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3月13日から自己判断で「マスク着脱」可能に 店や学校が指示したらどうなる? 弁護士が解説

政府が、マスク着用の判断を個人に委ねましたが、今後、店や医療機関などが利用者に着用を求めた場合、法的責任を問われる可能性はあるのでしょうか。弁護士に聞きました。

マスク着用を求めた場合の法的責任は?
マスク着用を求めた場合の法的責任は?

 政府が3月13日から、屋外、屋内を問わず、マスクの着用を個人の判断に委ねました。ただ、医療機関を受診する際や通勤時間帯に公共交通機関を利用する際などは、マスクの着用を推奨するということです。

 今後、医療機関や店舗などが「施設内ではマスクを着用してください」「マスクを着用していない方の利用をお断りします」といった内容の張り紙を掲示した場合、法的責任を問われる可能性はあるのでしょうか。また、入学式などの学校行事の際に教員がマスクを外すよう、生徒に指示した場合はどうなるのでしょうか。芝綜合法律事務所の牧野和夫弁護士に聞きました。

「契約自由の原則」で問題なし

Q.3月13日以降、医療機関や店舗などが「施設内ではマスクを着用してください」「マスクを着用していない方の利用をお断りします」といった内容の張り紙を掲示した場合、法的責任を問われる可能性はあるのでしょうか。

牧野さん「マスクの着用を個人の判断に委ねるということであれば、医療機関や店舗、航空会社なども独自に判断してもよいことになります。『施設内ではマスクを着用してください』『マスクを着用していない方の利用をお断りします』の張り紙をしても、施設利用のための契約条件の提示と解釈されるので、法的責任を問われることはないでしょう」

Q.では、医療機関や店舗などが利用者にマスクの着用を求めた場合はいかがでしょうか。

牧野さん「契約自由の原則に基づき、各施設の判断で、『利用時のマスク着用』というルールを決めることもできます。そのため、マスク着用のルールに従わない利用者にサービスを提供しないことも可能です。施設側が法的責任を問われることはありませんし、利用者側が医療やサービスを受けるには、マスク着用のルールに従う必要があるでしょう」

Q.卒業式や入学式などの学校行事の際に教員がマスクを外すよう、生徒に指示した場合、法的責任を問われる可能性はあるのでしょうか。

牧野さん「教員がマスクを外すよう指示したことで、その後、新型コロナウイルスの集団感染が発生し、生徒が損害を被った場合、学校側に過失がある場合は民事の損害賠償責任(不法行為や安全管理義務違反)を負う可能性があります。ただし、生徒側はマスクを外したことと感染との因果関係や、その際の具体的な損害を証明する必要があるため、現実的には難しいでしょう」

Q.マスクを外すことを拒んだ生徒に対して、教員が強制的にマスクを外した場合、どうなるのでしょうか。損害賠償を請求できる可能性はありますか。

牧野さん「刑事で強要罪(義務のない行為を行わせる)や暴行罪(他人の体に対して物理力を行使した結果、傷害を負うに至らなかった場合)に該当する可能性があります。生徒が精神的損害を被った場合、民事で慰謝料を請求できる可能性がありますが、教員がマスクを強制的に外したことと精神的損害との因果関係を証明しなければならず、簡単ではないでしょう」

(オトナンサー編集部)

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牧野和夫(まきの・かずお)

弁護士(日・米ミシガン州)・弁理士

1981年早稲田大学法学部卒、1991年ジョージタウン大学ロースクール法学修士号、1992年米ミシガン州弁護士登録、2006年弁護士・弁理士登録。いすゞ自動車課長・審議役、アップルコンピュータ法務部長、Business Software Alliance(BSA)日本代表事務局長、内閣司法制度改革推進本部法曹養成検討会委員、国士舘大学法学部教授、尚美学園大学大学院客員教授、東京理科大学大学院客員教授を歴任し、現在に至る。専門は国際取引法、知的財産権、ライセンス契約、デジタルコンテンツ、インターネット法、企業法務、製造物責任、IT法務全般、個人情報保護法、法務・知財戦略、一般民事・刑事。

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