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飲み過ぎのリスクは? 選び方のポイントは? 「栄養ドリンク」の成分と効果、専門家が解説

疲労時に飲む人も多い「栄養ドリンク」ですが、どんな栄養素や成分が含まれているかを正しく知っていますか。疲労の回復に作用する栄養素について解説します。

栄養ドリンクに含まれる栄養素って?
栄養ドリンクに含まれる栄養素って?

 仕事でもうひと頑張りしたいとき、「栄養ドリンク」を飲む人は多いと思います。飲むと体の疲れが和らいだり、眠気が覚めたり、頭がスッキリしたりするなどさまざまな効果を感じる人も多いと思いますが、一方で、「含まれている栄養素をほとんど知らずに飲んでいるな…」「飲み過ぎたらどうなるの?」「カロリーが気になる」といった疑問を持つ人も少なくありません。

 栄養ドリンクの疲労回復効果に関するさまざまな疑問について、専門家に取材しました。

「過剰摂取」に注意が必要な成分も

 そもそも、なぜ「疲労」を感じるのでしょうか。内科医の市原由美江さんによると、疲労の原因として「活性酸素」という物質の関与が考えられているそうです。

「体内でエネルギーがつくられるときに発生するのが、活性酸素です。通常は『抗酸化力』によって活性酸素は取り除かれますが、過度な運動や精神的疲労で体に負担がかかったときには、この活性酸素が過剰になります。これによって細胞の機能が低下し、疲労感が生じると考えられています」(市原さん)

 これを踏まえて、疲労回復に対する栄養ドリンクの効果や含まれる栄養素について、管理栄養士の岸百合恵さんに聞きました。

Q.一般的に、栄養ドリンクにはどのような栄養素が含まれていることが多いのでしょうか。

岸さん「医薬部外品として販売されている栄養ドリンクの主な有効成分は、ビタミン▽アミノ酸▽糖類▽生薬▽漢方薬▽カフェイン―です。

ビタミンのうち、ビタミンCやB群はたいていの商品に入っていて、ビタミンB1、B2、B6、B12が全て入っていたり、そのどれかが含まれていたりします。ビタミンB群は『代謝のビタミン』といわれ、糖質や脂質、タンパク質の分解を助け、エネルギー産生を促進させる働きがあり、結果的には疲労感を軽減することに役立ちます。

アミノ酸は、タウリン、L-アスパラギン酸ナトリウム、BCAA(分岐鎖アミノ酸)などで、肝臓の働きを助け、疲労回復や筋肉の修復、エネルギー源として使われます。ビタミンB2やタウリンなどは抗酸化にも関与しており、疲労の原因といわれる活性酸素の除去にも作用します。

糖類は、脳や筋肉が活動する際のエネルギー源として使われます。即効性があり、血糖値を上昇させるため、空腹感も紛れやすくなります。

生薬や漢方薬は、植物、動物、鉱物など天然産物由来の薬物です。朝鮮ニンジンやローヤルゼリーがよく知られていますが、他にもさまざまなものが使われており、血行促進、内臓疲労・肉体疲労の回復効果があります。

カフェインは栄養素ではありませんが、中枢神経を興奮させて眠気や倦怠(けんたい)感を取るのに効果があり、刺激物なので、一時的にシャキッとした感じがします」

Q.これらの栄養素のうち、過剰摂取によって人体に影響を及ぼし得るものはありますか。

岸さん「栄養ドリンクに使われる疲労回復成分のうち、ビタミンB群は水溶性で、その多くは取り過ぎた分が排出されるので心配いりません。よく、尿が黄色くなることがありますが、あれはビタミンB2によるものです。ただし、ビタミンB6やナイアシンなどには摂取上限量が設けられており、他のビタミン類も、過剰摂取による健康被害は少ないものの、ゼロではないものもあります。

アミノ酸は、取り過ぎた分は尿と一緒に排せつされるため、こちらも基本的には心配ありません。アミノ酸もエネルギーになりますが、栄養ドリンクは1本あたり50キロカロリー前後のものが多く、高くても80キロカロリー程度です。許容量として1日2本程度であれば、栄養ドリンクで肥満になることはないでしょう。しかし、過剰摂取によって肝機能や腎機能への負担や、腸内環境の乱れなどの影響がみられる可能性は十分にあるため、摂取上限量が設けられていないとしても注意が必要です。

また、生薬や漢方は取り過ぎると、薬ではなく毒素として肝臓が解毒作業を行うため、体に負担がかかることがあります。カフェインも摂取し過ぎると『カフェイン中毒』となり、頭痛や心拍数の増加、吐き気、不眠、下痢などを起こすことがあります。さらに、果糖ブドウ糖液糖の取り過ぎは血糖値を上昇させ、カフェイン同様、依存性もあります。

栄養ドリンクの疲労回復成分は即効性がある半面、吸収が早く、体に素早く作用させるよう人工的に作られた成分の塊でもあるのです。もちろん1、2本飲んだ程度で急激に体調がおかしくなることは基本的にはありませんが、習慣化などで無意識に飲み続けていると、気付かないうちに飲む量が増えがちなので、摂取し得る成分を把握しておくことは大切です」

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市原由美江(いちはら・ゆみえ)

医師(内科・糖尿病専門医)

eatLIFEクリニック院長。自身が11歳の時に1型糖尿病(年間10万人に約2人が発症)を発症したことをきっかけに糖尿病専門医に。病気のことを周囲に理解してもらえず苦しんだ子ども時代の経験から、1型糖尿病の正しい理解の普及・啓発のために患者会や企業での講演活動を行っている。また、医師と患者両方の立場から患者の気持ちに寄り添い、「病気を個性として前向きに付き合ってほしい」との思いで日々診療している。糖尿病専門医として、患者としての経験から、ダイエットや食事療法、糖質管理などの食に関する知識が豊富。1児の母として子育てをしながら仕事や家事をパワフルにこなしている。オフィシャルブログ(https://ameblo.jp/yumie6822/)。eatLIFEクリニック(https://eatlife-cl.com/)。

岸百合恵(きし・ゆりえ)

プロボクサー、管理栄養士、日本糖尿病療養指導士

病院食の管理・調理業務や企業での特定保健指導を経て、生活習慣病診療を専門とするクリニックにおいて5年間、栄養指導を実施。アスリートとしても夢を追い掛け、2017年に日本ボクシングコミッション(JBC)のプロテストに挑戦し、一発合格。「闘う管理栄養士」として、チャンピオンを目指して日々トレーニングに励みながら、ボディーメークや健康管理の指導を行う。現在は、スポーツ・睡眠歯科分野の診療を行う歯科医院で、アスリートへの食事指導や、一般患者へのダイエット、フレイル・サルコペニア予防の指導を行う他、内科クリニックで生活習慣病患者に対する食事指導を行っている。

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