は数万円前後と高額化する傾向にあります。

事業者の過失によって個人情報やクレカ情報が漏えいし、それらが悪用されたことが原因で損害を被った場合、被害者は、基本的に民法709条の不法行為に基づき、企業側に賠償請求することができます。

ただし、一般的に、個人情報の漏えい事件の損害賠償請求民事訴訟では、『漏えいした個人情報が悪徳業者の手に渡り、その悪徳業者によって詐欺などの損害を被った』という一連の因果関係を被害者側で証明する必要があり、この立証のハードルが非常に高いため、一般的に救済が難しいといわれています」

Q.実際にクレジットカードが不正利用された場合、カード会社の「不正利用補償(盗難保険)」と、漏えい元企業への「損害賠償請求」はどのような関係、順番になるのでしょうか。

牧野さん「クレジットカードが不正利用された場合、利用者が金銭的損害を回復するにあたって、まずは、カード会社の『不正利用補償』が最優先で適用され、漏えい元企業への損害賠償請求はこれを補完する関係になります。

クレジットカードが不正利用された場合、まずはカード会社に連絡してカードを停止し、不正利用の調査と補償を受けます。多くの場合は申告からさかのぼって60日以内の損害が対象なので、注意しましょう。

利用者に故意や重大な過失がなければ、カード会社の会員保障制度によって損害額は補償(返金または請求取り消し)されて、利用者が金銭的負担を負うことはありません。

これに対して、利用者が漏えい元企業に直接請求できる実質的な損害賠償については、カードの不正利用被害が補償されてそのものの損害は受けていない場合には、カードの不正利用被害自体ではなく、『情報漏えいによる精神的苦痛や手間(一般的に1人当たり数千円~数万円程度)』に対して検討されるべきものになります。

つまり、利用者が自身で漏えい元企業に対して『不正利用されたカード利用額そのもの』を二重に損害賠償請求できるわけではありません」

Q.もし情報漏えいの被害に遭った場合、どのように対処すればよいのでしょうか。対処法について、教えてください。

牧野さん「悪意の第三者に漏えいされた個人情報を利用して不正借り入れなどの契約をされるのを防ぐために、CIC(シー・アイ・シー)やJICC(日本信用情報機構)、KSC(全国銀行個人信用情報センター)の信用情報機関への『本人申告』をしておく必要があります」

・CIC/JICC(クレジットカード・消費者金融系)
ネットで手続きをする場合の手数料はJICCが700円(以下税込み)、CICが1000円です。

・全国銀行個人信用情報センター(KSC/銀行系)
銀行や信用金庫からの不正借入れを防ぐため、CICやJICCとは別に「本人申告」の手続きを行う必要があります。ネットで手続きをする場合の手数料は500円です。

「本人申告」が提出されていると、悪意の第三者が漏えいされた個人情報を利用して不正に借り入れなどの契約をしようとした時に信用情報機関が厳しく確認・チェックをしてくれるため、不正契約を未然に防げる効果があります。一定の効果はありますが、以下の点で不正使用を100%防げるわけではありません。

(1)審査を伴わない取引には無効
一部のプリペイドカードや、携帯電話の割賦なし契約などの信用情報を照会しないタイプの取引は防げません。

(2)登録情報に有効期限がある
登録された情報は有効期限があり、一定期間が経過すると自動的に登録が削除されます。CIC/JICCは5年間、KSCは7年間です。登録が削除された後に再度の登録が必要です。

(オトナンサー編集部)

【画像】「えっ…知らなかった」 これがクレカ「不正利用」されても“補償”が受けられない3つのケースです!

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牧野和夫(まきの・かずお)

弁護士(日・米ミシガン州)・弁理士

1981年早稲田大学法学部卒、1991年ジョージタウン大学ロースクール法学修士号、1992年米ミシガン州弁護士登録、2006年弁護士・弁理士登録。いすゞ自動車課長・審議役、アップルコンピュータ法務部長、Business Software Alliance(BSA)日本代表事務局長、内閣司法制度改革推進本部法曹養成検討会委員、国士舘大学法学部教授、尚美学園大学大学院客員教授、東京理科大学大学院客員教授を歴任し、現在に至る。専門は国際取引法、知的財産権、ライセンス契約、デジタルコンテンツ、インターネット法、企業法務、製造物責任、IT法務全般、個人情報保護法、法務・知財戦略、一般民事・刑事。

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